上 下
12 / 35

12 振られた

しおりを挟む


 この世の中には妻に無関心なあんぽんたんもいれば、ナサリアの王太子みたく溢れる愛情を妻や子どもに注ぐ素敵な夫もいて。

 結婚なんて二度と御免だけど、もしも次に結婚することがあるならそんな風に愛されてみたい。

 ……そう、しんみりしていると。

 雨の日も風の日も毎日毎日呼んでもないのに勝手に王宮にやってきて、自分が言いたい事だけを嫌味ったらしくネチネチ言うだけ言って帰るを繰り返す。

 宰相性悪がそこにはいた。

「ユーフェミア様っ!?」

 こんな所で私の名前を大声で呼ぶな。

 私、実はこの国の王妃やってたから有名人!

 それに今日もお前の事は呼んでない。

「……げっ、性悪! 出やがったな!?」

 こんな所をほっつき歩いてないで城に帰って仕事しろ、どれだけ私に構ってくるの?

 コイツよく飽きないな?

 そんなに私を幽閉したいのか?

「ユーフェミア様お探ししました。ご無事で何よりでございます……さあ私と一緒に帰りましょう?」

 国王あんぽんたんと違って宰相性悪は、私に関心を持ちすぎな件。

 私に嫌がらせするの趣味か何かなのかな?

「え、絶対にいや! 誰が性悪となんて一緒に帰るか! どうせ私の事をどっかの屋敷に幽閉し、そして死ぬまで監視して自由を奪うつもりでしょ! お前の魂胆はわかっている!」

 私は腕を組み、胸を張り、性悪と対峙する。

 ここで弱みを見せてはいけない。

 毅然とした態度で立ち向かう。

「そ、そんな事は絶対に致しません!」

 嘘をつくな、お前なら絶対にする。

 私にはわかっている。

 なんだかんだと長い付き合いだ。

「じゃあ性悪は私を連れ帰ってどうするって言うの!? 答えられるものならば答えてみなさい! さぁ早く!」

「ユーフェミア様には私と、結婚して頂こうかと思っていましたが……」

「結婚……? え、誰と?」

「……私と」

「……は?」

 強制的に月に一度行われる房事で会話すらなく。

 ただ無意味に流れていく時間に、女としての魅力が無いのかと自信を失っていたけれど。

 もしかして私ってば、知らず知らずの内に宰相性悪を魅了してしまっていたのか……!

 この溢れ出す人妻の色気で!

 えー、どうしよっかなぁ?

 急に求婚とか困っちゃうんだけど?

「あ、でも、やっぱり私と結婚しなくていいです」

「え、どうして!?」

 やっぱりってなに!

 いいですって……え?

「……無理なので。ユーフェミア様、ごめんなさい」

「え、む……無理!?」

 いったい私の何が無理たど言うのだお前は。

 それに初めて性悪に謝られたよ?

 天変地異の前触れかな。

「もうユーフェミア様には一切関わりません。でも私は……貴女の幸せを願っています」

 そして。
 
 なんか知らないが私、性悪にフラれたっぽい。

 私が告白したわけじゃないのにっ……!
 
しおりを挟む
感想 197

あなたにおすすめの小説

お認めください、あなたは彼に選ばれなかったのです

めぐめぐ
恋愛
騎士である夫アルバートは、幼馴染みであり上官であるレナータにいつも呼び出され、妻であるナディアはあまり夫婦の時間がとれていなかった。 さらにレナータは、王命で結婚したナディアとアルバートを可哀想だと言い、自分と夫がどれだけ一緒にいたか、ナディアの知らない小さい頃の彼を知っているかなどを自慢げに話してくる。 しかしナディアは全く気にしていなかった。 何故なら、どれだけアルバートがレナータに呼び出されても、必ず彼はナディアの元に戻ってくるのだから―― 偽物サバサバ女が、ちょっと天然な本物のサバサバ女にやられる話。 ※頭からっぽで ※思いつきで書き始めたので、つたない設定等はご容赦ください。 ※夫婦仲は良いです ※私がイメージするサバ女子です(笑)

婚約破棄の夜の余韻~婚約者を奪った妹の高笑いを聞いて姉は旅に出る~

岡暁舟
恋愛
第一王子アンカロンは婚約者である公爵令嬢アンナの妹アリシアを陰で溺愛していた。そして、そのことに気が付いたアンナは二人の関係を糾弾した。 「ばれてしまっては仕方がないですわね?????」 開き直るアリシアの姿を見て、アンナはこれ以上、自分には何もできないことを悟った。そして……何か目的を見つけたアンナはそのまま旅に出るのだった……。

この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ

めぐめぐ
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。 アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。 『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。魔法しか取り柄のないお前と』 そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。 傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。 アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。 捨てられた主人公が、パーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー短編。 ※思いつきなので色々とガバガバです。ご容赦ください。 ※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。 ※単純な話なので安心して読めると思います。

死に戻り王妃はふたりの婚約者に愛される。

豆狸
恋愛
形だけの王妃だった私が死に戻ったのは魔術学院の一学年だったころ。 なんのために戻ったの? あの未来はどうやったら変わっていくの? どうして王太子殿下の婚約者だった私が、大公殿下の婚約者に変わったの? なろう様でも公開中です。 ・1/21タイトル変更しました。旧『死に戻り王妃とふたりの婚約者』

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

聖女である私が祈る事をやめた時、どうなるかわからないのですか?

十条沙良
恋愛
婚約者に裏切られるなんて思ってもいなかった。

愛しているのは王女でなくて幼馴染

岡暁舟
恋愛
下級貴族出身のロビンソンは国境の治安維持・警備を仕事としていた。そんなロビンソンの幼馴染であるメリーはロビンソンに淡い恋心を抱いていた。ある日、視察に訪れていた王女アンナが盗賊に襲われる事件が発生、駆け付けたロビンソンによって事件はすぐに解決した。アンナは命を救ってくれたロビンソンを婚約者と宣言して…メリーは突如として行方不明になってしまい…。

王太子殿下の小夜曲

緑谷めい
恋愛
 私は侯爵家令嬢フローラ・クライン。私が初めてバルド王太子殿下とお会いしたのは、殿下も私も共に10歳だった春のこと。私は知らないうちに王太子殿下の婚約者候補になっていた。けれど婚約者候補は私を含めて4人。その中には私の憧れの公爵家令嬢マーガレット様もいらっしゃった。これはもう出来レースだわ。王太子殿下の婚約者は完璧令嬢マーガレット様で決まりでしょ! 自分はただの数合わせだと確信した私は、とてもお気楽にバルド王太子殿下との顔合わせに招かれた王宮へ向かったのだが、そこで待ち受けていたのは……!? フローラの明日はどっちだ!?

処理中です...