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12 エピローグ

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 王都の夜空に煌めく星達に見守られながら。

 久し振りにやってきた王都の街の屋台で、ユーフェミアはぐいっとエールを飲み干して。

 幸せそうに微笑んだ。

 積年に亘る恨みは今日やっと晴らされた。

 皆で話し合って最終的にフェリクスが決めた罰がちょっと手緩過ぎるなとは思うけど、政治的にそれが最善策だとユーフェミアもわかっているので。

 なにも文句は言わなかった。

 それに長年自分達を苦しめてきた父親シュバリエのあの落ち込んだ顔が見られただけで、ユーフェミアはとても気分が良くてご機嫌である。

 そんな楽しそうなユーフェミアをアレクサンドは、よくコレと自分は犬猿の仲と社交界で噂されるほど仲違いしていて無事だったなと思った。

 もし本気でユーフェミアに嫌われて憎まれてしまっていたら、今回のように見事に計略を計られて自分も陥れられていたかもしれない。

 宰相として自分も色々とやってきたが、ユーフェミアはそこに迷いが一切無くて。

 それにユーフェミアが最初に提案したシュバリエの処遇が、塔に幽閉し頃合いを見て毒殺で。
 
 本当にそこまで嫌われなくて良かったと、ご機嫌にエールを呷るユーフェミアを見てアレクサンドは思った。

「ふふんっ! 最高っ!」

「それはまあ、良かったです」

「なに? 何か言いたそうねアレクサンド?」

「……いえ、何も」

「ふーん? ……まぁいっか、今日はとっても気分がいいわ! 朝まで飲みます!」

「え、まだ飲むんですか!? もう帰りましょ?」

「嫌ですよ、まだ夜は始まったばかり! おばちゃんエールおかわりー!」

「屋敷に早く帰って貴女の事を愛したいのに……」

「……結婚するまで次はお預けですよ?」

「え!? どうして!」

「私、まだ怒ってるんですよアレクサンド? 人の身体好き勝手しやがって……なので結婚するまでお預けです」

 にっこりとユーフェミアは微笑む。

 だけどその目は全く笑っていない。

「そんな……!」

 子犬みたいにしょんぼりとするアレクサンドは、普段と違って可愛らしくて。

「もう……仕方のない人ですねアレクサンドは。そんなの嘘ですよ? これを飲んだら屋敷に帰ります、そしたらいっぱい愛してくださいませ?」

「……ユーフェミア? 帰ったら覚えておいて下さいね? 今夜は手加減なんて致しませんから」

「え……やっぱり今のは無しで!」

「あはは、駄目ですよ? 今夜は寝かせません」
 
 ゾクリとするような色気を放ちながら、にっこりとアレクサンドは微笑んだ。




 それから月日は穏やかに流れた。

 醜い王位継承争いによって荒れ果てた大国に即位した少年王が、賢王と呼ばれるようになってから。

 大国ガーディンは民に愛される豊かな国になった。

 少年王の最初の王妃は国民に惜しまれつつも廃妃となってしまったが、王と廃妃は友人になった。

 そして廃妃様は愛する者と結ばれて新しい家庭を築き、沢山の子に恵まれとても幸せそうで。

 王様も新しい王妃を紆余曲折あったらしいが迎え入れて、王家には笑顔が絶えないらしい。

 だが一つ最近ちょっとした問題がある。

「ジャスティーヌ! 本当に愛しているんだ!」

「……コルネリウス殿下? こんな人前でそんな事を叫ばないで下さいませ、はしたないですわよ? というか気持ち悪いです、私にそれ以上近寄らないでくださいまし?」

「結婚してくれると君が言うまで、ずっと私は愛を叫んでやる! 逃げられると思うなよ!」

「……貴方のそういう所が私、大嫌いなんです」

 フェリクスの子で王太子のコルネリウスが、ユーフェミアとアレクサンドの娘ジャスティーヌ侯爵令嬢を好きになってしまい。

 ずっと追い掛けまわしているのだ。

 艶やかな黒髪にくりっとしたアクアマリンの瞳が可愛らしく、嫋やかで知的なジャスティーヌ侯爵令嬢は年頃の令息達の憧れの令嬢で。

 夫人にしたい令嬢の不動の一位である。

 だがジャスティーヌ侯爵令嬢はコルネリウスが大嫌いで、求婚をずっと断り続けている。

 まあ権力を使えれば?

 ジャスティーヌ侯爵令嬢がどんなに嫌がっても、コルネリウスは結婚出来るが。

 だがそれを父である国王フェリクスは許さない。

 そしてジャスティーヌ侯爵令嬢の母ユーフェミアも、父アレクサンドも許さない。

 本人の意思が伴わない結婚なんて地獄でしかないと、三人は身をもって知っているから。

 だからコルネリウスを影から頑張れと応援する事はあっても、生暖かく見守るだけで何もしない。

 なのでこの大国ガーディンでは現在、王太子コルネリウスの婚約者の席が空白で。

 王太子妃の席を狙う令嬢達の熱い争いが起きていた。



 
用済みと捨てられたはずの王妃はその愛を知らない【番外編】

 廃妃様は幸せな結婚がしたい 

 これにて完結と致します。

 最後までお読み頂きまして。

 ありがとうございました!

 晩秋。
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