薬の錬金術師。 改訂中

千紫万紅

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第一章 二度目の国外追放

7 エリクサー

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7



「熱がさがらない! どうすればいい!? 解熱剤を早く! カレン、頼むから、死ぬな……!」

(誰かが私を呼んでる、うるせぇ)

「魔道具の解除がどうにか間に合い、魔力暴走には至りませんでしたが、魔力には慣れておられないお身体ですので……この負担がどの様な形で今後お身体や魔力に影響を与えているのか……」

「そう、か……」
 
「こういったケースは私共も初めてなので、お力になれず申し訳ございません」

「あぁ、私もまさかここまで魔力が高いとは想定していなかった、もっと早く連れ帰っていればここまで苦しませずに済んだんだが、彼女には可哀想な事をしてしまった」

 やたら深刻そうな雰囲気で、私の事を話す声が頭上から聞こえてきた。

(そんな深刻そうに話されたらめちゃくちゃ不安になるんだが、もしや私はここで死ぬのだろうか?確かに頭が痛いし身体も軋むように痛くて、今にも死にそうな感じがする)
 
 だから状況確認がしたくて、重い目蓋をゆるゆると開くとそこには。
 私が寝かされている寝台のすぐ傍で、見目麗しい顔を持つ男がすやすやと寝息を立てて眠っていた。

 その姿を見れば、ずっと付き添って看病してくれていたんだろうなと一目でわかってしまう。

「っう……!?」

 けどちょっと、胸がときめいてしまった……!

 だって私は今をときめくぴっちぴちの十七歳。
 こんな極上イケメンの寝顔を前にしたら、こうなってしまうのは仕方ないのである。 

 そして私はゆるりと重くだるい腕を持ち上げて、寝落ち真っ最中の顔が無駄に良い男の髪をおもいっきりひっぱってやる。

「っいってぇ……!」

 余程痛かったのか、エディが飛び起きて目を見開いて私を見てきた。

(……驚いた顔もイケメンとか、こいつすごいな)

「おっはー?」

「おまっ、元気、そうだな……?」

「まあ、ぼちぼち?」

「そりゃ、よかった……」

 ホッと安心したような顔を見せるこの男に、私はとりあえず一つ聞きたい事があった。

「ねぇ、なんでエディ……オネェ言葉じゃねぇの?」

「えっ? あ、私としたことが! はしたないー! きゃー!」

(なんだろ。もっと髪の毛沢山ひっこぬいて、禿げさしてやればよかったな?)

 

 ただそんな軽口が叩けたのも最初だけで、私は現在死にかけている。

 頭から足先まで酷い激痛が走り。
 悪寒が全身を駆け巡っていて震えがとまらず、熱に魘されて。
 水もろくに飲めず、吐くものなんてもうないのに嘔吐を何度も繰り返す。

 心配している声が聞こる。

 そして医者が入れ替わり立ち替わり診察するが、私の状態は一向に回復の兆しをみせない。

 このままでは色々と不味いなと、イクスにある私特製の秘薬を届けて貰った。

 それは古代書物を解読し、幸か不幸か素材が集まって錬成した。

 【エリクサー】

 現在この世界に、これを含めて三本しか存在しない貴重な品である。
 
  ただし一部の素材が集まらず、代替品を用いて錬成しているので死人は復活出来ない。
 だけど心臓さえ動いていれば、足も生えるし内蔵も元通りになる奇跡のような代物で。

 商業国で開かれるオークションに出品すれば、とても高く売れそうなので大事にしまっておいたが背に腹はかえられぬ。
 私が今ここで死んだら、寝ずの看病をしてくれたエディにも迷惑がかかってしまう。
 
 だから。 
 とろりとした紫色の煌めく液体をこくりと口に含んで嚥下すれば、水さえろくに飲めなかったのに染み渡るように胃に流れていき。

 エリクサーは身体に染み渡る。

 それはまるで魔法のように。
 みるみるうちに熱は下がり、全身を駆け巡る激痛もまるで嘘のように消えていった。

 これはどんな薬なのかと問い詰められたが。 
 錬金術師は製造法を基本的に隠匿し公開なんてせず弟子に引き継がせるものなので絶対に教えない。

 まあ私は弟子なんてとるつもり毛頭ないのだけれど、教えた後が面倒だから答えたくない。

 とりあえず回復し、人心地ついて。
 いったいここはどこなのかと、甲斐甲斐しく世話を焼いてくるエディに確認すれば。

 ここは国境門を出て直ぐの場所で。
 私の具合が良くないということにより、国境門を通る前にエディの指示によって設置されたベースキャンプらしい。

 そして私は現在、そのベースキャンプの中にある天幕に寝かされているのだという。

「そんなすごーいお薬、あるなら早くいってよね! 私、すごく心配したんだから!」

「ねぇ、エディって心は乙女なの? それともただの変態なのどっち?」

「……私はわ・た・し! よぉー?」

 キャー! と、照れながら答えてくる。

「助けて貰ったっぽいんだけどさ、めちゃくちゃムカつくのなんでだろ?」

「あはは、思春期ねぇ?」

「こんなやつに助けられたとか、一生の不覚だ」

「若いって、いいわね!」
 
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