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涼くんは、可愛い。
「ね、いつもお弁当作ってくれてるでしょ?」
「んー?代り映えしないお弁当をね・・・ごめんね・・・」
「えー?いつものがいいんだよー。だって、今日も和多流くんの手作りだって思えるから、安心するもん。あのね、おれも作るよ」
「へ?」
あ、卵焼きが、ぐしゃって、なった。
あと一巻きで修正できるだろうか。
「一緒に作ろうよ」
「・・・い、一緒に、とは?涼くんは何を作ってくれるの?」
「いつものウィンナーを、タコさんにします」
タコ、さん?さん!?かっわいーーー!!
必死に取り繕った卵焼きをお皿に載せて、ウィンナーをフライパンへのせる。いつの間にか切込みが入っていた。焼いていると広がってくる。
「おぉ・・・」
「深く切り込めばタコさんで、浅く切り込めばお花なんだって。真ん中にコーンとか押し込むと可愛いって書いてあった」
「ど、どこに・・・?」
「ネット」
ネットで調べたの・・・!?か、可愛い・・!!
足がくるんとしたウィンナーが出来上がった。こういうの、懐かしいな。保育園のころ遠足で持って行ったっけ。
まぁ、あんまり記憶にないけどさ。
じいさんが作ってくれたのかな。
「はー・・・卵焼き、いい匂い・・・」
「いつも同じ味だけど」
「おれ、甘いの好き」
「よかった・・・」
「そういえばこの間のおにぎり面白かった」
「え?」
「まん丸で、全体に海苔が巻いてあったやつ」
「あ、あー・・・」
海苔が破けて、取り繕うようにぺたぺた貼り付けたやつね・・・。
若干ひきつった笑いになってしまう。
「またやって」
「え!?」
「でね、中に何か入れてほしい。なんでもいいよ。楽しいから」
腕にしがみついて、上目遣いをしてくれる。う、ぐ・・・。可愛い・・・。
ていうか、リクエスト、嬉しい・・・。
おにぎりの具って・・・何があるんだろう。鮭と、昆布・・・?でも昆布ってどこにあんの?涼くんはよく作ってくれるけど、売ってる場所とか分かんね・・・。ちゃんと見なくちゃな・・。
「じゃぁ、またやるね」
そう答えて本日は就寝。
さて、何か考えなくちゃな。
***************************
あれは正解だったのだろうか。
涼くんのお弁当箱に入りきらなかったおかずを食べながらふと思った。
内心焦ってくる。
ていうかお弁当の正解って何なんだろう。
美味しさなのか色どりなのか。はたまた量なのか。おれは量を重視していたけど・・涼くんはどうかな。
面白さ??
携帯がけたたましく音を立てた。しまった、音量調節がおかしなことに。表示を見ると涼くんで、何事かと耳に当てる。
「もしもし!?」
『あ、和多流くん?ねぇ、おにぎり面白すぎるよ』
「え?」
『だってさ、唐揚げと卵焼きときんぴらが入ってるんだもん』
けらけら笑いながら言うから。
こっちまでおかしくなってしまう。
「だ、だって、中に入れてって言うから」
『おかずが全部入ってるとは思わないじゃん!もー、公園でよかった!屋上で成瀬さんと食べてたらネタにされてたよ!』
「びっくりした?」
『したー。見た目が爆弾かと思った』
「あー、海苔をベッタベタに貼ったからね」
『また作ってね』
また作っていいんだ?
嬉しいな。また、作ろうって思う。
いつも涼くんのごはんを食べて、また作ってねって簡単に言っていたけど、負担になってないか心配だった。でも、言われるとこんなに嬉しいんだね。知らなかった。
知らなかったよ。
涼くんと過ごしているとたくさんのことを知って、嬉しくなる。
「次も楽しみにしてて」
『ふふふ、うん』
「今日は公園で食べてるの?」
『うん。天気がいいし。花壇にね、きれいに花が植わってるから』
「そっか。いいねぇ。おれも散歩してこようかな」
『それがいいよ』
「・・・まだ話してて大丈夫?」
『え?うん。どうしたの?』
「いや、なんか・・・何でもない時にかかってくるって、なかなかないから・・」
我ながら女々しいことを言っているのは分かっている。でも、今、同じものを食べておいしいねって笑って、おしゃべりできるのが嬉しくて、手放せなくて。
どうしても、わがままを言いたくなってしまった。
『うん。いいよ』
「ほんと?」
『うん。今日の晩御飯、何がいいかな。春だからタケノコとかさ、食べたいね』
「あ、炊き込みご飯食べたいかも・・・」
『おれ、灰汁抜きとかできないから水煮のタケノコだけどいいよね』
「灰汁抜きって何?」
『あははは!タケノコってね、皮付きのはいーっぱい皮を剥いて米のとぎ汁とか米のぬかで何時間も煮ないと食べられないんだよ』
「へぇーーー!!そうなの?知らないや」
『正直面倒なんだよね』
「うーん、ゴミがたくさん出そうだね」
『そうそう。大変なんだよ。えへへ、なんか、面白いね』
「え?」
『だって、あと何時間か仕事頑張れば会えるのに、電話して笑ってるんだよ』
「ごめんね、なんか、声聞いていたくて・・・」
『楽しいね』
ぎゅーっと胸が締まる。
今、きっと、キラキラの笑顔なんだろうな。見たかったな・・・。
でも、うん、帰りにたくさん見よう。
「お迎えに行くからね」
『うん』
「夜桜を見て帰ろうね」
『ね。ふふ。またあとでね』
「ん。大好き」
『・・・外だから、ごめんね。でも、おれも!じゃね!』
あ、今、大好きって、言ってくれようとしたのかな。
嬉しい。
電話を切ってまたお箸を持つと、メッセージが来た。大好きだよ、と書かれている。
嬉しくて、頬が緩んだ。
「ね、いつもお弁当作ってくれてるでしょ?」
「んー?代り映えしないお弁当をね・・・ごめんね・・・」
「えー?いつものがいいんだよー。だって、今日も和多流くんの手作りだって思えるから、安心するもん。あのね、おれも作るよ」
「へ?」
あ、卵焼きが、ぐしゃって、なった。
あと一巻きで修正できるだろうか。
「一緒に作ろうよ」
「・・・い、一緒に、とは?涼くんは何を作ってくれるの?」
「いつものウィンナーを、タコさんにします」
タコ、さん?さん!?かっわいーーー!!
必死に取り繕った卵焼きをお皿に載せて、ウィンナーをフライパンへのせる。いつの間にか切込みが入っていた。焼いていると広がってくる。
「おぉ・・・」
「深く切り込めばタコさんで、浅く切り込めばお花なんだって。真ん中にコーンとか押し込むと可愛いって書いてあった」
「ど、どこに・・・?」
「ネット」
ネットで調べたの・・・!?か、可愛い・・!!
足がくるんとしたウィンナーが出来上がった。こういうの、懐かしいな。保育園のころ遠足で持って行ったっけ。
まぁ、あんまり記憶にないけどさ。
じいさんが作ってくれたのかな。
「はー・・・卵焼き、いい匂い・・・」
「いつも同じ味だけど」
「おれ、甘いの好き」
「よかった・・・」
「そういえばこの間のおにぎり面白かった」
「え?」
「まん丸で、全体に海苔が巻いてあったやつ」
「あ、あー・・・」
海苔が破けて、取り繕うようにぺたぺた貼り付けたやつね・・・。
若干ひきつった笑いになってしまう。
「またやって」
「え!?」
「でね、中に何か入れてほしい。なんでもいいよ。楽しいから」
腕にしがみついて、上目遣いをしてくれる。う、ぐ・・・。可愛い・・・。
ていうか、リクエスト、嬉しい・・・。
おにぎりの具って・・・何があるんだろう。鮭と、昆布・・・?でも昆布ってどこにあんの?涼くんはよく作ってくれるけど、売ってる場所とか分かんね・・・。ちゃんと見なくちゃな・・。
「じゃぁ、またやるね」
そう答えて本日は就寝。
さて、何か考えなくちゃな。
***************************
あれは正解だったのだろうか。
涼くんのお弁当箱に入りきらなかったおかずを食べながらふと思った。
内心焦ってくる。
ていうかお弁当の正解って何なんだろう。
美味しさなのか色どりなのか。はたまた量なのか。おれは量を重視していたけど・・涼くんはどうかな。
面白さ??
携帯がけたたましく音を立てた。しまった、音量調節がおかしなことに。表示を見ると涼くんで、何事かと耳に当てる。
「もしもし!?」
『あ、和多流くん?ねぇ、おにぎり面白すぎるよ』
「え?」
『だってさ、唐揚げと卵焼きときんぴらが入ってるんだもん』
けらけら笑いながら言うから。
こっちまでおかしくなってしまう。
「だ、だって、中に入れてって言うから」
『おかずが全部入ってるとは思わないじゃん!もー、公園でよかった!屋上で成瀬さんと食べてたらネタにされてたよ!』
「びっくりした?」
『したー。見た目が爆弾かと思った』
「あー、海苔をベッタベタに貼ったからね」
『また作ってね』
また作っていいんだ?
嬉しいな。また、作ろうって思う。
いつも涼くんのごはんを食べて、また作ってねって簡単に言っていたけど、負担になってないか心配だった。でも、言われるとこんなに嬉しいんだね。知らなかった。
知らなかったよ。
涼くんと過ごしているとたくさんのことを知って、嬉しくなる。
「次も楽しみにしてて」
『ふふふ、うん』
「今日は公園で食べてるの?」
『うん。天気がいいし。花壇にね、きれいに花が植わってるから』
「そっか。いいねぇ。おれも散歩してこようかな」
『それがいいよ』
「・・・まだ話してて大丈夫?」
『え?うん。どうしたの?』
「いや、なんか・・・何でもない時にかかってくるって、なかなかないから・・」
我ながら女々しいことを言っているのは分かっている。でも、今、同じものを食べておいしいねって笑って、おしゃべりできるのが嬉しくて、手放せなくて。
どうしても、わがままを言いたくなってしまった。
『うん。いいよ』
「ほんと?」
『うん。今日の晩御飯、何がいいかな。春だからタケノコとかさ、食べたいね』
「あ、炊き込みご飯食べたいかも・・・」
『おれ、灰汁抜きとかできないから水煮のタケノコだけどいいよね』
「灰汁抜きって何?」
『あははは!タケノコってね、皮付きのはいーっぱい皮を剥いて米のとぎ汁とか米のぬかで何時間も煮ないと食べられないんだよ』
「へぇーーー!!そうなの?知らないや」
『正直面倒なんだよね』
「うーん、ゴミがたくさん出そうだね」
『そうそう。大変なんだよ。えへへ、なんか、面白いね』
「え?」
『だって、あと何時間か仕事頑張れば会えるのに、電話して笑ってるんだよ』
「ごめんね、なんか、声聞いていたくて・・・」
『楽しいね』
ぎゅーっと胸が締まる。
今、きっと、キラキラの笑顔なんだろうな。見たかったな・・・。
でも、うん、帰りにたくさん見よう。
「お迎えに行くからね」
『うん』
「夜桜を見て帰ろうね」
『ね。ふふ。またあとでね』
「ん。大好き」
『・・・外だから、ごめんね。でも、おれも!じゃね!』
あ、今、大好きって、言ってくれようとしたのかな。
嬉しい。
電話を切ってまたお箸を持つと、メッセージが来た。大好きだよ、と書かれている。
嬉しくて、頬が緩んだ。
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