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ようこそ、むし屋へ

押し問答

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「あたし、一生懸命働きます」
「オレが欲しいのは有能なアルバイト。お前には務まらない」

「有能か無能かは、働いてみないとわからないと思います」
「ほたるちゃんの言うとおり」とアキアカネが援護してくれる。

「いいや、無能に決まってる。ナミハンミョウすら覚えられないんだからな」
「昆虫の知識って、むし屋の仕事と関係があるんですか?」

「大アリだ。が、何より、オレは昆虫に無知な奴を生理的に受けつけない」
「大人気ないよ、向井君」
 アキアカネがぽんと向尸井の肩に手を乗せる。

「む・し・か・いだ! 苗字を間違えるなら手塚にしろ! オサムシを愛した手塚大先生に間違われるならいざ知らず、誰だ、向井ってのは」
「え、知らないんですか? うちのお母さんすっごいファンなんです」

「知るか! とにかく」
 向尸井がこほん、と咳払いをして営業スマイルを繰り出した。

「お帰りください」
 ダメか。とほたるはため息を吐いた。

「いいのかなぁ」と、アキアカネが意味ありげに笑う。
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