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ほたるの記憶 ~中学生編~

篤の母の心配事

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 この前、家に帰ったら、篤の母がほたるの家でお茶していた。

「ほたるちゃん、ちょっと見ないうちにまた可愛くなって。おばさん見違えちゃった」
 おばさんと言うにはおこがましい美人な篤の母に言われ、ほたるは嬉しくなった。

「とんでもない。この子ったら、反抗期真っ盛りで憎たらしいのなんの。成績もダダ下がり。篤君の爪の垢でも飲ませてやりたいわ」
「お母さん、余計なこと言わないでよ」

 いー、と、変顔攻撃していたら「その篤なんだけどね」と、篤の母が眉を寄せたのだ。

「近頃、ちょっとおかしいの」
「あら、おかしいって?」と、目を輝かせるほたるの母。ホント恥ずかしい。

「もう、お母さん!」と怒ると「だって気になるじゃない」と舌を出す。
「ほたるちゃんも聞いてくれる?」
「え。あ、はい」

 左右対称に口角が上がる篤のお母さんの口元は、篤とそっくりだ。

「篤ね、どうやら部活に行っていないみたいなの。でも、夏休み中も部活に行くって、毎日朝から夕方まで出かけてたのよね」
「あらー、それはきっと反抗期ね」

 力強く頷くほたるの母に(この人単細胞すぎる)と、ほたるはため息が出た。
 何故、篤のお母さんはウチのお母さんなんかと仲良くしてくれるのか。
 名探偵もびっくりの謎だ。

 篤の母は「反抗期ならいいんだけど」と続けた。

「あの子、死んだおじいちゃんに似ているところがあるの。私の父なんだけど、とにかく破天荒な人だったの。思いたったらすぐ行動する性格で、亡くなる直前も、田んぼを売ったお金で宝石を採掘しに行くって騒いでいたわ。病気にならなければ、たぶん行っていたと思う。最近のあの子を見ていると、おじいちゃんみたいに突拍子もないことをしでかすんじゃないかって不安になるの。ほたるちゃん、篤のこと時々気にしてくれないかな。こんなこと頼めるのは、ほたるちゃんだけだから」

 こんなこと頼めるのは、ほたるちゃんだけだから。

 篤の母の優しい声が甘く響いて「任せて」とほたるはどんと胸を叩いたのだった。

(そう。あたしは、篤のお母さん公認なんだから)

 紗良とは次元が違う。と、心に潜む意地悪なリトルほたるが言う。
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