群青色の約束

和栗

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イエロー・ハッピー6

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「ねぇ蓮ちゃん、野球部ってチア部と付き合うことが多いって本当?」
雑誌を見ながら訪ねると、動きが止まった。
練習が一日休みなので蓮ちゃんの部屋でまったりしている。さっきおばさんたちと一緒にご飯も食べたんだ。おいしかったなー。
返事がないので横顔を見ると、見たこともないくらいこわばっていた。
「ど、どうしたの?」
「・・・いや、まぁ、そうだなって・・・」
「可愛い人多いもんね。サッカー部はテニス部の子と付き合うことが多いってアデルくんが言ってたよ」
「・・・ふぅーん・・・」
「やっぱり接点があるのかなぁ。サッカー部とテニス部はコートが近いもんね。野球部はチア部が応援来てくれるもんね」
「・・・その話やめない?」
「え?どうして?変なこと言った?」
「・・・嫌だから」
もしかして、前の彼女がチア部だったのかな・・・。
黙ってうなずくと、肩を抱き寄せられた。そのまま膝に持ち上げられてギューギューに抱きしめられる。
頬を摺り寄せると、カプっと唇に噛みつかれた。
「うちのチア部、いいのは見た目だけだぞ」
「え、」
「こっぴどくフラれたやつ多いしさ・・・。臭いからやだ、とか」
「・・・失礼!!そんなこと言うの?!こっちから願い下げだよ!蓮ちゃんも言われたこと、あったりするの・・・?」
「おれ?あー・・・汚いとかはあるよ」
「・・・罰が当たればいいよ」
呟くと、大笑いした。ずっとずっと笑っているので、ついつられてしまう。
息を整えると、珍しいこと言うなと言われた。だって腹が立ったんだもん。頑張って練習して試合してるんだから、服が汚れるのは当たり前なのに。
「まぁ母ちゃんに言われるのも日常茶飯事だからな。靴下とかえぐいぞ。臭いし汚いし」
「男だもん、仕方ないよ」
「藤一が小綺麗だったから余計言われるんだよな」
「さわやかだったんだ」
「それもちょっと違うな。なんつーか・・・メカオタクでずーっと部屋に閉じこもってたしなー。肉より野菜好きだったし」
「そうなんだ」
「ラジオ分解して組み立ててまた音が出るようにしたり、ジャンク品のパソコンかき集めて自分好みの作って遊んだり、こいつ不気味だなーって思ってたけど、いきなりバイクに目覚めて免許取りに行くわ、家継ぐとか言い出すわ・・・まぁ、いいんだけどさ」
「大学行かなかったんだね」
「だってバカだもん。これ真面目な話な。母ちゃんが頭抱えるくらいバカだったから、家継ぐって言った時は母ちゃんもすげー後押ししてたよ。父ちゃんはまぁメカいじりも好きだしちょっと教えれば覚えるだろうと思って教えたらのめり込んでいったし」
ぽす、と布団の上に倒された。もそもそとパーカーの中に手が入ってくる。慌てて押さえると、何もしないからと言われた。最近いつもこんな感じで自然と素肌に触れてくる。
したいんだって話をしたあとから、余計だった。
僕はドキドキしっぱなしなんだよなー。蓮ちゃんはどうなんだろう。
するするとお腹を撫でられる。天井を見ると、うっすらとシミがあった。雨漏りとか、してたのかな。そんなどうでもいいことを考えてしまう。
「佑ー」
「え?」
「佑はいい匂いだな」
「蓮ちゃんもだよ」
「え、マジで?」
「うん。蓮ちゃんだなって、安心する。あの、お腹くすぐったいよ」
「・・・あー、やっべ。ムラムラしてきた」
えぇ!!
顔に熱がこもる。
蓮ちゃんはすすっと離れると、深呼吸して窓際にずりずりと移動した。落ち着くまで蓮ちゃんはこうやって僕と距離を取る。近寄ったらきっと、怒るんだろうなぁ。まだ覚悟がないのにここで近づいても、蓮ちゃんに失礼だもん・・・。
でも、可愛いなって思う。僕のことが好きなんだなって思う。僕も蓮ちゃんが好きだって、思う。
「蓮ちゃん、ちょっとだけ、そばに、行きたいかなって、思うんだけど・・・」
「ダメ。我慢できなくなる。下に親いるし、勘弁」
「・・・ちょっとだけなら、いいよ」
「・・・ちょっとじゃ収まんないって」
「・・・ん・・・。分かった。ごめんね・・・」
足を持ち上げてそっとなでる。
そばに行きたいなぁ・・。手とか、握りたい・・・。
「・・佑」
「ん・・どうしたの?」
「・・・本当に、ちょっとならいいの?」
顔を上げると、蓮ちゃんが予想以上に近くにいた。気配も音もしなかったから本当にびっくりした。
息を飲むと、顔が近づいてきて唇が重なって、舌が触れた。
「ふ、ん・・・」
「佑、本当にいい?」
「・・・ちょ、ちょっとって、どのくらいか分からないけど・・・」
「・・・じゃぁ、あの、乳首・・・」
「・・・え!?」
「できることなら舐めてみたいんだけど」
なんか、目が、鋭くなってきたように見える・・・。
乳首を、舐めるって、どういうこと・・・?あ、いや、そういうことっていうのは分かってるんだけど!男って、そこ、くすぐったいだけじゃないかな・・・!?
ぎゅっと布団を掴む。意を決してうなずくと、ぐわっと服をめくられた。服を脱がされ押し倒された。足のことなんて気にしないで、ぐっと伸ばされて開かされた。
「あ、わわわわ・・・!」
「おれのも触っていいよ」
シャツを脱いで覆いかぶさって来た。がっしりした筋肉が目の前に現れる。
「あ、あれ・・・?蓮ちゃん、ここ・・・」
肩に変な痕があった。
そっとなでると、少しだけ悲しそうな顔をしてから笑ってくれた。
「・・・ずっと佑といたいって思うから話すけど、これさ、佑がおれのこと突き飛ばして、その時の傷。おれの、・・うん、大事な傷」
「・・・蓮ちゃん・・・」
「佑がおれのことを助けてくれたんだって、毎日毎日思い出せる。忘れないでいられる。佑が隣にいたんだって、ずっと感じてた」
「・・・嬉しいよ。僕のこと覚えていてくれてありがとう。傷、ごめんね。痛くない?」
「だってただの火傷だもん。ちっとも痛くないよ。痕だって、だいぶ薄くなっちゃったんだ」
ぺとりと手のひらが胸にあたる。ドキドキした。恐る恐る同じように手を当てると、ドキドキと脈打っているのが分かった。
「おれの心臓もすごいだろ?」
「・・・うん、意外だった・・・」
「何でよ。好きな人に触るんだぜ?緊張だってするだろ」
「・・僕は口から心臓が出そうだよ」
「出ないよ。キスするからな」
薄い唇が近づく。これ以上のことを今後、蓮ちゃんとするんだ。そう思ったら体が震えた。
僕も、蓮ちゃんに何かしてあげたいなぁ・・・。
「おーい!蓮二ー、佑くん!リンゴ貰ったけど食べる?」
どさっと大きな体が落ちてきた。ぐえっと変な声が出る。蓮ちゃんは怒った顔をしながら勢いよく起き上がってシャツを着ると、がらっとふすまを開けた。
「邪魔すんじゃねぇ!!」
「え、何が。いたたたたた!!」
慌ててパーカーを着てふすまの前に立つ。蓮ちゃんが藤一くんの頭を拳骨でぐりぐりしていた。あ、すっごく痛いやつだ!
「あ、た、佑くん・・・!リンゴ食べる・・?」
「いらねぇよ、店戻れ」
「あ、た、食べたいよ!僕リンゴ好きだし!」
「・・ッチ。母ちゃんに、少ししたらした行くって、言っておいて」
「あぁ、よかった。もう切っちゃってさ。すぐおいでねー」
眼鏡が曲がったまま、藤一くんは狭い階段を降りていった。
一度部屋に戻って一息つく。
「ふざけんなよ藤一・・・!あとで殴る・・!」
「あ、あはは・・・。あ、えっと・・・また、次・・しようね・・・」
ぐっと肩を掴まれた。乱暴に唇が重なって、しばらくキスを繰り返した。
舌が熱い。溶けそうだ。
「絶対だからな」
「・・うん、あははは・・・照れちゃうね、」
「はーぁ、今日は佑思い出してオナニーしよっと」
「や、やめてよそんなこと言うの!」
恥ずかしくてたまらなくて大きな肩を叩く。
バタバタと部屋から出て居間に降りる。おばさんが、騒がしい2人ねーと笑っていた。蓮ちゃんと顔を見合わせて笑った。



 
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