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七話 必然から偶然をつくるために
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カミラがエンツェンスベルガー城にて、婚約破棄される数日前。
アデリナはお父様の部下であるアインスを連れ、公国とエンツェンスベルガー領の国境に来ていた。真夏日のような暑い中、私たちは鬱蒼とした森の中を歩いていた。
「お嬢がわざわざこんなところに来なくても、他の者に任せるばいいじゃないですか」
アインスは汗を拭う動作をしながら気怠げにそう言った。
「それじゃあ、ダメよ。今回の件は私の大切なカミラの人生がかかっているのよ。だから、抜かりがないように私がやらなくちゃ」
「いや、そうは言ってもお嬢に何か有ったらどうするんですか?」
「私にそんな心配はいらないわ。それに何か有ってもアインスが優秀だから大丈夫よ」
私は自信満々に言った。私は幼少期より続けている武術と魔法に自信が有った。魔法はそこまでだが、武術に至っては我が国でも精強さを誇る帝都騎士にも負けない自信があった。
アインスはため息を吐いた。
「そりゃあ、お嬢に勝てる奴が少ないのは分かりますが態々危険に飛び込む必要はないでしょ。それにお褒め頂き光栄ですが、小心者の俺にそんなに期待をかけんでください。」
そして、アインスはあーだこーだ言い始めた。私は段々相手をするのが面倒臭くなり話しを逸らした。
「ほら、もう目的地に着くわよ。今更引き返せないわ。諦めなさい」
そう言って私は前方に指を差した。次第に木々が減り、視界も明るくなってきた。そして、前にはエンツェンスベルガー家の家紋がついた馬車が見えてきた。すると馬車の御者が私たちの方を見て礼をした。
「アデリナお嬢様、お待ちしておりました。私はエンデルス家の御者を務めておりますカールと申します」
その御者はそう言った。どういうことかというと、この馬車はエンデルス家が今回のお向かいのために用意したもので、私はこの馬車に乗りエンツェンスベルガー家のメイドでアインスが執事としてこれから来るゴーティエ家一家をお迎えしにいくのだ。そして、私がゴーティエ家をうまみがあるように見えるよう手を加えるのだ。さらにアレクサンドラをバルトロメウス好みの見た目にして彼が恋に落ちるように仕向けるのだ。そして、エンツェンスベルガー家がゴーティエ家との縁を求めたがるようにする。
さらに、カミラはエンツェンスベルガー家があたかも隆盛を極めているかのように演出し、ゴーティエ家が縁を結びたがるように見せかけるのだ。それで、両家に縁を結ばさせるというのが私の作戦だ。そして、誰もが損をしない素晴らしい婚約破棄が起きるという寸法だ。
「さぁ、アデリナお嬢様。こちらにお着替えくださいませ。もうそろそろ御一行がいらっしゃるとのことですので、急ぎくださいませ」
「わかったわ」
私は馬車の中に入りメイド服に着替えた。それに加えて私は幻視魔法で記憶に残らないような地味顔に見えるようにした。そして私が着替え終わると、エインスが馬車に入ってきて馬車は動きだした。
馬車は国境にある関門を目指して進んで行くのであった。
アデリナはお父様の部下であるアインスを連れ、公国とエンツェンスベルガー領の国境に来ていた。真夏日のような暑い中、私たちは鬱蒼とした森の中を歩いていた。
「お嬢がわざわざこんなところに来なくても、他の者に任せるばいいじゃないですか」
アインスは汗を拭う動作をしながら気怠げにそう言った。
「それじゃあ、ダメよ。今回の件は私の大切なカミラの人生がかかっているのよ。だから、抜かりがないように私がやらなくちゃ」
「いや、そうは言ってもお嬢に何か有ったらどうするんですか?」
「私にそんな心配はいらないわ。それに何か有ってもアインスが優秀だから大丈夫よ」
私は自信満々に言った。私は幼少期より続けている武術と魔法に自信が有った。魔法はそこまでだが、武術に至っては我が国でも精強さを誇る帝都騎士にも負けない自信があった。
アインスはため息を吐いた。
「そりゃあ、お嬢に勝てる奴が少ないのは分かりますが態々危険に飛び込む必要はないでしょ。それにお褒め頂き光栄ですが、小心者の俺にそんなに期待をかけんでください。」
そして、アインスはあーだこーだ言い始めた。私は段々相手をするのが面倒臭くなり話しを逸らした。
「ほら、もう目的地に着くわよ。今更引き返せないわ。諦めなさい」
そう言って私は前方に指を差した。次第に木々が減り、視界も明るくなってきた。そして、前にはエンツェンスベルガー家の家紋がついた馬車が見えてきた。すると馬車の御者が私たちの方を見て礼をした。
「アデリナお嬢様、お待ちしておりました。私はエンデルス家の御者を務めておりますカールと申します」
その御者はそう言った。どういうことかというと、この馬車はエンデルス家が今回のお向かいのために用意したもので、私はこの馬車に乗りエンツェンスベルガー家のメイドでアインスが執事としてこれから来るゴーティエ家一家をお迎えしにいくのだ。そして、私がゴーティエ家をうまみがあるように見えるよう手を加えるのだ。さらにアレクサンドラをバルトロメウス好みの見た目にして彼が恋に落ちるように仕向けるのだ。そして、エンツェンスベルガー家がゴーティエ家との縁を求めたがるようにする。
さらに、カミラはエンツェンスベルガー家があたかも隆盛を極めているかのように演出し、ゴーティエ家が縁を結びたがるように見せかけるのだ。それで、両家に縁を結ばさせるというのが私の作戦だ。そして、誰もが損をしない素晴らしい婚約破棄が起きるという寸法だ。
「さぁ、アデリナお嬢様。こちらにお着替えくださいませ。もうそろそろ御一行がいらっしゃるとのことですので、急ぎくださいませ」
「わかったわ」
私は馬車の中に入りメイド服に着替えた。それに加えて私は幻視魔法で記憶に残らないような地味顔に見えるようにした。そして私が着替え終わると、エインスが馬車に入ってきて馬車は動きだした。
馬車は国境にある関門を目指して進んで行くのであった。
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