19 / 25
十五話
しおりを挟む
私はアルマンに従いノートン家の屋敷に入った。玄関ホールはとても広くこの場でちょっとした夜会が開けるのではないかというくらいであった。玄関はその家の顔とよくいうがあまりにも広すぎる。中央には大きな階段があり踊り場が途中でありそこを境に左右に階段が分かれて2階へとつながっていた。その階段に沿うように歴代の当主の肖像画と思われる絵が飾られている。廊下には調度品が多く飾られており、博物館ような様相を呈している。私はアルマンの後に続き、そのようなものを眺めながら驚きともに関心を持った。さすが世界一の強国と言われる帝国の公爵だ他とは格が違うと思いながら調度品を吟味し進んでいった。
すると一際大きく豪奢な扉の前でアルマンが足を止めた。その先にベルラント様がいらっしゃるのだろう。
「旦那様、アデリナ様がいらっしゃいました」
アルマンがノックをしてそう言うと
「入れ」
というベルラント様の低い声が中から聞こえて来た。アルマンが扉を開き、私は中に入った。中には本がびっしりと入った本棚がずらりと並んでいた。そして、部屋の中央には大きなデスクがあり、ベルラント様はそこで山のようにデスクに乗っている書類に目を通していた。真剣そのものであり声をかけれる雰囲気ではなかった。私はこの状況をどうすればいいかわからずアルマンを見ると、アルマンはごゆっくりと言わんばかりのにこやかな笑みを浮かべ一礼をして扉を閉めて出て行ってしまった。これによって、執務室の中には私と仕事中のベルラント様になってしまった。私はどうもできず立ち尽くしてベルラント様を見ていた。ベルラント様は真夜中のように黒い髪と全てを吸い込んでしまいそうな黒い瞳をしているため暗いイメージを感じさせる。さらに美しく整った顔をしているが、ベルラント様は無表情が標準装備であるため人間味を感じさせず怖く近寄り難い雰囲気がある。私がぼけーっとベルラント様を見ながらそのような分析していた。
執務室の中はベルラント様の筆音と紙が擦れる音だけが響いている。すると当然執務室に少しの静寂が流れた。ベルラント様は手を止め私のほうを向いて言った。
「アデリナ嬢。久しいな」
「はい。お久しぶりでございます。ベルラント様」
「……」
「……」
そこで話は止まった。ベルラント様が何かをいう気配はない。私はどうしたらいいのかわからなくなった。とりあえず、私から話を切り出してみることにした。
「あの、ベルラント様。この度は突然の訪問大変申し訳ありませんでした」
私はそう言って礼をした。そして、続けて
「今回私がこちらに参った理由でございます。私の母から手紙が届いていると思いますが、どうかリシャール公が主催する夜会にてパートナーとなって頂けないでしょうか」
私はそう言って頭を下げた。するとベルラント様は机に置いてあった鈴を鳴らした。その鈴が鳴るのと同時にさっき玄関前にいたメイド達が中に入って来た。
「旦那様。先の件の準備はできております」
メイドの一人がそう言うとベルラント様は頷いた。すると
「さあ、アデリナ様。こちらへ」
と言ってメイド達は目を輝かせて私を違う部屋に連れて行ったのだった。
すると一際大きく豪奢な扉の前でアルマンが足を止めた。その先にベルラント様がいらっしゃるのだろう。
「旦那様、アデリナ様がいらっしゃいました」
アルマンがノックをしてそう言うと
「入れ」
というベルラント様の低い声が中から聞こえて来た。アルマンが扉を開き、私は中に入った。中には本がびっしりと入った本棚がずらりと並んでいた。そして、部屋の中央には大きなデスクがあり、ベルラント様はそこで山のようにデスクに乗っている書類に目を通していた。真剣そのものであり声をかけれる雰囲気ではなかった。私はこの状況をどうすればいいかわからずアルマンを見ると、アルマンはごゆっくりと言わんばかりのにこやかな笑みを浮かべ一礼をして扉を閉めて出て行ってしまった。これによって、執務室の中には私と仕事中のベルラント様になってしまった。私はどうもできず立ち尽くしてベルラント様を見ていた。ベルラント様は真夜中のように黒い髪と全てを吸い込んでしまいそうな黒い瞳をしているため暗いイメージを感じさせる。さらに美しく整った顔をしているが、ベルラント様は無表情が標準装備であるため人間味を感じさせず怖く近寄り難い雰囲気がある。私がぼけーっとベルラント様を見ながらそのような分析していた。
執務室の中はベルラント様の筆音と紙が擦れる音だけが響いている。すると当然執務室に少しの静寂が流れた。ベルラント様は手を止め私のほうを向いて言った。
「アデリナ嬢。久しいな」
「はい。お久しぶりでございます。ベルラント様」
「……」
「……」
そこで話は止まった。ベルラント様が何かをいう気配はない。私はどうしたらいいのかわからなくなった。とりあえず、私から話を切り出してみることにした。
「あの、ベルラント様。この度は突然の訪問大変申し訳ありませんでした」
私はそう言って礼をした。そして、続けて
「今回私がこちらに参った理由でございます。私の母から手紙が届いていると思いますが、どうかリシャール公が主催する夜会にてパートナーとなって頂けないでしょうか」
私はそう言って頭を下げた。するとベルラント様は机に置いてあった鈴を鳴らした。その鈴が鳴るのと同時にさっき玄関前にいたメイド達が中に入って来た。
「旦那様。先の件の準備はできております」
メイドの一人がそう言うとベルラント様は頷いた。すると
「さあ、アデリナ様。こちらへ」
と言ってメイド達は目を輝かせて私を違う部屋に連れて行ったのだった。
11
お気に入りに追加
2,495
あなたにおすすめの小説

王子の婚約者を辞めると人生楽になりました!
朝山みどり
恋愛
わたくし、ミランダ・スチュワートは、王子の婚約者として幼いときから、教育を受けていた。わたくしは殿下の事が大好きで将来この方を支えていくのだと努力、努力の日々だった。
やがてわたくしは学院に入学する年になった。二つ年上の殿下は学院の楽しさを語ってくれていたので、わたくしは胸をはずませて学院に入った。登校初日、馬車を降りると殿下がいた。
迎えに来て下さったと喜んだのだが・・・

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。
りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。
やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか
勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。
ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。
蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。
そんな生活もううんざりです
今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。
これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

それでも好きだった。
下菊みこと
恋愛
諦めたはずなのに、少し情が残ってたお話。
主人公は婚約者と上手くいっていない。いつも彼の幼馴染が邪魔をしてくる。主人公は、婚約解消を決意する。しかしその後元婚約者となった彼から手紙が来て、さらにメイドから彼のその後を聞いてしまった。その時に感じた思いとは。
小説家になろう様でも投稿しています。
あなたとの縁を切らせてもらいます
しろねこ。
恋愛
婚約解消の話が婚約者の口から出たから改めて考えた。
彼と私はどうなるべきか。
彼の気持ちは私になく、私も彼に対して思う事は無くなった。お互いに惹かれていないならば、そして納得しているならば、もういいのではないか。
「あなたとの縁を切らせてください」
あくまでも自分のけじめの為にその言葉を伝えた。
新しい道を歩みたくて言った事だけれど、どうもそこから彼の人生が転落し始めたようで……。
さらりと読める長さです、お読み頂けると嬉しいです( ˘ω˘ )
小説家になろうさん、カクヨムさん、ノベルアップ+さんにも投稿しています。

あなたに恋した私はもういない
梅雨の人
恋愛
僕はある日、一目で君に恋に落ちてしまった。
ずっと僕は君に恋をする。
なのに、君はもう、僕に振り向いてはくれないのだろうか――。
婚約してからあなたに恋をするようになりました。
でも、私は、あなたのことをもう振り返らない――。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる