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しおりを挟む突然、脱毛って痛いの?と聞かれたので。
痛くなかったよ。と答えたら。
「死ぬかと思ったんだけど」
いきなりお迎えと同時に言われて目が点になりました。
「は?」
「いや、脱毛」
「・・・え!?行ったの?!」
「どーしても腹毛が気になって体験に行ってきました」
「・・・で?」
「めっっっっっちゃ痛くて涙出た!涼くんの嘘つき!って思ってた!」
「えぇー!でも本当に痛くなかったんだよ!?」
「もう無理!もう行けない!気にはなるけどあの痛みには耐えきれない!見てよ!赤くなっちゃった!」
電気をつけて見せてくれる。あ、確かに赤っぽいかも。えー?おれ、こんなふうにならなかったんだけどな・・・。
指で撫でると、ピクリと揺れた。
そっと隠して車を発進させる。
「おれ、痛みに弱すぎるのかな・・・」
「おれだって痛いのは嫌いだよ」
「痛すぎてさ、勃起するの。びっくりした」
「あぁ、刺激があるとどうしてもね・・・」
「担当の人、男性にしておいてよかった・・・」
「・・・男性にしたんだ」
ふーん。
なんかちょっと、ムッとする。
和多流くんモテるから、きっと施術した人もいい男が来たとか思っただろうな。
おれも男性にやってもらったけどさ。でもさ、なんかやだ。
「え、ヤキモチ?」
「違う」
「ヤキモチでしょ?そうなんでしょ?」
「しつこい」
「もぉー。素直じゃないなぁ」
「おれの時も男だったし」
そう言った瞬間、和多流くんはいきなり黙り込んだ。
チラッと横顔を見ると、下唇を突き出していた。ムーッと正面を睨みつけている。
「・・・えー?自分はそんな顔すんの?」
「しますー。ちんこ触られてないよね」
「おれ、全身脱毛だったので」
「・・・変なことされてないよね?」
「うーん・・・」
思い出そうとして唸ったつもりが、和多流くんには誤魔化しているように聞こえたらしい。急ブレーキを踏むと、ガシッと肩を掴まれた。
「まさか襲われたの!?」
「いやいやいや!それはないよ!」
「何されたの!」
「何もされてないよ!ただ、電話番号を渡されただけ、」
あ、しまった!
慌てて口を閉じるけど、和多流くんはふぅん、と言ってまたアクセルを踏んだ。
めちゃくちゃ怒ってるじゃん。
もうずいぶん過去のことなのに。
結構なおじさんだったし、タイプじゃなかったし、というか全身を見た後に渡すか!?って引いたし。その後、担当の人を替えてもらった。
メモは確か駅のゴミ箱に捨てちゃったんだよね。
家に着くと、エンジンを切った。ドアを開けようとしたらロックされた。え、マジ?
「えーっと・・・」
「あのさぁ」
「は、はい、」
バンっと窓に手をついて、おれを逃さないと言わんばかりに顔を近づける。うわー、うわー、怒ってるじゃんー!
目を逸らせないからぎゅーっと目を瞑ると、なぜかキスをされた。
え??あれ?
「・・・もう、こんな時にねだるとかズルくない?」
「・・・だ、だって顔が近づいてきたからつい・・・」
照れくさそうに言うので、慌てて話を合わせる。
和多流くんはため息をつくとジロッとおれを見る。
「連絡したの?」
「してないよ。キモいもん。おじさんだったし」
「おれもおじさんですけど?」
「あのさー、20になりたてのおれから見た、おじさんだよ?和多流くんはおじさんじゃないよ!」
「キモいって言った」
「脱毛サロンのスタッフのくせに自分は腕が毛むくじゃらで脱毛の良さに語っておれの全身触った後に連絡先渡してくるおっさんの、どこがキモくないのさ!キモイでしょ!?」
前半は偏見だけどさぁ!まさか脱毛サロンに毛むくじゃらの人がいるなんて思わないじゃん!
「触られたの!?」
「脱毛したからね!次は担当替えてもらったけど!」
「おれの涼くんに触りやがってぇ・・・!!」
ひぇっ!?
ひ、久々に、言われた・・・!
顔が熱くなる。多分、真っ赤だ。それに気づいた和多流くんは、目を細めて唇をつき出した。
「何その可愛い顔」
「あ、や、て、照れちゃって・・・」
「・・・何それ。おれも照れるじゃん」
「・・・和多流の涼くんです。えへへ、・・・」
必死に可愛子ぶって上目遣いで言ってみると、和多流くんは目を丸くして口元を隠した。
怒りと照れと嬉しさでごちゃ混ぜなのかな。
ベタなの、好きだよね・・・。
「あの、もうずいぶん前のことだし・・・怒らないで?」
「・・・うん」
「もう行くこともないだろうし・・・少し生えてきても剃った後に家庭用脱毛器でやればすぐまた生えてこなくなる、」
「は?!生えてこないって言ってなかった!?」
「うわっ!?」
そ、そんな目の前で叫ばなくても・・・!
耳がキーンとする。
「う、産毛みたいなのは、時々生えるよ?」
「今は!?今生えてないの!?」
「今は特に・・・。分かったよ。次生えてきたら剃っていいよ・・・もぉ。本当に、和多流くんの腕の毛より薄いし細いよ?」
「いい!や、やった!やったぁ!憧れの・・・!あ、いや、うん。とにかく、次脱毛に行くことがあったらおれ同伴で!よろしく!」
断ったらキレるんだろうな。
適当に頷いて車から降りようとすると、ガシッと顔を掴まれた。
「ぁぶっ!?」
「まだ。キスしてから」
「んむ、はなじて、」
「あー、可愛い。ぶーってした顔」
「いひゃい。んむ、くぅしぃ!」
ぶにぶにと頬を揉まれ、唇を塞がれた。
もぉ・・・機嫌がいいのか悪いのか、分かんないよ。
舌を絡めてみると嬉しそうに目を細めたので、甘えるように背中に手を回して抱き寄せる。あ、嬉しそう。機嫌直ってきたかな。
顔を離すと両手で頬を包まれて、またぶにっと潰された。
「むぎっ!?」
「可愛いなぁ。ぶーちゃんだ」
「やめれ、いひゃい、」
「おりゃー」
「むがっ」
顔をこねられる。もぉっ!普段はこんなことしないのに!意味分かんない!
やり返すと、謝られた。
家に入ると見てよ、とお腹を見せられる。車の中では分かりづらかったけど、確かに赤くなっている。ヒリヒリしてそう。
「今日はシャワーだけにしないとね」
「うん。赤みが引かなかったら皮膚科に行くしかないかな」
「そうだね。・・・あの、無理しないでいいんじゃない?」
「もう行かない」
「うん。気になるならおれが剃ってあげるからね」
「・・・うん」
あ、ニヤニヤしてる。また変なことを企んでるんだろう。
無視をして部屋着に着替え、さっさと食事の準備をする。和多流くんはなぜかご機嫌。まぁ、機嫌が悪いよりいいか。
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