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<春と修羅>
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時は少し戻り。
魔王曰く空いている部屋を使って良いと言っていたので、トウとエミリの二人は魔王城内を歩き寝室を探す。
ついでに消えた少年を探してみたが、当然見付ける事は出来なかった。
まさか其の少年が、さっき迄会っていた魔王だとは思いもせずに。
魔王の仲間になるとトウが勝手に決めたので、困惑していたエミリをトウが説得していた。
「配下ではなく仲間なのだから良いだろう、其れに断れば又牢屋に入れられるかもしれないから仕方ないだろう」
二人には解らない事だが実際は牢屋は開放されたままで、骸骨兵が足りない今もう使われる事はない。
其れらを知らず不満そうに口を尖らすエミリだが、困惑するのも無理はない。
ミノタウロスから助けようとした少年は一瞬で消えて、其れからあっという間に魔王の仲間になってしまったのだから。
とはいえエミリには云っていないが、魔王の仲間になったのには他にも理由が在る。
盗賊に襲われた時に思ったのだが、エミリには魔物よりも人間の方が危険だからだ。
自分がエミリを守れる程に強くなる迄は、魔物だらけな此処の方が安全だと思った。
<聖者の行進>を持っているエミリはAランク以下の魔物からの攻撃、更に触れる事すら出来ない。
攻撃された訳ではないので魔王のランクは解らないが、配下はAランク以下だろう。
配下ではなく仲間という要求も魔王を試したつもりだが、無理な事を言ってこない現状では仲間になっても問題無いと判断したのだ。
それよりも自分が一番驚いたのは能力の説明をしていないのに、エミリが見知らぬ少年を助けに飛び出した事だった。
だからこその判断でも在るのだが、親としては嬉しいような困ったような複雑な気分である。
其れにしても魔王に会ってからは、不思議な位に静かな場所になったのである。
広いので城の中を結構歩き回ったが、あれだけ居た骸骨兵とは一度も遭遇しないし。
もちろん少年も見付からない。
唯一遭遇したゴブリンは、ひたすら拭き掃除をして走り廻っている。
骸骨は夜に眠るのか?以外と人間らしい部分が魔物にも在るのかもしれないなんて思ってしまうが、まだ油断は出来ない。
念のため探した寝室の中で一番逃げやすい一階を選び、久しぶりの布団に入った。
さっき見たゴブリンが掃除済みなのか、使われていないのに綺麗な室内。
正にアンティークで、天蓋付きのベッドを眺めエミリは感動している。
其れでも昨日はあまり寝れなかったのか、いつの間にかエミリはスヤスヤと眠っている。
だが自分は、まだ寝る気にはなれない。
配下にも少年を消した妖しい奴が居るのだから、せめて見張っておかないと。
娘を守る為ならば、自分は修羅にでもなるつもりだ。
・・・・・・おかしい。
自分は魔物を誤解しているのか?
まるで春のように暖かい陽が射し込む朝になっても静かなまま、結局何も起きはしなかった。
その方が良いのは間違いないが、何事も無く平和すぎる。
そんな事を考えていると目覚めたエミリが笑顔で朝の挨拶をして、いつものように髪を整え始める。
何気ない其の笑顔を観ているだけで、幸せな気持ちになれる。
此処が魔王城だと忘れる位に。
魔王曰く空いている部屋を使って良いと言っていたので、トウとエミリの二人は魔王城内を歩き寝室を探す。
ついでに消えた少年を探してみたが、当然見付ける事は出来なかった。
まさか其の少年が、さっき迄会っていた魔王だとは思いもせずに。
魔王の仲間になるとトウが勝手に決めたので、困惑していたエミリをトウが説得していた。
「配下ではなく仲間なのだから良いだろう、其れに断れば又牢屋に入れられるかもしれないから仕方ないだろう」
二人には解らない事だが実際は牢屋は開放されたままで、骸骨兵が足りない今もう使われる事はない。
其れらを知らず不満そうに口を尖らすエミリだが、困惑するのも無理はない。
ミノタウロスから助けようとした少年は一瞬で消えて、其れからあっという間に魔王の仲間になってしまったのだから。
とはいえエミリには云っていないが、魔王の仲間になったのには他にも理由が在る。
盗賊に襲われた時に思ったのだが、エミリには魔物よりも人間の方が危険だからだ。
自分がエミリを守れる程に強くなる迄は、魔物だらけな此処の方が安全だと思った。
<聖者の行進>を持っているエミリはAランク以下の魔物からの攻撃、更に触れる事すら出来ない。
攻撃された訳ではないので魔王のランクは解らないが、配下はAランク以下だろう。
配下ではなく仲間という要求も魔王を試したつもりだが、無理な事を言ってこない現状では仲間になっても問題無いと判断したのだ。
それよりも自分が一番驚いたのは能力の説明をしていないのに、エミリが見知らぬ少年を助けに飛び出した事だった。
だからこその判断でも在るのだが、親としては嬉しいような困ったような複雑な気分である。
其れにしても魔王に会ってからは、不思議な位に静かな場所になったのである。
広いので城の中を結構歩き回ったが、あれだけ居た骸骨兵とは一度も遭遇しないし。
もちろん少年も見付からない。
唯一遭遇したゴブリンは、ひたすら拭き掃除をして走り廻っている。
骸骨は夜に眠るのか?以外と人間らしい部分が魔物にも在るのかもしれないなんて思ってしまうが、まだ油断は出来ない。
念のため探した寝室の中で一番逃げやすい一階を選び、久しぶりの布団に入った。
さっき見たゴブリンが掃除済みなのか、使われていないのに綺麗な室内。
正にアンティークで、天蓋付きのベッドを眺めエミリは感動している。
其れでも昨日はあまり寝れなかったのか、いつの間にかエミリはスヤスヤと眠っている。
だが自分は、まだ寝る気にはなれない。
配下にも少年を消した妖しい奴が居るのだから、せめて見張っておかないと。
娘を守る為ならば、自分は修羅にでもなるつもりだ。
・・・・・・おかしい。
自分は魔物を誤解しているのか?
まるで春のように暖かい陽が射し込む朝になっても静かなまま、結局何も起きはしなかった。
その方が良いのは間違いないが、何事も無く平和すぎる。
そんな事を考えていると目覚めたエミリが笑顔で朝の挨拶をして、いつものように髪を整え始める。
何気ない其の笑顔を観ているだけで、幸せな気持ちになれる。
此処が魔王城だと忘れる位に。
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