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<トウ対セト>

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舞台は異世界に戻り、対面したセトとの戦闘が始まる。



「ホラッホラッ!」



まるで旗揚げゲームのように掛け声を上げ、セトは笑いながらナイフを突き出す。



「避けるの上手いね~。どんどんいくよ~、ホラッホラッ!」



必死でナイフを避ける自分を、セトは馬鹿にした調子で攻撃を続ける。



この舐めた態度が、攻撃系のスキルを持っていないと予想してなら当たってはいる。



そう。

異世界に来たばかりの頃だったならだ。



魔王の配下になった事で、新しい攻撃系スキルを手に入れたのである。



使うのは初めてだから、相手がどうなるかは解らない。



そういう意味では敵が、遠慮する必要の無い狂人で良かったと云える。



「ファイア-ボール!!」



スキル名を唱えると、口から飛び出た火の玉がセトに向かう。



攻撃されると思っていなかったのか、何とか避けたセトは驚いた表情を返す。



「へぇ~、そんなのも出来るんだ。 まぁ、こっちも出来るんだけどね」



そう言ってセトは口から液体の毒を飛ばし、周囲に毒液を撒き散らしていく。



「触れたら溶けて死んじゃうよ~」 



セトの言葉通りに、毒液の付いた草や樹が煙りを上げ溶けていき。



いつの間にか辺りは、其の毒液で囲まれている。



其れを見てセトは、口角を片方だけ上げ薄気味悪く笑うのだった。



「もう逃げ場も無いよ~。 馬鹿だよな~最初っからこうしてれば楽だったのに。 あっ、死んじゃうとスキル盗れないから駄目かアハハ…… 」



コイツは本当に人間なのか……。



毒を吐く異様な姿だけでは無い、其の狂悪な存在感と思考。



まるで言葉を話す魔獣、魔物よりもタチが悪い。



だが、まだ付け入る隙が無い訳では無い。



まだ毒液は液状を保っているが、物を溶かす位だから揮発性は在るだろう。



其れにセトがスキルを奪うのを狙っているなら、毒液で弱らせてからと企むはず。



其れを突破するには自分のスキルファイア-ボールで、毒液を相殺出来るかに掛かっている。



互いに攻め出すタイミングを図り、スキルを撃ち合う。



同時に放たれたスキルだが、威力が勝ったのはセトの方だった。



辛うじて直撃を避けた毒液が、背後の木々を溶かし倒す。



「次は外さないよ~、先ずは脚かな~」



愉しそうにセトは身体を揺らし、狙いを定める。



さっきと同じ様に撃ち合っても、命中されるのは時間の問題だった。



毒液も液状を保ったままで、当分は消えそうにない。



もう逃げ場所も無く、対抗する手段は残っていない。



其れでも……、エミリだけは助けたい。



やっと取り戻した娘の人生を、こんな奴に……。



込み上げる悔しさも、睨み返す事しか出来ない。



其の時。セトの頭上を一筋の斬撃が通り過ぎ、背後の木々を切り倒す。



驚き振り返ると、其所にはルミニー率いるガルのメンバーが居たのだった。
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