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しおりを挟む「嫌いな体位ってある?」
セックスの後のまったりした時間。突然の質問に面を食らっていると、真剣にもう一度同じことを聞かれた。
優しく抱きしめられて、うとうとしていたおれは咄嗟に答えられずにぼんやりと見つめ返すことしかできなかった。
「んぇ・・・ん?」
「苦手な格好とか」
「・・・んん?なんの?」
「セックスしている時の話ね」
「んー・・・座って、後ろ向きになるやつ?」
「背面座位のこと?」
「ん・・・」
「なんで?痛い?」
「・・・んんー・・・」
あ、やばい、眠い。寝ちゃう・・・。
頭撫でられるの、気持ちいい・・・。
顔が近付いてきて、フレンチキスをたくさんしてくれた。
トロトロと思考が溶けていく。
「あとは?」
「ん・・・手、つく、やつ・・・」
「・・・手をつくやつ?どういうこと?」
「ぅん・・・後ろ、向いて・・・」
「・・・四つん這いのこと?」
「・・・ぅー・・・だってぇ・・・きしゅ、・・・してくれないから・・・」
頑張って起きていたけど、ダメだった。
吸い込まれように眠ってしまった。
和多流くんの隣で眠るのが世界で一番気持ちいいんだもん。
************************
「んぁあんっ!はひ、ひ、」
な、なんでこんなことになってんの・・・!!
「ぅあ!いやぁ!」
「やなの?そんなに、嫌?」
「う、う、」
腰を掴まれて、下から突き上げられた。
朝起きたらもうすでに解されていて、和多流くんが入ってくるところだった。
びっくりして起きあがろうとすると、抱き抱えられてくるっと向きを変え、後ろ向きにされた。
そのまま和多流くんの太いペニスが入ってきた。背中から覆い被さって、身動きが取れないようにがっちりと腕で固定してくる。
「涼くん・・・こっち向いてごらん」
「は、うぅーっ!奥、ぎゅーって、しないれぇ、・・・!」
「ねぇ、気持ちいいよね?この格好、いいよね?」
「あ!ぁあ!」
乳首をこねられた。
まだ、朝の7時。なんでこんな時間から始まっちゃったんだろ・・・。モーニングを食べに行くから朝は控えようねって、約束したのに・・・。だから夜にたくさんしたのに・・・。楽しみにしてたのに・・・。
「んぅっ、うぅっ、や、焼き、たて、の、ふぅ、う、パンケーキ・・・!一緒に、」
「そんなもの、どうでもいいじゃん」
「ひ、ひどい・・・あ、あ!そこらめ!!」
脇腹を撫でてペニスを掴み、緩く扱かれる。
中も、乳首も、ペニスも、全部触られると思考が溶けてしまう。
こっち向いて、と強めに言われて恐る恐る振り返ると、キスをしてくれた。
ぢゅるる、と舌を吸われて体が痙攣する。
き、気持ちいい・・・!キス、好き・・・!
でも、でも、和多流くんにしがみつけない。ぎゅーって、できない。
「腰動かして」
「は、はひ、こぉ?こ、こう、あ、あぁんっ、」
「ねぇ、気持ちいい?」
「ま、前、前がいい、前にしたい、」
「これ、気持ち良くない?」
「あっ!あぁあ~・・・!」
指先が脇腹を撫でて登っていく。背中を反らせると、指先が何度も行ったり来たりを繰り返し、くすぐった。
きゅーっと締め付けて、和多流くんのペニスが中で跳ねるのが分かった。
「あ、あぁ!気持ちいい!気持ちいいの!」
「ペニス、自分で触って」
「やらの!いっちゃうの!」
「いかせたいの」
「も、出ないもん・・・!昨日いっぱい、」
「じゃあおしりでいって」
ギラっと睨まれた。その目が興奮一色じゃなくて、なぜか苛立ちも混じっていて、ビクッと肩が跳ねる。
怒ってる?何で?何かしたの?
「や、怖い、」
「・・・ごめん」
「・・・抜いて?」
ふるふると首を横に振る。ぎゅーっと抱きしめられて、肩と背中にたくさんキスをしてくれた。
「ん、ん、」
「・・・焦りました。ごめんね」
「焦る?なんで?」
「・・・好きになってほしくて」
「えぇ!?大好きだよぉ・・・何、いきなり・・・」
「違う。おれとすること全部、好きって言ってほしかった」
「・・・へ?何の話?」
「おれは、全部好き。涼くんとすること全部・・・同じが良かっただけ」
和多流くんはおれを抱えたまま後ろに倒れた。
ぎゅーっと抱きしめられて身動きが取れなくなる。
和多流くんのがおれの中で力をなくし、つるんと出て行った。無理やり体の向きを変えて前から抱きつくと、前髪を整えてくれる。
「・・・嫌いな格好がないかって、聞いてきた話のこと?」
「・・・ぅん」
「聞かれたから答えただけだよ?」
「・・・ないって言われたかった」
「・・・き、聞かなかったら、よかったんじゃない?」
「・・・知りたかった」
「知ったからムッとしてるんだよね?」
「・・・もぉいいよ」
ぷいっと背中を向けた。
んー・・・なんか、機嫌が悪いな。放っておく方がいいんだろうけど、和多流くんには逆効果だって知っている。
体を起こして頭を撫でると、おれを見上げて唇を突き出した。
「ガキって思ってるでしょ」
「思ってないけど、ずっとその調子なら今日は仕事しようかなと思った」
「えっ、ダメだよ」
「何でよ」
「モーニングは?」
「どうでもいいって言ったの、誰さ」
「・・・おれです」
「行く気なくなったし、別にいいよもう」
「え!?」
「へそ曲がりと行きたくないもん」
これは本心。だって楽しみにしてたもん。ていうか、和多流くんが言ったんじゃん。食べに行こうかって。
自分で言っておれを期待させて・・・ちょっとやな感じ。
勝手にヘソ曲げるし。
なんなのさ。
「も、もうしません。行こうよ・・・」
「気分じゃないもん」
「・・・怒った?怒ってる?」
起き上がり、顔を覗き込んでくる。そりゃ、怒りますよ。
意味わかんないもん。
「あの、ごめんなさい・・・。ちょっと、その、」
「何?」
「・・・いや、ごめん。わがままでした。ごめんね。・・・シャワー浴びよう?それで、その、食べに行こう?」
「シャワーは1人で行く。その後のことは後で!」
逃げるようにお風呂に入る。
何さ、好き勝手して。家を出る頃にはもうお店も混んじゃってるよ。
いきなりご機嫌斜めになるから、よく分かんないし。何が聞きたかったのか、どう答えてほしかったのか、そんなこと考えて答える余裕なんて、あの時はなかったよ。
むしゃくしゃしながら体を洗っていると、カチャ、とドアの開く音がした。
振り返ると、しょぼんとした顔の和多流くん。
「・・・入っていい?」
さっき断ったじゃん。諦めが悪いな。
無視をすると、すすっと入ってきて正面から抱きしめられた。
甘えるように首筋に顔を埋めてくる。
もー!!
「不満があるなら、最初から口で言ってよ」
「不満じゃないもん」
「じゃあなんで無理矢理したの」
「・・・無理矢理じゃないもん・・・」
「寝込みを襲ったくせに」
「・・・あんまり怒らないで」
「怒るよ」
「・・・甘えたいです」
「・・・もー、しょうがないな・・・」
ちょっと言い過ぎて罪悪感もあったので、腰に腕を回して抱き寄せる。ぺち、とお尻を叩くと顔を上げた。
「ちょっと恥ずかしいかも」
「え?」
「お尻叩かれるの。子供みたいで」
もう一度叩くと、恥ずかしそうに目を逸らした。
「おりゃおりゃおりゃ!!」
ペチペチと連続で叩くと、ぶはっと吹き出して体を震わせた。
「反省した?」
「反省しました・・・」
「恥ずかしいねー。おれにお尻叩かれて」
「・・・めっちゃ恥ずかしいよ」
「悪い子にはお仕置きだよ」
「・・・待って、かなり恥ずかしい。お尻は、なんか、だめだ!」
「可愛かったけどね。ムチムチで」
「やめて!」
「ほら、ムチムチ」
「だーめーでーすー!」
お尻を掴まれた。
グニグニと揉まれた。同じようにやり返すとカプ、とキスをされる。素直に応えると、少し驚いたように目を開いた。
「え?なんか変だった?」
「・・・怒ってると思ったから、やめてって言われるかと・・・」
「機嫌が悪いままならいやだけど、もう悪くないでしょ?」
「・・・うん」
「というか、嫌いな格好とかないんだけどね」
「え!?でも昨日、」
「聞き方とタイミングが悪いよ。頭が回ってない時に聞くから・・・。おれは、あんまりキスができない格好が好きじゃないの!」
「・・・え!?あ、いや、確かに、あんまりできないけど・・・!」
「寝バックは、その、結構、好き・・・くっついてくれるし、キス、してくれるし・・・でも、は、は、背面騎乗位とか、四つん這いとかは、あんまりできないから、微妙」
何言わせるんだよ。もう。
恥ずかしいな!
ムーッとしていると、和多流くんの指先が唇を撫でた。
ぱくっと咥えると、口の中を撫でてくれる。
「ごめんね。でも、おれは好き・・・」
「たまになら、いいよ。好きなの知ってるもん」
「うん」
「あのね、焦らなくていいから。ちゃんと聞いてよ。いきなり襲われるのはびっくりするし」
「すいません・・・」
「仕事で疲れてる?大丈夫?」
「・・・甘えたいかも」
「うん。おいで」
両手を差し出すと、ぎゅーっと抱きしめられた。背中を撫でるともっとして、と小さく言って、しばらくそのまま甘やかした。
************************
「おいしい?」
コーヒーを飲みながら和多流くんが訊ねた。
頷くと、少しホッとした顔。
モーニングは終わってしまったけど、食べたかったメニューがあったので来てみた。
想像以上の大きさのパンケーキ。
ふわふわで、溶けていく。
フルーツもたくさん載せてあって、大満足だ。
「和多流くんのは美味しい?」
「うん。ガレット?なんかオシャレ。野菜が美味しい。食べて」
切り分けてもらって食べてみる。トマトが美味しかった。生地は少し固め。美味しい。
「和多流くんも、パンケーキ」
「ありがと。うわー、空気みたいだ」
「何、それ。あははっ」
「ん、うまい」
「ねー。来てよかった」
「・・・うん。よかった。ごめんね、朝・・・」
「ううん。いいよ。食べたらさ、買い物行かなくちゃ」
「うん。荷物持ちさせてください」
「ありがとう」
「・・・手羽先食べたいな」
「あー、いいね。煮る?焼く?」
「焼く方がいいな」
「食べたら、行こう」
「・・・も少し、ゆっくりしない?」
「え?」
「なんだっけ、アサイーボール?悩んでたじゃん。食べたら?」
ほら、とメニューを見せられる。うーん、でも別に、もうお腹いっぱいだし・・・。
チラッと和多流くんを見ると、少しそらされた。
「・・・もしかしてお詫びのつもり?」
「・・・聞くの、野暮すぎない?」
「もー、いいよ。連れてきてくれたんだもん」
「んー、でもー、」
「また連れてきて。その時食べるから」
「ん。わかった。じゃあスーパー行く?」
「うん」
お店から出て車に乗ると、きゅっと手を握られた。しっかり握り返して頬を擦り寄せると、デレっと眉が垂れた。
「行こ」
「うん。なんでも持っちゃうよ」
「じゃあ全部持ってもらう」
「もちろん」
ふふ、と笑って車を走らせる。
さて、機嫌は直ったみたいだし、帰ったらのんびり過ごそうかな。
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