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空蝉の声
ペットコーナーの黒モルモット
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立体駐車場へとつづくらせん状の道路を徐行運転で登る。
ホームセンターのペットコーナーに足を踏み入れた瞬間、目が痛くなるほどカラフルな手書きのポップが目に飛び込んできた。A3サイズの画用紙に書かれている。
「また大きくなってるな……」
先週はA4サイズだった。
『賢く人なつっこい子です』『家族募集中!』『癒されます』などの文章で、ごちゃごちゃ埋め尽くされている。
これではケージの中の小動物が見えづらくなって逆効果な気がする。
ひょいと横から覗き込んでみると、真っ黒い短毛のモルモットがすました顔で給水器の水をカチャカチャ器用に飲んでいた。
「おい、売れないモルモットのポップ書く暇があったら、エサ用コオロギの羽むしってろ!」
そしてまた今日も、彼女はペットコーナーの責任者と思しき小太り上司に怒られていた。
僕は黒いモルモットを見やった。
確かに賢そうな目をしている。
売れ残っているようだし飼ってあげたいのは山々だが、自分に小動物の世話ができるとはどうしても思えない。
昆虫はエサさえ入れておけば活動期であっても一日、二日、場合によっては一週間放置しても生きられるが動物はそうはいかないだろう。
その上小動物は愛情不足でぽてりと死ぬと聞く。
そんな恐ろしい生物を僕が飼えるわけがない。
結局、いつものようにペットコーナーの店員が話しかけてこないぎりぎりの時間だけモルモットを観察し、そのまま昆虫コーナーに向かった。
ホームセンターのペットコーナーに足を踏み入れた瞬間、目が痛くなるほどカラフルな手書きのポップが目に飛び込んできた。A3サイズの画用紙に書かれている。
「また大きくなってるな……」
先週はA4サイズだった。
『賢く人なつっこい子です』『家族募集中!』『癒されます』などの文章で、ごちゃごちゃ埋め尽くされている。
これではケージの中の小動物が見えづらくなって逆効果な気がする。
ひょいと横から覗き込んでみると、真っ黒い短毛のモルモットがすました顔で給水器の水をカチャカチャ器用に飲んでいた。
「おい、売れないモルモットのポップ書く暇があったら、エサ用コオロギの羽むしってろ!」
そしてまた今日も、彼女はペットコーナーの責任者と思しき小太り上司に怒られていた。
僕は黒いモルモットを見やった。
確かに賢そうな目をしている。
売れ残っているようだし飼ってあげたいのは山々だが、自分に小動物の世話ができるとはどうしても思えない。
昆虫はエサさえ入れておけば活動期であっても一日、二日、場合によっては一週間放置しても生きられるが動物はそうはいかないだろう。
その上小動物は愛情不足でぽてりと死ぬと聞く。
そんな恐ろしい生物を僕が飼えるわけがない。
結局、いつものようにペットコーナーの店員が話しかけてこないぎりぎりの時間だけモルモットを観察し、そのまま昆虫コーナーに向かった。
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