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四話 昼下がりのお茶会②

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 現在、世界的に民主主義化が進んでいおり我が帝国でもその煽りを受けていた。民主主義が帝国国内で大きな流れとなっていたのだ。そこで現皇帝陛下は、貴族をまとめ上げ一致団結してこの流れに逆らおうと考えた。それが私たちのような成功した貴族家とベルツ家のような没落しかけの貴族の婚姻政策であった。こうすることにより、貴族家が没落して貴族が減るのを阻止しようとしたのだ。しかし、当然ながらこの政策は成功している貴族家からの反発が酷かった。そこで陛下は色々な妥協案を提示し、この政策を行ったのだ。しかし陛下は見落としていたのだ、没落している連中には没落しているそれなりの理由があることを。
 
 そう、没落している貴族家どもはあまりにも時代錯誤な連中だったのだ。ベルツ家のように愛人を持つことが当然と考えていたり、自分より身分の低いものに傲慢に態度をとることが当然だと思っていたのだ。これは成功をしている貴族家とは真逆の思想であり、お互いに相容れるはずも無く婚約破棄が帝国国内で一種のブームになりつつあった。そして、その政策の始まりが私たちの世代だったのだ。

「それで、カミラの方はどうなの?」

 カミラは諦めたような表情をして言った。

「私は、出来そうにないわ」

「そうよね。カミラのほうは格上の方がお相手だものね」

 私はカミラをどうにかしてあげれないか考えた。
 カミラの婚約者はエンツェンスベルガー侯爵家子息であるバルトロメウス様なのだ。基本的に私たち貴族社会では上下関係が絶対であり、たとえ陛下の政策で婚約したからといって気軽に下位者から上位者に婚約の解消を打診するのは許されないことであった。唯一の例外がスキャンダルである。もちろん、私のときのように愛人がいた程度ではなく陛下が動き出すほど大きなスキャンダルが必要なのである。

 カミラは、もうどうしようにもならないと絶望した表情であった。

「カミラ! まだ諦めるのは気が早いわ。最後まで足掻きなさい。このままではあなたが不幸になってしまうわ! もちろん、私も手伝うわ」

「……だけど、どうするというの? バルトロメウス様は素行が悪いけど、それだけでは婚約を破棄することはできないわ。私のお父様もかなりエンツェンスベルガー家について調べたけど……」

 カミラと途中まで言って頭を横に振った。どちらの方の調査も芳しくないようだ。
 私はエンツェンスベルガー家について考えを巡らせた。それで思いついたのが公国との関係ついてのことだった。

「確か、エンツェンスベルガー家の領地は公国と国境が隣り合っていたわね。公国は最近民主化されて混乱が起きているわ。エンツェンスベルガー家がこれに絡んでいないかまず調べましょう」

「そうね、確かにそちらの方についてはお父様も私も調べていなかったわ」

 カミラたちはどうやらまだそちらについては後回しにしていたようだ。

「そうと決まれば、私はお父様のツテを使って公国については調べましょう。あなたはエンツェンスベルガー家と公国の関係を調べて」

 私はそう言うと、カミラが私に抱きついてきた。
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