YUZU

箕面四季

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【スピンオフ 秋山柚葉、家出する】

【漂う夢の中で ず~っと前からの約束】

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 ガタタン。
 身体が揺れて、動物園のレストランのテーブルに座っていた。

 向かいに座るお兄ちゃんが心配そうにこっちを見ている。
『子供が寒い時期にソフトクリーム食って、腹壊さないよな……』
『なんで? レストランの中あったかいよ』

『そうだけど』
『あ、あそこでカピバラがお風呂入ってる!』
 ガラス窓の奥を指さそうとしたら『あぶねっ』と、慌ててお兄ちゃんが手首を掴む。そうだった。あたしソフトクリーム持ってたんだ。

『ソフトクリーム見ながら動物見るの難しいね。結ちゃんがレストラン楽しいけど大変って言ってたのはこれかー』
 くくっ、とお兄ちゃんが笑う。

『柚葉が楽しそうでよかったよ』
 お兄ちゃんが笑うとあたしもすっごく楽しい!

 あのね、あのね。えっとね、お兄ちゃん。
 あのね、日曜日がとってもとっても長かったんだよ。幼稚園のお迎えの時、お母さんに『明日は日曜日?』って、毎日聞いたんだよ。だけど、いつ聞いても『まだよ』って言われちゃうの。日曜日が全然来ないの。本当に楽しみだったの。

 お兄ちゃんにいっぱい言いたいことがあるけど、ソフトクリームもある。真っ白いソフトクリームを舐めながら、あたしはお兄ちゃんに力を込めて言った。

『だって動物園、ず~~~~~~~~~~~っと前から約束してたもんね。やっと来れたね!』

 そしたら、お兄ちゃんがびっくりした顔になった。どうしたのかな。

(あ、そうだった!)
 慌ててソフトクリームを持っていない方の指で『しぃー』とする。レストランでは静かにしなきゃ。

『あ、ああ。そうだぞ、しぃーだぞ』
 あたしの頭を撫でながら、お兄ちゃんが眩しそうに目を細める。たまーに、お兄ちゃんはこういう顔をする。最初にびっくりして、そのあとに眩しくなるのよね。

 なんでかはわかんないけど、そういう時、お兄ちゃんはあたしの目をじぃっと見てくる。きっとお兄ちゃんは、あたしのことが大好きだからだな、って思うんだ。
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