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<目覚め>

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ダンジョン攻略を諦めたからと云っても、出口にワープ出来る様なアイテムは持っていない。



魔王が起きていれば魔法で可能かもしれないが、ガオンに担がれたまま起きる気配は無く。



現時点では自分達で出口を探すしか、脱出する方法は無かった。



先ずは来た道を戻り、塞いでしまった道以外で出口に繋がっていないかを探し始める。



自分はエミリの肩に乗っているだけだから何とも無いが、一行の蓄積された疲労は明らかである。



疲れてきたからか一行は息苦しそうにしているが、今の所酸素が無くなる様な感じはしない。



背後から蟻が来た時、完全に道が塞がっていたらと思うと恐いものである。



其れでも探している間にキラーアントと遭遇しないのだけが、唯一の救いだった。



「ゴブリンさん大丈夫ですか?」



息を切らしながらも歩くゴブリンを気遣い、エミリが声を掛け。



「大丈夫です、命懸けですから」



ゴブリンは強がりを返す。



唯一戦っていない娘のエミリと自分だけが体力的な疲労だけで済んでいるので、其れこそガオンとゴブリンの疲労は計り知れない。



エミリは魔王に助けてもらったからか、歩きながらも心配そうに魔王を見つめている。



だが長時間掛けて歩き探しても紅い蟻を倒した広場に戻ってしまい、残る道は紅い蟻の背後に在った一本となってしまった。



少し広場で休憩すると最後の希望を胸に、残る一本の道を一行は再び歩き始め。



絶望するのは其れから更に数時間が経ったであろう頃に、辿り着いた広場が行き止まりだったからだった。



「此れは魔王が目覚めるのを待つしかないな……」



自分の提案に一行は頷き、各々身体を休める。



もしも魔王が目覚めたからと云っても助かるのが確定した訳ではないが、もう其れ以外に脱出出来る可能性は無かった。



一行も其れを察してか、誰も口を開こうとはしない。



数分後。

人間の姿のまま目覚めた魔王が目蓋を開くのと同時に、もう一体目覚めた者が居た。



紅いキラーアントを倒した広場の壁面や床にそのままの、キラーアントと卵らしき物体の残骸。



其の残骸の隅で助かった卵から

目覚めた蟻は殻を破り、一匹の紅い雌のキラーアントが現世に降り立つ。



番いで在る紅いキラーアントの遺体と、倒れたままの骸骨兵を眺め奇声を上げる。



「コイツらダ……、コイツらが奪った……」



紅い蟻は呻き声を上げながら、残骸を食らい尽くしていく。



仲間の卵も、番いである紅いキラーアントの遺体さえも。



女王で在る雌の紅いキラーアントの目覚めは、種の復活と同様であり。



其れは再び、他の種にとっての災厄が訪れた事を意味していた。
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