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空蝉の声
ファミレス
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いつもモルモットの飼育方法を教えてくれるお礼という名目で、僕は染谷さんをちょくちょく食事に誘った。
「いいのに」と言いながらもちゃんとおごられてくれる染谷さん。
ただし、染谷さんがおごられてくれるレストランは、いつも同じペットオッケーのオールドスタイルのファミレスだった。
冊子になったメニューから料理を選び、いかにもアナログな注文ボタンを押して、やってきた店員にメニューを注文するという、ファミレスなのに注文がややこしいファミレス。
最近、古い時代に作られた恋愛ドラマが若者たちに流行していて、そのドラマに出てくるようなオールドスタイルのカフェも人気になっている。レトロコンセプトカフェとかいうらしい。
高杉君が言っていた。
このファミレスもその類だった。
僕らが生まれる少し前、超超高齢化社会となった日本では、デジタル化が進む家電やインフラなどの社会の仕組みに高齢者がついていけず、日常生活に支障をきたしていることが社会問題となった。
選挙権を持つ日本人の中で唯一の投票者層である高齢者たちを味方につけたい日本の高齢政治家たちは、『高齢化社会適合型デジタル社会実現法』を制定。
日本ではこの法律制定以降、アメリカや中国など急速に革新的なデジタル化が進むデジタル社会先進国から外れ、これまでにあった家電やスマートフォンなどを少しずつグレードアップするような、緩やかなデジタル化が続いている。
日本の政治家が目指しているのは、発売当初の薄型テレビが長い年月をかけてどんどん薄くなっていったような、老若男女がすんなり受け入れられるデジタル化らしい。
つまり、現在の日本社会は僕らの両親が若かった頃とそう変わっていないのだ。
とはいえ、確実に日本社会でも緩やかながらデジタル化は進んでいる。
やはり数十年前を模したファミレスは、今とは比べ物にならないくらいに不便だと感じる。
ともかく、正直、染谷さんがこういうところに興味があるとは意外だった。
確かに面白いけれど、ここの料理は味が単純で、どれも似通っていて、何度か食べていると飽きてくる。
しかし染谷さんは「あのファミレスの味付けが好きなんだよね。黒モルちゃんも一緒に入れるし」と、ここ以外のお店は行こうとしなかった。
意外と頑固な一面がある。
外食が苦手なのか、ファミレスでの染谷さんはいつもソワソワと落ち着きがない。
箸の持ち方が間違っている。
そういうところも全て好きだと感じる。
恋愛は欠点すら愛おしさに変える。
恐るべし恋愛バイアス。
恋は盲目とはよく言ったものだ。
「いいのに」と言いながらもちゃんとおごられてくれる染谷さん。
ただし、染谷さんがおごられてくれるレストランは、いつも同じペットオッケーのオールドスタイルのファミレスだった。
冊子になったメニューから料理を選び、いかにもアナログな注文ボタンを押して、やってきた店員にメニューを注文するという、ファミレスなのに注文がややこしいファミレス。
最近、古い時代に作られた恋愛ドラマが若者たちに流行していて、そのドラマに出てくるようなオールドスタイルのカフェも人気になっている。レトロコンセプトカフェとかいうらしい。
高杉君が言っていた。
このファミレスもその類だった。
僕らが生まれる少し前、超超高齢化社会となった日本では、デジタル化が進む家電やインフラなどの社会の仕組みに高齢者がついていけず、日常生活に支障をきたしていることが社会問題となった。
選挙権を持つ日本人の中で唯一の投票者層である高齢者たちを味方につけたい日本の高齢政治家たちは、『高齢化社会適合型デジタル社会実現法』を制定。
日本ではこの法律制定以降、アメリカや中国など急速に革新的なデジタル化が進むデジタル社会先進国から外れ、これまでにあった家電やスマートフォンなどを少しずつグレードアップするような、緩やかなデジタル化が続いている。
日本の政治家が目指しているのは、発売当初の薄型テレビが長い年月をかけてどんどん薄くなっていったような、老若男女がすんなり受け入れられるデジタル化らしい。
つまり、現在の日本社会は僕らの両親が若かった頃とそう変わっていないのだ。
とはいえ、確実に日本社会でも緩やかながらデジタル化は進んでいる。
やはり数十年前を模したファミレスは、今とは比べ物にならないくらいに不便だと感じる。
ともかく、正直、染谷さんがこういうところに興味があるとは意外だった。
確かに面白いけれど、ここの料理は味が単純で、どれも似通っていて、何度か食べていると飽きてくる。
しかし染谷さんは「あのファミレスの味付けが好きなんだよね。黒モルちゃんも一緒に入れるし」と、ここ以外のお店は行こうとしなかった。
意外と頑固な一面がある。
外食が苦手なのか、ファミレスでの染谷さんはいつもソワソワと落ち着きがない。
箸の持ち方が間違っている。
そういうところも全て好きだと感じる。
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