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Photo おまけ
しおりを挟む「・・・真喜雄、あのさ、」
「んー?」
「・・・すごく今更だけど」
「うん」
「・・・写真撮ってもいい、よ」
「・・・え!!いいの!?」
勢いよく身を乗り出して、僕の肩を掴んだ。衝撃で箸を落とす。真喜雄は慌てて拾い上げると、ティッシュで拭いてくれた。
ニコニコと顔いっぱいに笑って、携帯を引っ張り出した。
「え、ここで撮るの?」
「うん」
「・・・えー、」
「あんまりカメラって使った事ないな」
ここじゃ嫌だ、と言いたかったけど、なんだかとてもウキウキしてるので何も言えなくなってしまった。
真喜雄は少し格闘すると、やっと満足いく設定にできたのかカメラを向けた。なぜか僕の肩を寄せて、インカメラで。
驚いた顔の僕と、無表情だけど嬉しそうな顔が画面に収まり、カシャ、と軽い音を立てた。
「え、君何してるの?」
「え?ダメだったか?」
「・・・ツーショットが良かったなら、最初から言ってくれれば・・・」
「いや、今、2人でがいいなって思って・・・」
満足そうに確認すると、そっとポケットに突っ込んだ。昼休みが終わりに近づいていたので倉庫から出ると、マットの上に手帳が落ちていた。拾い上げると紙が落ちたのでもう一度かがんで、そして固まった。
そこにあったのは僕の姿。背景は木々。ジャージを着て少し目を伏せてしめじをハサミで切ってる写真だった。
林間学校の時のものだ。
確か回覧で回ってきてた。お金を封筒に入れて担任に渡す古風なやり方。僕はもちろん買わなかった。真喜雄がサッカー部の人と写っているものが数枚あったけど、欲しいとは思わなかったし。
だからこれは、真喜雄のだ。振り返ると、あちゃー、と言いたげに口元を隠して目をそらす姿があった。
早足に近づいてくると、ぱっと手から奪われた。
顔が熱くなる。恥ずかしい。
「・・・持ってるじゃないか」
「・・・」
「真喜雄!」
「・・・貰っただけだし」
「誰に?どうやって、なんて言って貰ったんだよ?」
「・・・ごめん嘘」
「・・・もう!」
「だ、だって、買うに決まってるだろ!・・・透吾だし、・・・」
「せめて家に置いておいてくれ」
「・・・うん、落としたら危ないもんな・・・」
「君と僕の関係性が疑われるからね」
「それは困る。誰にもバレたくない」
真剣に言われた。なんか意外な一言だった。てっきり、別にいいとか言うかと思ったけど。
真喜雄は生徒手帳を制服の内ポケットにしまうと、きっちりと学ランのボタンを留めた。そしてそっと耳を寄せた。
「2人の秘密がいいからさ」
「・・・君、確信犯だな」
「え?何が」
そんなこと言われたら、嬉しくなってしまうじゃないか。
ムズムズする耳をこすって倉庫から出る。また夜な、と肩を叩き、真喜雄は走っていった。チャイムが鳴る。僕はもう、遅刻でいいや。
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