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和栗

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ペラっとアルバムを捲る。
今より幼い涼くんがぎこちなく笑ってピースサインをしていた。
隣の写真は庭でビニールプールに浸かっている写真。軍司くんとその他大勢と楽しそうに笑っていた。
「・・・はー・・・可愛い」
「何回見てるの」
呆れた顔をしてテレビからおれに視線を向ける。
仕事から帰ってきてまったりと時間を過ごしながら、高校生の涼くんを堪能するのがとても幸せだった。隣には本物がいるし、ハーレム状態だ。
「なんでおれの横で見るわけ?」
「可愛い人に囲まれたいから」
「意味分かんない。もう返して」
「やだよ。おれのものだもん」
「いつ和多流くんのものになったのさ」
「絶対返さないから」
「・・・あそ」
立ち上がり、部屋を出ていく。と思ったらすぐに戻ってきた。そして血の気が引いた。
手に、おれの秘蔵ファイルを持っていたから。
「ちょ、な、いつの間に・・・!」
「デザインの本を借りた時に落ちてきました。おれとのハメ撮り写真集」
「プ、プライバシーの侵害!勝手に見るなんて!」
「は?おれ、そもそもハメ撮りを許可したことなんてほんの数回しかないんですけど?ずいぶんいろんな写真をお持ちですね」
「・・・いや、あの、」
「・・・プライバシーを引き合いに出すなら携帯壊してパソコンのデータも飛ばすよ?それくらい簡単だもん。山田くんに頼めば一瞬だし」
「・・・すいませんでした」
謝るしかないじゃん・・・。
もう何も言い返せないじゃん・・・。ていうか冷静に怒る涼くん相手におれなんか太刀打ちできないし・・・。
「おれが許可したのって、5回くらいだと思うんだよね。このコスプレさせられた時は断ったはずなのにねぇ?なんでちゃっかり正常位の写真があるんだろうね?」
パッと広げられる。涼くんに無理を言って着てもらったバニーガールのコスプレ。おれが正常位でがっつり挿入するところを動画に収めたやつの切り抜き。この時涼くんはもう意識が朦朧としていてぼんやりしていたから、ついつい手が動いて撮影してしまった。
全ページ見たのかな・・・。棚の上に携帯を忍ばせて隠し撮りしたやつとかも入ってるんだけど・・・!!
頭の中は絶賛パニック中。
下手なこと言うと藪蛇になるので黙っていると、ニコッと微笑んでファイルを閉じ、ポケットからライターを取り出した。笑顔のままカチッと着火する。
「え!?いやちょっと待ってください!」
「燃やして捨てなくちゃね」
「おれの、おれの宝物!」
「また作れば?データあるんでしょ?許可取もしてないプライバシーなんて完全無視のデータが」
「やだやだやだ!また作ればいいとかそういうことじゃないから!おれの、おれの渾身の一冊なんだから!すべての欲望と願望と情熱を注いだ至極の一冊なの!お願いだから返してください!」
「・・・じゃあ返してあげるけど」
「け、けど・・・?」
「その代わりおれがいなくなります」
「・・・・・・は?意味分かんない。え?え?・・・え?」
「これと、そのアルバムがあれば困らないでしょ?」
ニコニコしたまま高校生の涼くんがたくさん詰まったアルバムを指差した。
え?なんか、すごく怒ってない?おれ、なんかした?これ以外で何かした?絶対したよね?じゃなかったらこんな静かに穏やかに怒らないよね??
「・・・で、出ていくの?」
「いなくなるだけだよ?」
「・・・やだ。どこも行かないで・・・。あの、返す。返します。このアルバムは返すから・・・」
「これはどうする?」
秘蔵のファイルで涼くんは口元を隠した。
おれの・・・おれの傑作・・・。
高画質を最高の光沢紙に印刷してA4サイズにまとめた、厳選に厳選を重ねた写真たち・・・。印刷が完了した時の満足感と達成感、涼くんとイチャイチャできなかった時にお世話になって、何度も何度も思い出してはまたお世話になって・・・。
動画では味わえない妄想と想像を膨らまし、思い出を堪能し、感動すら与えてくれる写真を、おれは、やっぱり、手放せない!
「・・・返して」
「ふーん?」
「出て、行くなら、そうしたいなら、して。ただね、ただ・・・」
「うん」
「絶っっっっっ対に追いかけて捕まえてここに閉じ込めるから」
「・・・ふぅん。そゆことするんだ?」
「するよ。仕事も辞めてもらうし、縛り付けておれから離れられなくする。涼くんが望まなくても、手段は選ばないからね」
必死だった。絶対に逃すものか、手放すものかと、血が沸る。ようやく付き合えたんだから。ようやく、おれに心を開いてくれたんだから。ようやく、おれのことを、見てくれたんだから。
睨みつけるように見つめると、涼くんは真顔になり少し考えて手を出した。
その手におれの持っていた高校の頃の写真を乗せると、秘蔵ファイルを差し出された。
「え?」
「返すよ」
「逃がさないよ」
「逃げるわけないじゃん」
「証拠は?」
「・・・ちゃんとここにいるおれのこと、見て」
「・・・え、」
「・・・今この瞬間のおれは、興味ない?」
少し恥ずかしそうに首を傾げた。
時が止まり、思考も止まる。
瞬きもせずに見つめていると、涼くんは目を逸らしてポツポツと呟いた。
「・・・もう準備してあるんだけど・・・中々、来てくれないし・・・写真ばっかり見てるし・・・1人でしてこようかな」
「・・・ひ、1人でって、ことは、あの、オナニー、です、か、」
「オナニーで足りるかなぁ・・・。1人でお尻もいじらないと足りないかな・・・。ディルドでも挿れるしかないかな。黒の、すごく大きいやつ」
「おれの!おれのがありますよ!ディルドより若干小さめですけど!でも十分!満足させられますよ!」
慌ててスウェットを脱ぐ。涼くんはおれに視線を移すと、指先でおれを呼んだ。その仕草がまた、ひどく挑発的で。
立ち上がって飛びつくと、軽くジャンプをしておれにしがみついた。お尻を支えて抱きしめる。口の中がぐちゃぐちゃになるまでキスをして、涼くんはふふ、と笑った。
「和多流くん、ペニス当たってるよ?」
「うん・・・。すげー興奮してる・・・」
つ、と指先で顎を撫でられ、くんっと持ち上げられた。
反対の手にはいつのまにかコンドームを持っていて、ペチペチと頬を打たれた。
「挿れたいよね?」
「うん、」
「うん、じゃなくて」
「あ、はい」
「どこまで挿れたい?」
「涼くんの、お腹の奥まで挿れたいです」
「・・・本当に挿れられるの?このちんちんが、おれの奥まではいるの?」
先端を指先でグリグリと押される。腰が跳ねた。
うぅ・・・!なんか涼くん、ちょっとSっ気入ってる・・・。すっげー興奮する。いつもより挑発的で、強気で、めちゃくちゃエロい。いつものウブな恥ずかしがり屋さんの涼くんもとてもとても魅力的で興奮するけど、こういうのも、たまには・・・。
「おれの奥、コリコリって、トントンって、できるの?」
「できます」
「・・・このチンチンで?だらしないチンチンでできんの?すぐいっちゃうんじゃないの?ビショビショじゃん」
「絶対にコリコリするし、トントンもします。涼くんはそれが好きなんだもんね?」
「好きなのはそっちでしょ?」
「もちろん」
「はい、でしょ」
「あ、は、はい」
うぉー・・・萌える・・・。この後組み敷いて生意気な口を塞げると思うと、めちゃくちゃ興奮する・・・。
いや、塞がないけどね?いーっぱい喘いでもらいますけどね?
「・・・あのさ」
「はい」
「なんで興奮してるの?」
「早く抱きたくて」
「・・・抱かせるなんて言ったかな?」
「は?」
「は?じゃないでしょ?おれは、お腹の奥をトントンコリコリしてって言ってるだけだよ?」
「えっと?どういうこと?ですか?」
「早くベッドに降ろしてくんない?」
指をさして指示される。
恐る恐るベッドに降ろすと、寝転がって、と言われた。
仰向けで寝転がると下着を脱がされた。涼くんの指がコンドームを被せる。おれの顔を覗き込むと、優しく微笑んだ。
「おれに触ったらしばらくセックス禁止ね」
「は!?」
「はぁ?って何?」
「あ、ごめんなさい・・・。えっと、じゃぁおれは何をすれば」
「手をバンザイして。動かないで触らないで」
「・・・はい」
背中を向けると下着をおろし、おれの足の間に座った。
ローションを少量手に垂らし、そのまま自分のペニスを緩く扱き始めたみたいだった。
「あー・・・んん・・・ぅん・・・」
「涼くん・・・見せてもらえないでしょうか・・・」
「うーん、やっぱり奥が気持ちいいなぁ・・・。よいしょっと」
「え゛っ、」
腰が上がり、ペニスを固定してぐんっと落とした。
ずるんっと奥まで入っていく。腰がガクンと跳ね、あまりの気持ちよさに声が漏れてしまう。
「ゔぐっ・・・!」
「ふぁあ~・・・きもちぃ・・・」
「涼、くん・・・!腰、動かしちゃダメなの?」
「ダメに決まってるよ・・・?おれが、するんだから・・・」
「涼くん、お願い、もう勝手なことしないから・・・」
「ん、ふぅ、ふぅ、」
腰をゆるゆると動かして、涼くんは柔らかく声を漏らした。
コリコリして、気持ちいい・・・。涼くんも気持ちいいのかな・・・。
ていうか、こういう、ゆったりしたセックスが好きなのかな・・・。おれのガツガツした動きより、好きなのかなぁ・・・。
「はぁ、あ、あぁっ、」
「涼くん・・・もう、なんでもいうこと聞くから・・・!お願いだから・・・!」
「あー・・・いく、かも、いくかも、気持ちいい!」
腰の動きが早くなる。柔らかなお尻が前後に揺れてやらしい音が響く。
触りたい・・・触りたい・・・。腰、掴んで、下から突き上げて、それで、もっと奥を刺激して、いつもみたいに、いかせて、ぐちゃぐちゃにしたい。
「涼くん!」
「あっ、い、くぅう~・・・!」
きゅうっと中が締まった。ゆっくりと、確かめるようなうねり。
涼くん、自分でいく時ってこんなふうに締めるんだ。気持ちいい・・・。包まれてる・・・。
「はぁ、・・・はぁあ・・・気持ちよかった・・・」
「涼くん・・・おれも・・・」
「よいしょ、」
ツルッと抜けていった。
ヨロヨロと立ち上がると、下着をつけてからおれのゴムを外し、ゴミ箱に捨てる。
そして秘蔵のアルバムを持ってくると、おれのお腹の上に置いた。慌てて起き上がると、涼くんはニコッと笑っていった。
「これで楽しんでね」
「・・・え?」
「どうぞ。じゃあね」
「待って待って!?どういうこと!?」
スタスタ歩いて部屋に入ろうとしたので慌ててドアをこじ開ける。微笑んだまま、涼くんは渾身の力でドアを閉め、ガチャンっと鍵をかけた。いつの間に鍵なんか・・・!
「涼くん!」
何度呼びかけても応答はなかった。
必死に懇願してもドアは開かないし、ようやく開いたのは朝で、しっかりスーツを着ていた。
無言のまま出て行って、お迎えも断られ帰宅しても無言。
フルシカトを3日ほどくらい、おれはもうヨボヨボのボロボロになってしまった。
秘蔵のアルバムは、取り出すのも億劫になる押し入れの奥にしまい、とにかく謝罪の嵐。
涼くんがようやくおれを見て挨拶をしてくれた時、あまりにも嬉しくて膝から崩れ落ちた。
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