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土の中の恋文
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土中から現れた棺の蓋を作業員は注意深く開けた。宅地開発のために無縁墓の改葬をしている彼は被葬者に敬意を払いながら作業を行っている。
「これは何でしょうか?」
遺体の胸に置かれた物を指しながら彼は側にいる研究員に尋ねた。
「紙包みのようだ、取り敢えず開いてみよう」
丁寧に包を開くと草鞋と手紙が現れた。
手紙は被葬者の妻のもので、自分を残して冥界に行ってしまった夫に対する思いが切々と綴られていた。病に伏した配偶者が快復し歩けるようになることを祈って自身の髪で草鞋を作ったそうだ。
研究員が解読してくれた手紙の内容を聞いて作業員の胸は熱くなった。この人物は数百年前に埋葬されたそうだ。今も昔も人の思いは同じなのだと
「これは何でしょうか?」
遺体の胸に置かれた物を指しながら彼は側にいる研究員に尋ねた。
「紙包みのようだ、取り敢えず開いてみよう」
丁寧に包を開くと草鞋と手紙が現れた。
手紙は被葬者の妻のもので、自分を残して冥界に行ってしまった夫に対する思いが切々と綴られていた。病に伏した配偶者が快復し歩けるようになることを祈って自身の髪で草鞋を作ったそうだ。
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