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困った朝

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「困った……かもですねぇ」

 はぁ。
 間にため息を挟んだために分かたれた言葉。途方に暮れた声は、ほんのり白い息とともに口から外へと押し出され、消える。
 人気のない公園の、鈍く鳴ったブランコに座ったまま。右手にチャロアイトのブレスレットをした少女・チャロアは頬にひりつく冷たさもままに、空を見上げた。
 赤茶色の髪をお下げにして、同じ色の猫目をぱちぱちと瞬かせる。パーカーとショートパンツ、その下にはタイツとスニカーを履いている姿は、防寒具もなくあまりこの季節に向いていると思えない。
 どこにいても、明け始めた空は白に近くて。どこか遠くで別の誰かも同じ空を見上げているのかと思うと、握ったブランコの鎖が、両手から体温を奪っていくのも許せそうな気が……。

「しないんですけどね!」

 寒いものは寒い、春の早朝など寒いに決まってるのだから当然の反応だ。
 プラスチックで出来た座面でさえ、チャロアの温度に染まるほど長く座っているのに、この鎖ときたら。ただでさえ寒い中でどんどん体温を奪っていく。
 許せない、がしゃがしゃ鎖を揺らして遊んでいると、虚しさが息となって押し出された。
 ここにいても仕方がないことは分かっている、だから。
 座っていたブランコから立つために重心をずらすと、また高く響いた軋み音に苦笑して、立ち上がりお尻をはたく。
 チャロアは砂場と先程まで座っていたブランコしかない、寂れてるというのもおこがましいような公園を見渡して。
 その場をあとにした。
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