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25 祝福
しおりを挟むこれは『契約結婚』で、そこに愛はない。
貴方は私に。
『君と夫婦をするつもりはない。これは契約結婚で、愛を求められても困る』
そう、おっしゃったのに。
「アレクセイ様……?」
「ブランシェ……」
どうして私にあんな優しいキスをされたのか、私はアレクセイ様に問い詰めてしまう。
今は大事な結婚式の真っ最中で、こんな態度を人前で取ってはいけないと頭ではわかってはいました。
ですが、どうしても気持ちを抑えられなかった。
その時。
「アレクセイ! ブランシェ! おめでとう!」
国王陛下がアレクセイ様に駆け寄って、それはそれは勢いよく抱き付かれた。
その勢いで転んでしまいそうなほど。
「ちょっ、兄さん……!? 危ないじゃないですか!」
「アレクセイ! 余は嬉しいぞ! やっとお前にも生涯の伴侶が出来たっ……これでやっと安心できる」
「……何も泣かなくても。というかまだ式の途中ですよ? さっさと自分の席に戻って下さい」
アレクセイ様に抱き付いた国王陛下は、感極まったようにポロポロと大粒の涙を溢す。
陛下はアレクセイ様が結婚したのが、よっぽど嬉しいご様子です。
「ブランシェありがとう! こんな愚弟を貰ってくれて。余はずっと心配だったんだ、コヤツは仕事にしか興味がなくてな……」
そんな国王陛下は、アレクセイ様に抱き付いたまま次は私へ感謝の言葉を述べられた。
「あ、いえ……もったいないお言葉でございます、それにこちらこそアレクセイ様に結婚して頂いて、とても感謝しております」
「そうかそうか! 今日からブランシェは余の可愛い義妹、家族になる。だからなにか困った事があれば直ぐに言いなさい。出来る限り尽力させてもらうよ」
国王陛下はブランシェを家族だと認める発言を目立つように、公の場でわざわざ行った。
その言葉は列席していた貴族達に対する警告、ブランシェに手を出す事は王家に手を出すということ。
もう貴族達はブランシェに逆らえないし、この間のように平民だと揶揄すればどうなるかわからない。
だから式に列席していた貴族達は、盛大な拍手をして二人の門出を祝ったのだった。
そうしてアレクセイ様と私は。
沢山の人達に盛大に祝福されて、結婚式を無事に終える事が出来ました。
まぁ多少のハプニングも途中ありましたが、概ね大成功といえる結果でしょう。
後日、私達二人の結婚を祝う夜会が王宮で開かれるらしいです。
それにその場では私が侯爵位を得た事も、一緒に祝わって頂けるらしくて。
私が陞爵なんて未だに夢みたいで。
あの日魔塔に連れて行かれた時は、こんなことになるだなんて。
思ってもみませんでした。
……そして唇に残る感覚。
どうしてあんなことをされたのか、私はアレクセイ様に聞けず仕舞い。
帰りの馬車の中でも、もう一度どうして私にキスをされたのか聞こうとは思いましたが。
私はアレクセイ様の答えが怖くて聞けなかった。
だってその答えが。
ただの仲良しアピールの為だったなら、きっと悲しくなってしまうだろうから。
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