その都市伝説を殺せ

瀬尾修二

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二章

十一話

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 渡瀬家の人間は、先祖代々街の北部に住み続けてきた。この家筋には、若くして命を落したり、消息を絶つ人間が多い。早紀の母親も、十年近く前に忽然と姿を消したまま、行方が杳として知れなかった。
 早紀の母方の祖父母は変死したと、和義も聞いている。
 人々は、死や失踪の理由に疑問を持ち続けた。そのため、「渡瀬の人間は呪われていて、その多くが行方不明になるか、不審死を遂げている」という噂も残り続けたのだ。
 不幸の一方で、この家筋の人間は経済的に不自由をしない。その幸と不幸の組み合わせが、近隣住民には理解出来ず、不審や妬みの感情がどんどん募っていった。
 渡瀬家は気味悪がられ孤立していき、いつしか「渡瀬に憑いている化け物によって、親しくした者も呪われる」という噂が、一部で囁かれるようになった。
 「二十一世紀にもなって、呪いはないだろう」と、和義は考えていた。ところが、呪術の類を大真面目に信じる人間は、思いの外多いのだと気づかされる。言葉を変え、形を変えても、根本的な性質は変えずに、呪いは彼らの住む街に厳然と残っていた。
 早紀は今、父親と二人暮らしをしている。だが、父は子に関心を示さず、親子関係はうまくいっていない。
 彼女は、幼い頃から霊が見える等と周囲に話していて、母親が消息を絶った後は、超自然の世界に一層心を奪われていく。最近は大分落ち着いてきたが、数年前までは精神的に不安定だった。
 今では、霊がどうのこうのと主張しなくなった。だが、彼女の家は人形で溢れ返り異様な状態になっていると、和義は母親伝てに聞いていた。 
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