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和栗

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二人の小話

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「SNSで何を見てるの?」
と聞いてみたら。
「世界?」
と首をかしげて答えた。
SNSはあまりやらない、と言っていた和多流くんが友達に誘われただけで登録するなんて珍しいし、その後もちょくちょくチェックしているからさらに珍しい。
見る?と言われたので見てみたら、高校生くらいの男の子の写真を見ていた。
「え、ロリ、」
「違いまーす!!この子、SNSで人気でファッション雑誌とかに載ってる子らしいんだけど、涼くんと体系が似てるから参考にしてんの」
「なんの?」
「え?服の」
「なんで?」
「なんでって・・・忘れた?月一回好きな物買っていいって約束したじゃん」
一瞬困惑する。
が、思い出した。約束した。したよ?確かにした。したけど!
「和多流くんの個人のお小遣いの話?」
「そう」
「金庫とは別に管理してって言ってきた?」
「そう」
「月に一回パーッと好きに使っていいよって確かに話したね」
「でしょ?」
「おれの服を買っていいなんて言ってないでしょ!」
「好きに使うんだからいいでしょ」
よくないって。
和多流くんは湯水のようにお金を使ってしまうタイプだから一度、気をつけたらと声をかけた。
そしたら大雑把に管理してというので保険料や仕事の経費や接待費、生活費を引いたお金を管理するようになり、あっという間におれが家のお金の管理をすることになってしまった。
和多流くんは満足そうだけど、どれが何のお金か時々分からなくなるんだよな・・・。
パソコンで家計簿でも作らないと。
「自分の物買いなよ」
「欲しいものないし・・・」
「じゃぁ取っておきなよ」
「なんで。この時のために調べに調べたんだよ、おれは」
「いらないよ」
「あ、またそうやって・・」
「い!ら!な!い!!」
強めに言うと怒った顔になった。おれの手から携帯を取るとむすっとしたまま仕事部屋に入っていく。
欲しいなんて言ってないのにあんな態度取られたら、面倒になってしまう。
和多流くんのお小遣いが入ったポーチを持って乱暴に仕事部屋のドアを開けると、ベッドでふてくされていた和多流くんは驚いて飛び起きた。
そうだよね。いつもおれ、こんな風に追いかけないからね。
でも今日はちょっと腹が立った。
「自分で管理して」
「え、」
「そんなに怒るなら自分で管理して。もうしたくないから」
「・・・いや、その、」
「ん」
バンっと音を立ててポーチを机に叩きつける。
そのまま無言で部屋を出てソファに座る。
まったく。
何かあるとすぐいろんなものを買ってくるんだから。
普段だって打ち合わせに行ってきたからお土産って、ケーキとかシュークリームとかお饅頭とか買ってくるし。
友達と遊んできていいのがあったからって文房具とかキッチン用品とか渡してくるし。
まぁ、昔のおれからしたらこんなにプレゼントをしてもらってるなんて信じられないことかもしれないけど・・・あまり過剰にされるとちょっと嫌になってくるっていうか・・・。
物がないと満足できないって思われてんのかなとか、物を渡さないと気を引けないと思われてるのかなとか・・いろいろ考える。
でも、もっと嫌なのが、過去のおれがそうやって元カレたちの気を引こうとしていたのを思い出すから。
あの頃のおれを思い出すのは少し辛い。
和多流くんの感情とおれの感情は全く違うことは分かってる。でも時々苦しい。
和多流くんはおれに喜んでほしいから、笑ってほしいから買ってきてくれるんだって分かってる。
嬉しいし、楽しいけど、ほんの少しでいいのに。それで充分なのに。
「入っていい?」
開けっ放しのドアから少しだけ和多流くんが顔を出した。
小さくうなずくと隣に腰かけてちょんっと手を突く。手のひらを見せると、きゅっと握られた。
「しばらく控えるよ」
「・・・うん、」
「ごめんね」
「・・・ん」
「・・・まだ怒ってる?」
聞き方が叱られた子供が様子伺をするように聞こえて、つい顔を見る。
不安そうにじっと見ていた。
ふっと笑ってしまう。笑ったことでほっとしたのか、少しだけ目が大きく開いた。
「ちょっとムカッとしただけ」
「ごめん」
「おれも、嫌な言い方してごめん」
「・・・そんなにいらないんだーって悲しくはなったけど・・」
「いつも通りが一番嬉しいよ」
「いつも通り?」
「うん」
「・・・うん。分かった。ありがとう」
ありがとう??
何が?
聞こうとしたらポーチを差し出された。
「あのさ、やっぱり管理してほしい。負担にならなければ」
「え?でも、」
「お願い」
「・・・変わってるよね。管理してもらいたいって」
「そうかもしれないね。でもさ、2人で暮らしてるなって感じしない?」
「えー?うーん・・・するけど・・」
「涼くんに叱られるの、結構好き。さっきはびっくりしたけど」
「叱られるのが好きって変なの」
「放っておかれるより好きってこと。叱るってことはさ、考えてくれてるってことだもん」
少しだけ寂しそうに笑う。
お母さんを早くに亡くしているから恋しいのだろうか。
母性なんて少ないけど、少しだけくすぐられた気がした。
少し言いすぎちゃったなと反省したのも束の間。
やっぱり和多流くんはへこたれない人だった。
次の日はシュークリーム、その次の日はケーキ、また次の日は和菓子など、連続でお土産を買ってきた。
買いすぎ、と注意をするといつものでいいって言ったから、ときょとんとした顔。
いやいや、いつものっていうのはこういうことじゃなくて・・・。
答えに詰まっていると、ニコニコしながら一緒に食べようね、と言われる。
何も言えなくなってしまった。
今月はこれでおしまいにしてと伝えると酷く残念がっていたけど、来月はもっと豪華なもの食べようねとまたまたポジティブに言われた。
お土産がなくても、和多流くんがいるだけで十分なんだけどな。
さてさてどうやって伝えようかな。
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