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年末の二人
しおりを挟むスーパーに行くのが好き。
涼くんがめちゃくちゃ真剣に買い物をするから。値段を見て、持ち上げて、重さを確かめ大きさを確かめ、吟味してカゴに入れたり戻したり、結局入れたり。めちゃくちゃ葛藤して買い物をしている。
割引シールは飛びついてしっかり確認しているからカゴへ。これはもう染みついた習慣なので余計なことは口出ししない。
何度か口出ししたらむすっとしていたので、おれは何も言わないほうがいいのだ。
鮮魚コーナーは基本的に刺身は見ない。
切り身の特売品だけ見て終わり。
とくに刺身が食べたくて仕方ないと思ったことはないので別にいい。が、今日は何となく覗き込んでしまった。
「おっ」
サーモン、20%引き。ちょっと食べたいかも。
隣には少し分厚目に切ってあるサーモンの刺身。割引なし。
うーん。こっちの方が美味しそうだけど・・・。さっきシャケの切り身、買ってたもんな。まぁいっか。
「涼くん、ガム見てきていい?」
「うん」
別れてガムコーナーへ向かう。シュガーレスにしないと食べ過ぎちゃうし、キシリトールって歯に良さそうだから結局いつものやつ。
前に刺激の強いガムを食べた後にフェラをしたら、涼くんが泣いちゃったんだよね。そりゃ痛いわ。キシリトールでもスースーするって言われるけどさ。だからなるべくセックスの前は食べないように気をつけなきゃ。
涼くんを追いかけるとスイーツコーナーを見ていた。
カゴにガムを入れようとして手が止まる。さっき見ていたサーモンのパックが入っていた。しかも、割引シールなし。
「買うの?」
「ん?うん。美味しそうだよね」
「割り引かれてるのもあったよ」
「こっちの方が美味しそうだったもん。あとこれ、見てー。ラストだった。マグロ」
「わ、半額じゃん」
「マグロはこれ以外なかったからこれにした。へへへ。今日の晩御飯、これね」
「いいの?」
「うん」
「高くない?」
「え?そうかな。たまには豪華に食べようよ」
にこーっと笑ってカゴを持って歩いていく。
さっきおれが見てたの、気づいてたのかな。
嬉しい。
「涼くん、涼くんの好きなプリンあるよ」
「え!?あ、ほんとだ!」
「買って行こう。デザートも食べちゃおうよ」
「いいねぇ」
「お刺身、ありがとうね」
「えー?何で?おれが食べたかったんだよ」
「おれも食べたかったんだー」
「一緒だね」
「ね。一緒」
「ビール買う?」
「今それ、言おうとした」
「以心伝心だー」
「え、エスパー?」
「かもしれない」
「やべー、おれの心が読まれちゃう」
「読めちゃうなー」
「足腰立たなくなるまでしたいとか、バレてる?」
「・・・バレてます」
ぽやっと頬が赤くなる。ぐあっ!破壊力すげぇ!
可愛いなぁ。
ビールをカゴに入れ、お会計を済ませる。
車に積み込んでエンジンをかけると、そっと手を握られた。
「煮物、時間かかるかも」
「待つよ。その間にお刺身食べて、煮物はおつまみにしよう」
「ん」
「・・・その後に、ね?」
耳元に顔を寄せると、こくんと頷いた。
可愛い・・・。早く帰らなきゃ。
いーっぱいイチャイチャしなくちゃ。
我慢できなくてキスをすると、慌てたように胸を押し、家で!と叱られた。
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