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しおりを挟む「んー・・・」
「買わないの?」
セーターを手に取ってじっくり悩む。
その姿がスーパーでお肉を吟味している時と同じだった。かなり真剣だ。
「いいや」
「いいの?」
「うん・・・。最近買い物しすぎだから」
ぽふ、とセーターを棚に戻しお店から出ていこうとしたので、腕を掴んで引き戻す。
「え?」
「買うよ」
「え??いや、買って欲しいわけじゃ、」
「似合ってるもん。着てる姿、見たいよ。いいでしょ?」
「・・・なんか、ごめん・・・」
「何が?」
「気をつかわせちゃって・・・。来月自分で買うよ」
「ダメ。今着て欲しい」
セーターを取って会計を済ませる。ちゃっかりギフトバッグに入れてもらって手渡すと、困った顔になった。
うーん、いまだに慣れてくれないなぁ・・・。
と、思ったら。
「ありがとぉ」
ニマニマーっと口角が上がり、ふにゃりと表情がほころんだ。
ぐわっ!!?な、なんじゃその笑顔は!!
か、か、か、可愛い~・・・!
ギフトバッグを嬉しそうに持って、ウキウキしたステップで歩き出す。
え、嘘、そんなに喜んでくれるの?そんな、可愛く、笑ってくれるの!?
なんとか平常心を取り戻しながら、大人の笑顔で涼くんを見つめる。
「喜んでくれてよかったよ」
「・・・えへへ。あのー・・・本当は、すごく欲しくって・・・。だから嬉しかった」
「そういう時はさ、おれに言ってね」
「いやいや、そういうのはいいよ」
「違うよ。すっっごく欲しいけど我慢しなきゃいけないとか、そういう時だよ」
「んー・・・。じゃあ、和多流くんも言ってね」
「うん。ありがとう」
「・・・セーター、本当にありがとう。大事に着るね」
「うん」
わーい、と小さく喜んびながら横断歩道の白い部分だけ踏んで歩いていく。
なんて無邪気なんだろう。なんて可愛いんだろう。
*******************
「似合う?」
先ほど購入したオーバーサイズのセーターを着て、くるりと回る。
ただのリビングが一気にパリコレの会場になった。
すかさず携帯を出すと、ピースサイン。しかもダブルで。
「も、もっとファンサお願いします!」
動画!とにかく動画!
おれの荒い鼻息まで入ってしまうけど、知ったこっちゃない。
最近素直になってきたなぁ。前なんて猫みたいに逃げるからブレた写真しか撮れなかったのに。
「すごく嬉しい。和多流くんが買ってくれたから、余計に」
「すごく、すごく似合ってる」
「今度貸してあげるね。和多流くんも着れるでしょ」
「うん。ちょっと、大きすぎたかな。もうワンサイズ小さいのにすればよかったね」
「ううん。このサイズが良かった。だって、貸し借りできるでしょ。これ、絶対和多流くんにも似合うもん」
な、なんて可愛い理由・・・。嬉しすぎて涙が出そうだ。
涼くんはあ、と言って笑うと、なぜかジーパンを脱ぎ始めた。ちゃっかりと動画に収める。多分、おれが日常的に撮影してるから慣れちゃって撮られてるのも忘れちゃってるのかな。なんという好都合。
スラッとした生足がセーターから伸びている。パンツがギリ見えるか見えないか。悩殺スタイルだ。
「じゃん。童貞を殺すセーター」
「・・・」
「この前生徒がこそこそとそんな話をしてて、教えてもらったんだー。あ、でも和多流くんは童貞じゃないから意味ないか・・・。あはは、間違えた」
急に照れ臭くなったのかジーパンを拾おうと屈んだ瞬間、思い切り体を引き寄せる。
バランスを崩しておれに倒れかかった体を抱き止めて、膝に乗せる。
「・・・和多流くん?」
「あのね、童貞じゃなくても死にます」
「そうなの?」
「もー、ひん剥きたくてたまらない。すっげー興奮してる」
「・・・セーター引っ張らないならいいよ?」
「いただきます」
バッとセーターを捲り、乳首にしゃぶりつく。
涼くんは可愛く叫ぶと、いきなりだなーと呆れたように笑った。
******************
「やっぱり似合う!」
ひとしきり抱いた後、涼くんに着てほしいと言われてセーターを着てみた。
目を輝かせて、似合う似合うと褒めちぎり、抱きついてきた。
「やっぱりかっこいい!へへ、思った通りだった!」
「あの、汗かいた後だけどいいの?」
「洗濯するし、いいの!・・・へへへ~。かっこいいなぁ。本当に、似合う」
嬉しいけど、今、フルチンなんだよなー。いいのかな、フルチンにセーター着せて。
隠すことなくあぐらをかいて、褒めちぎる涼くんを見つめていると、なぜか急に黙り込んで目を逸らした。
顔を覗き込むと、照れたように笑い、本当だった、と言った。
「何が?」
「んー・・・童貞を殺す服」
「ん?」
「・・・すごく、なんか、・・・あの、も、もう勃たないかな・・・?無理そうなら、口で頑張るんだけど・・・」
その一言で思い切り勃起する。
何、まだしていいの?
明日仕事だし無理させたらいけないと思ってやめたけど、いいの?
にじり寄ると、照れたように両手を広げて上目遣いでおれを見た。
「もう1回、しよ?」
こてん、と首を傾げる。あ、今のでいきそう。
噛み締めるように頭の中で反響させて飛びつくと、素直にベッドに倒れた。
「1回と言わずに5回くらいしたい」
「うん、」
「いいの?」
「・・・あんまり聞かないでよ。和多流くんに好き勝手されるの、好きなんだから」
「・・・うん。うん!じゃぁ遠慮なく!」
遠慮なく抱きまくった。
回数なんて数えられない。
優しく撫でたり、イチャイチャしながら体中を舐めたり、激しく腰を打ちつけたり、キスをしながらゆるゆると刺激したり。トロトロにとろけた喘ぎ声は最高の刺激。涼くんにしがみついて必死に体を動かした。
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