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八話
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馬車はすぐに関門についた。関門は最近、公国で起きた革命の影響で難民が列を成していた。その中一際目立つ二人組が兵士と口論をしていた。その二人組の一人が偉そうな態度で兵士を怒鳴っていた。私がその二人組を見るとアインスが
「あれがゴーティエ家です。そして、真ん中で偉ぶっているのがゴーティエ家当主エイドリアン公です」
と指を差した。ゴーティエ家一行は男一人、女一人の合計二人組であった。彼らは、着ているものは立派であったが手ぶらのようであった。まさに、着の身着のままで逃げてきたと言う言葉がふさわしい様子であった。諜報員が予定通り二人の誘導に成功したようだ。私たちの馬車はゆっくりと彼らの方へ向けて進んだ。
「だから!! ワシはゴーティエ家当主のエイドリアン様だと言っているではないか。お前のような雑兵が粗雑に扱っていい存在ではないのだ。早く私たちを通せ!!!」
ゴーティエ公がそう言って兵士を罵っていた。兵士は辟易した様子で相手をするのももう嫌だといった感じであった。
「お嬢。さあ、行きますよ。準備は大丈夫ですか?」
アインスはそのように言った。私はそれに答えてうなずいた。馬車は関門の横につけ止まった。私たちは馬車から降りた。そして、アインスは
「そこの者!! そこのお方は間違いなくゴーティエ家の方々だ。エンツェンスベルガー家より参った使いである私が保証しよう!」
と周りに聞こえるような声で叫んだ。すると関門の兵士は私たちの乗ってきた馬車の家紋を見たのか私たちに礼をとった。そして
「はっ!! 大変失礼いたしました。お通りください」
兵士はそう言ってゴーティエ家を通したのだ。ゴーティエ公は関門を通り私たちの元に近づき
「うむ。迎えご苦労」
と偉そうに言った。私たちはそれに応えて礼をとった。
「お迎えが遅れてしまい申し訳ありませんでした。ここから先はエンツェンスベルガー家がお守りいたします」
私はそのように彼らに言った。すると、アレクサンドラと思われる女性が
「本当に遅すぎるわ!! 女神のように美しい私をこんなに泥だらけにさせて!!」
と言い散らかした。噂通り傲慢な人のようだ。見た目も洗って化粧をすればかなりの美人になるだろうことからこちらも噂通りみたいだ。これなら、バルトロメウスも気にいるだろうと私は思い、心の中で笑みを浮かべた。
「大変申し訳ありませんでした。皆様のような高貴な方々をお迎えする準備に時間がかかってしまったのです。最高のおもてなしをご用意させておりますのでどうか平にご容赦を」
私はそう答えた。
「そうか、まぁ許そう。並大抵であったなら許さぬぞ」
ゴーティエ公はそう言ってゴーティエ公とアレクサンドラは馬車に乗った。馬車はゆっくりと最寄りの町の宿に向け進み出した。
「では、これからの予定を話させていただきます。まず、本日は最寄りの町の宿にお泊まりいただき心身とも休めていただきたいと思います。そして、次の日にエンツェンスベルガー城に向かいエンツェンスベルガー卿に会っていただくいう形となりますが、よろしいでしょうか?」
アインスはスラスラと今後の彼らの予定を話した。ゴーティエ公は
「よかろう。それでいい」
とまた偉そうに返した。終始偉そうな態度をとる人物だ。その後ゴーティエ公は、
「それで、エンツェンスベルガーはどのような感じだ?」
曖昧に私たちに聞いてきた。私がニコニコと答えて
「はい、今代のエンツェンスベルガー侯爵様は名君と呼び名が高く、エンツェンスベルガー領は隆盛を極めていると言ってもいい状況です」
「そうか。それは素晴らしいことだ。確かエンツェンスベルガー卿にはアレクサンドラと年頃の近い子息がいたな?」
ゴーティエ公は、私にそう聞いてきた。私は懸かったとばかりにゴーティエ公に捲し立てるように言った。
「えぇ、それはバルトロメウス様のことでございましょう。バルトロメウス様は容姿端麗であり、とても勇しくカリスマ性があるお方です。人民からの人気がある方でもございます。しかし、そんな素晴らしいお方であるバルトロメウス様には国から押しつけられた婚約者がおりまして、その方は格下の伯爵家のご令嬢でございます。その方は傲慢で血が通うっていないようなほど冷血な方のです。とても嘆かわしことでございます。もしバルトロメウス様にアレクサンドラ様のような美しい方だったらと悔やむばかりでございます」
私は本当に残念そうに顔を下に向けてそう言った。
(カミラ、ごめん!!)
あと私は根も葉もないことを言ってしまったことを心の中で謝っておいた。こんな奴より何千倍何万倍も素晴らしい友人の悪口を言うのは少し罪悪感が湧いたが、これは必要なことと自分に言い聞かせた。
ゴーティエ公は私の返答に満足したのか
「そうか、そうか」
にやけた顔をして言った。アレクサンドラも悪い笑みをして
「まぁ、バルトロメウス様なんてお可愛そうなことなの」
と白々しく言っている。私とアインスはそんな醜いケモノたちをみて仕込みが上手くいっているとほくそ笑んだ。そうして、馬車は町の宿へと向かうのだった。
「あれがゴーティエ家です。そして、真ん中で偉ぶっているのがゴーティエ家当主エイドリアン公です」
と指を差した。ゴーティエ家一行は男一人、女一人の合計二人組であった。彼らは、着ているものは立派であったが手ぶらのようであった。まさに、着の身着のままで逃げてきたと言う言葉がふさわしい様子であった。諜報員が予定通り二人の誘導に成功したようだ。私たちの馬車はゆっくりと彼らの方へ向けて進んだ。
「だから!! ワシはゴーティエ家当主のエイドリアン様だと言っているではないか。お前のような雑兵が粗雑に扱っていい存在ではないのだ。早く私たちを通せ!!!」
ゴーティエ公がそう言って兵士を罵っていた。兵士は辟易した様子で相手をするのももう嫌だといった感じであった。
「お嬢。さあ、行きますよ。準備は大丈夫ですか?」
アインスはそのように言った。私はそれに答えてうなずいた。馬車は関門の横につけ止まった。私たちは馬車から降りた。そして、アインスは
「そこの者!! そこのお方は間違いなくゴーティエ家の方々だ。エンツェンスベルガー家より参った使いである私が保証しよう!」
と周りに聞こえるような声で叫んだ。すると関門の兵士は私たちの乗ってきた馬車の家紋を見たのか私たちに礼をとった。そして
「はっ!! 大変失礼いたしました。お通りください」
兵士はそう言ってゴーティエ家を通したのだ。ゴーティエ公は関門を通り私たちの元に近づき
「うむ。迎えご苦労」
と偉そうに言った。私たちはそれに応えて礼をとった。
「お迎えが遅れてしまい申し訳ありませんでした。ここから先はエンツェンスベルガー家がお守りいたします」
私はそのように彼らに言った。すると、アレクサンドラと思われる女性が
「本当に遅すぎるわ!! 女神のように美しい私をこんなに泥だらけにさせて!!」
と言い散らかした。噂通り傲慢な人のようだ。見た目も洗って化粧をすればかなりの美人になるだろうことからこちらも噂通りみたいだ。これなら、バルトロメウスも気にいるだろうと私は思い、心の中で笑みを浮かべた。
「大変申し訳ありませんでした。皆様のような高貴な方々をお迎えする準備に時間がかかってしまったのです。最高のおもてなしをご用意させておりますのでどうか平にご容赦を」
私はそう答えた。
「そうか、まぁ許そう。並大抵であったなら許さぬぞ」
ゴーティエ公はそう言ってゴーティエ公とアレクサンドラは馬車に乗った。馬車はゆっくりと最寄りの町の宿に向け進み出した。
「では、これからの予定を話させていただきます。まず、本日は最寄りの町の宿にお泊まりいただき心身とも休めていただきたいと思います。そして、次の日にエンツェンスベルガー城に向かいエンツェンスベルガー卿に会っていただくいう形となりますが、よろしいでしょうか?」
アインスはスラスラと今後の彼らの予定を話した。ゴーティエ公は
「よかろう。それでいい」
とまた偉そうに返した。終始偉そうな態度をとる人物だ。その後ゴーティエ公は、
「それで、エンツェンスベルガーはどのような感じだ?」
曖昧に私たちに聞いてきた。私がニコニコと答えて
「はい、今代のエンツェンスベルガー侯爵様は名君と呼び名が高く、エンツェンスベルガー領は隆盛を極めていると言ってもいい状況です」
「そうか。それは素晴らしいことだ。確かエンツェンスベルガー卿にはアレクサンドラと年頃の近い子息がいたな?」
ゴーティエ公は、私にそう聞いてきた。私は懸かったとばかりにゴーティエ公に捲し立てるように言った。
「えぇ、それはバルトロメウス様のことでございましょう。バルトロメウス様は容姿端麗であり、とても勇しくカリスマ性があるお方です。人民からの人気がある方でもございます。しかし、そんな素晴らしいお方であるバルトロメウス様には国から押しつけられた婚約者がおりまして、その方は格下の伯爵家のご令嬢でございます。その方は傲慢で血が通うっていないようなほど冷血な方のです。とても嘆かわしことでございます。もしバルトロメウス様にアレクサンドラ様のような美しい方だったらと悔やむばかりでございます」
私は本当に残念そうに顔を下に向けてそう言った。
(カミラ、ごめん!!)
あと私は根も葉もないことを言ってしまったことを心の中で謝っておいた。こんな奴より何千倍何万倍も素晴らしい友人の悪口を言うのは少し罪悪感が湧いたが、これは必要なことと自分に言い聞かせた。
ゴーティエ公は私の返答に満足したのか
「そうか、そうか」
にやけた顔をして言った。アレクサンドラも悪い笑みをして
「まぁ、バルトロメウス様なんてお可愛そうなことなの」
と白々しく言っている。私とアインスはそんな醜いケモノたちをみて仕込みが上手くいっているとほくそ笑んだ。そうして、馬車は町の宿へと向かうのだった。
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