Evergreen

和栗

文字の大きさ
上 下
135 / 220

109

しおりを挟む

突然、脱毛って痛いの?と聞かれたので。
痛くなかったよ。と答えたら。


「死ぬかと思ったんだけど」


いきなりお迎えと同時に言われて目が点になりました。
「は?」
「いや、脱毛」
「・・・え!?行ったの?!」
「どーしても腹毛が気になって体験に行ってきました」
「・・・で?」
「めっっっっっちゃ痛くて涙出た!涼くんの嘘つき!って思ってた!」
「えぇー!でも本当に痛くなかったんだよ!?」
「もう無理!もう行けない!気にはなるけどあの痛みには耐えきれない!見てよ!赤くなっちゃった!」
電気をつけて見せてくれる。あ、確かに赤っぽいかも。えー?おれ、こんなふうにならなかったんだけどな・・・。
指で撫でると、ピクリと揺れた。
そっと隠して車を発進させる。
「おれ、痛みに弱すぎるのかな・・・」
「おれだって痛いのは嫌いだよ」
「痛すぎてさ、勃起するの。びっくりした」
「あぁ、刺激があるとどうしてもね・・・」
「担当の人、男性にしておいてよかった・・・」
「・・・男性にしたんだ」
ふーん。
なんかちょっと、ムッとする。
和多流くんモテるから、きっと施術した人もいい男が来たとか思っただろうな。
おれも男性にやってもらったけどさ。でもさ、なんかやだ。
「え、ヤキモチ?」
「違う」
「ヤキモチでしょ?そうなんでしょ?」
「しつこい」
「もぉー。素直じゃないなぁ」
「おれの時も男だったし」
そう言った瞬間、和多流くんはいきなり黙り込んだ。
チラッと横顔を見ると、下唇を突き出していた。ムーッと正面を睨みつけている。
「・・・えー?自分はそんな顔すんの?」
「しますー。ちんこ触られてないよね」
「おれ、全身脱毛だったので」
「・・・変なことされてないよね?」
「うーん・・・」
思い出そうとして唸ったつもりが、和多流くんには誤魔化しているように聞こえたらしい。急ブレーキを踏むと、ガシッと肩を掴まれた。
「まさか襲われたの!?」
「いやいやいや!それはないよ!」
「何されたの!」
「何もされてないよ!ただ、電話番号を渡されただけ、」
あ、しまった!
慌てて口を閉じるけど、和多流くんはふぅん、と言ってまたアクセルを踏んだ。
めちゃくちゃ怒ってるじゃん。
もうずいぶん過去のことなのに。
結構なおじさんだったし、タイプじゃなかったし、というか全身を見た後に渡すか!?って引いたし。その後、担当の人を替えてもらった。
メモは確か駅のゴミ箱に捨てちゃったんだよね。
家に着くと、エンジンを切った。ドアを開けようとしたらロックされた。え、マジ?
「えーっと・・・」
「あのさぁ」
「は、はい、」
バンっと窓に手をついて、おれを逃さないと言わんばかりに顔を近づける。うわー、うわー、怒ってるじゃんー!
目を逸らせないからぎゅーっと目を瞑ると、なぜかキスをされた。
え??あれ?
「・・・もう、こんな時にねだるとかズルくない?」
「・・・だ、だって顔が近づいてきたからつい・・・」
照れくさそうに言うので、慌てて話を合わせる。
和多流くんはため息をつくとジロッとおれを見る。
「連絡したの?」
「してないよ。キモいもん。おじさんだったし」
「おれもおじさんですけど?」
「あのさー、20になりたてのおれから見た、おじさんだよ?和多流くんはおじさんじゃないよ!」
「キモいって言った」
「脱毛サロンのスタッフのくせに自分は腕が毛むくじゃらで脱毛の良さに語っておれの全身触った後に連絡先渡してくるおっさんの、どこがキモくないのさ!キモイでしょ!?」
前半は偏見だけどさぁ!まさか脱毛サロンに毛むくじゃらの人がいるなんて思わないじゃん!
「触られたの!?」
「脱毛したからね!次は担当替えてもらったけど!」
「おれの涼くんに触りやがってぇ・・・!!」
ひぇっ!?
ひ、久々に、言われた・・・!
顔が熱くなる。多分、真っ赤だ。それに気づいた和多流くんは、目を細めて唇をつき出した。
「何その可愛い顔」
「あ、や、て、照れちゃって・・・」
「・・・何それ。おれも照れるじゃん」
「・・・和多流の涼くんです。えへへ、・・・」
必死に可愛子ぶって上目遣いで言ってみると、和多流くんは目を丸くして口元を隠した。
怒りと照れと嬉しさでごちゃ混ぜなのかな。
ベタなの、好きだよね・・・。
「あの、もうずいぶん前のことだし・・・怒らないで?」
「・・・うん」
「もう行くこともないだろうし・・・少し生えてきても剃った後に家庭用脱毛器でやればすぐまた生えてこなくなる、」
「は?!生えてこないって言ってなかった!?」
「うわっ!?」
そ、そんな目の前で叫ばなくても・・・!
耳がキーンとする。
「う、産毛みたいなのは、時々生えるよ?」
「今は!?今生えてないの!?」
「今は特に・・・。分かったよ。次生えてきたら剃っていいよ・・・もぉ。本当に、和多流くんの腕の毛より薄いし細いよ?」
「いい!や、やった!やったぁ!憧れの・・・!あ、いや、うん。とにかく、次脱毛に行くことがあったらおれ同伴で!よろしく!」
断ったらキレるんだろうな。
適当に頷いて車から降りようとすると、ガシッと顔を掴まれた。
「ぁぶっ!?」
「まだ。キスしてから」
「んむ、はなじて、」
「あー、可愛い。ぶーってした顔」
「いひゃい。んむ、くぅしぃ!」
ぶにぶにと頬を揉まれ、唇を塞がれた。
もぉ・・・機嫌がいいのか悪いのか、分かんないよ。
舌を絡めてみると嬉しそうに目を細めたので、甘えるように背中に手を回して抱き寄せる。あ、嬉しそう。機嫌直ってきたかな。
顔を離すと両手で頬を包まれて、またぶにっと潰された。
「むぎっ!?」
「可愛いなぁ。ぶーちゃんだ」
「やめれ、いひゃい、」
「おりゃー」
「むがっ」
顔をこねられる。もぉっ!普段はこんなことしないのに!意味分かんない!
やり返すと、謝られた。
家に入ると見てよ、とお腹を見せられる。車の中では分かりづらかったけど、確かに赤くなっている。ヒリヒリしてそう。
「今日はシャワーだけにしないとね」
「うん。赤みが引かなかったら皮膚科に行くしかないかな」
「そうだね。・・・あの、無理しないでいいんじゃない?」
「もう行かない」
「うん。気になるならおれが剃ってあげるからね」
「・・・うん」
あ、ニヤニヤしてる。また変なことを企んでるんだろう。
無視をして部屋着に着替え、さっさと食事の準備をする。和多流くんはなぜかご機嫌。まぁ、機嫌が悪いよりいいか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

親父は息子に犯され教師は生徒に犯される!ド淫乱達の放課後

BL
天が裂け地は割れ嵐を呼ぶ! 救いなき男と男の淫乱天国! 男は快楽を求め愛を知り自分を知る。 めくるめく肛の向こうへ。

義兄に寝取られました

天災
BL
 義兄に寝取られるとは…

支配された捜査員達はステージの上で恥辱ショーの開始を告げる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

私の彼氏は義兄に犯され、奪われました。

天災
BL
 私の彼氏は、義兄に奪われました。いや、犯されもしました。

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

クラスの仲良かったオタクに調教と豊胸をされて好みの嫁にされたオタクに優しいギャル男

湊戸アサギリ
BL
※メス化、男の娘化、シーメール化要素があります。オタクくんと付き合ったギャル男がメスにされています。手術で豊胸した描写があります。これをBLって呼んでいいのかわからないです いわゆるオタクに優しいギャル男の話になります。色々ご想像にお任せします。本番はありませんが下ネタ言ってますのでR15です 閲覧ありがとうございます。他の作品もよろしくお願いします

前後からの激しめ前立腺責め!

ミクリ21 (新)
BL
前立腺責め。

処理中です...