上 下
20 / 143

<悪巧みと契約成立>

しおりを挟む
あのククク野郎が付いて来た時に悪い予感はしたが、やはり悪巧みしていやがった。

モノマネした時の仕返しなのか、只の嫌がらせを楽しんでいるのか本当に信用ならない。

だが今は取り敢えず彼女を助けに行かないと、又ククク野郎が何するか解らない。



鍵は開いていたので難なく室内には入れたが、中では黒いローブを纏った誰かが倒れている。

慌てて駆け寄り起こそうと抱き抱えると、其れは骸骨だった。



驚いたと同時に、不気味な違和感を感じる。

朽ちているなら、普通は崩れ落ちていくはずだが。

まるで生きているかの様に骸骨は全体の形を保っていて、今にも動きだしそうだ。



そう思っていると頭に機械的な声が響く。

魔王:グレン・ルーファス

[擬態姿真似]の条件が整いました。



やはりオカシイとは思ったが、魔物の遺体だったのか。

だが一つ解ったぞ、どうやら戦わないと能力擬態は出来ないらしい。

だが気のせいか?今、魔王って聞こえた気がしたが。



「人間が二回も来るとは珍しい日だな」



不意に喋りだした骸骨に驚き手を放しかけると、骸骨は何事も無かったかの様に話し掛け続ける。



「そう怖れるな、もう我は消える身だ。其れよりも頼みが在る引き受けてくれんか?」



骸骨兵の親玉らしき恐ろしい見た目とは裏腹に、威圧感の在る話し方ではなく。

少し安心はしたが、恐る恐る訊ねてみる。



「頼みとは、どんな内容でしょうか」



「我が消えて配下が哀しまぬよう我の代わりに主になってほしい、お前のスキルなら其れが可能だろう」



どうやら俺のスキルは見抜かれているので、理由を付けて断りづらい。

其れに主って、やはり魔王というのは聞き間違えではなかったのか。



特にメリットが無いので悩んでいると、魔王は話しを続ける。



「勿論タダとは云わん、我の知識を全て授けよう。其れに我が転移した城もお前の物だ、どうだ悪くはないだろう」



確かに条件は悪くない。

外は荒野で、きっと魔物が沢山居るだろうし。

人間の済んでいる所迄行けるかは解らない。



くれるという城も全体的に薄暗くはあるが、かなり広く豪華。

此の部屋は所々に戦闘跡のような傷が付いていて、寂しげに大きな椅子が一つ有るだけだが物件としては悪くない。



配下を騙すのはどうかと思うが、気にしなければタダで寝る場所を得たようなものだし。

上手く誤魔化せれば、彼女を救うリスクもゼロになる。



「喜んで引き受けましょう」



「契約成立だな」



そう云うと魔王は砂の様に崩れ落ち、ローブだけを残して消えていった。



早速ローブを纏い[擬態姿真似]で魔王:グレン・ルーファスを選択。



見た目が骸骨になってしまったので、恐れられるかもしれないのは残念だが仕方ない。

此れで彼女が救えるなら、其れだけで充分だ。



そう思ったのも束の間。



「そろそろ我の配下が来るぞ」と先程消えたはずの魔王の声が、直接頭に聞こえてくる。



どういう事だ、消える身じゃねーのかよ。



口に出していない俺の疑問に、魔王が意識内で答える。



「喜べ。お前の魂に取り付いて、我の知識を授けているのだよ。このまま消えてしまいたかったが、まあ人間の寿命なぞ短いからな仲良くしようじゃないか」



取り付くって?最初の説明で聞いてねーよ。

しかも寿命分って、仲良くしようじゃねーよ。

こんなん呪いじゃねーか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

排泄時に幼児退行しちゃう系便秘彼氏

mm
ファンタジー
便秘の彼氏(瞬)をもつ私(紗歩)が彼氏の排泄を手伝う話。 排泄表現多数あり R15

婚約破棄の場を悪魔族に愛された令嬢が支配する。

三月べに
恋愛
 王子が自らの婚約者の悪事を暴いて、断罪するパーティー会場。高らかに、婚約破棄を突き付けた王子は、玉座のように置かれたソファーの前から吹っ飛んだ。  何が起きたかわからないパーティー参加者を置き去りに、婚約破棄を言い渡された令嬢は、艶やかな黒の巻き髪をふんわりと靡かせて、そのソファーにふんぞり返るように腰をかけた。 「それでは、本当の断罪を始めましょう」  琥珀の瞳を蠱惑に細めて、ほくそ笑む。  そのパーティー会場は、突如現れた悪魔族の力によって、扉も窓も開かなくなった。悪魔族達が従うのは、『魔王』の力を持つその令嬢、ただ一人だけだった。 ※3万文字数のダークに過激な断罪ざまぁモノ※ハッピーハロウィンテンション♪(2023年10月13日の金曜日♡)※ (『小説家になろう』サイトにも掲載)

忠犬ポチは人並みの幸せを望んでる!

Lofn Pro
恋愛
ゲス王子は叫ぶ。 「俺は着飾ったオッサンといるより、着飾ったオネーサンといるほうが良い!!」 忠犬ポチは天に祈った! 「嗚呼、神様。どうかこの男に死なない程度の天罰をお与えください!」  生活苦から女であることを隠して兵士として従事していたポルト。  厳しい時代は終わり、王子のペットである狼二匹の世話係に任命されるも、気がつけば「ポチ」と呼ばれ無類の女好き王子フォルカーの世話(従者)まですることに。  いつかは生涯の伴侶をと願いつつも、コミュ障・幼児体型(ちっぱい)・性別詐称、おまけに脳筋の四重苦で成果は未だ実らず、ただ黒歴史を重ねるばかり…。  狼達のもっふもふ毛皮の手入れをしながら、主人の夜遊びに振り回される日々はそれでも幸せだった。  しかしある事件で名誉の負傷。それがきっかけで…… ――――「お前…本当は女だな……!?」  よりにもよってあの王子に女であることがバレてしまった!  王子の女性問題であたふたし、一念発起で始めた婚活は貧乳問題で挫折寸前…!?  ツッコミ要員で追加したキャラは端からボケにジョブチェンジ。  手が届きそうで届かない、王子と男装従者の身分差じれっ恋! ━━…━━…━━…━━…━━…━━━━…━━…━━…━━…━━…━━ ・★マークが記載されているページには挿絵が入ります。(内容によって★マークが無い所もあります。) ・乙女向け要素が多々あります。 ・王道ストーリーです。「ベタ展開を出来るだけ踏みたい。斜め上から」みたいなイメージで書いてます。 ・男装ヒロインなのでネタ程度のBL要素もたまに出ます。 ・無理やり砂糖をねじ込んでいる時がありますので、こちらも苦手な方はご注意ください。 ・頻繁ではありませんが暴力的要素もあります。なろうさんでは「R15 残酷な描写有り」で登録してあります。 ・こちらの作品は「東国のリガルティア~忠犬ポチは人並みの幸せを望んでる!~」でなろうさん(完結)、魔法のiらんどさん、マグマクさん(完結)でも掲載中です。(更新はなろうさんよりもこちらの方が早いです。) ・本作に入らなかったエピソードをコミカライズし、第19回漫画大賞秋の陣で特別賞を頂きました。  読者の皆様、編集部の皆様、本当にありがとうございました! イラスト:天満あこ

かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる

竜頭蛇
ファンタジー
伊藤淳は都内の某所にあるダンジョン配信者事務所のマネージャーをしており、かつて人気配信者を目指していた時の憧憬を抱えつつも、忙しない日々を送っていた。 ある時、ワーカーホリックになりかねていた淳を心配した社長から休暇を取らせられることになり、特に休日に何もすることがなく、暇になった淳は半年先にあるS級ダンジョン『破滅の扉』の配信プロジェクトの下見をすることで時間を潰すことにする. モンスターの攻撃を利用していたウォータースライダーを息抜きで満喫していると、日本発のS級ダンジョン配信という箔に目が眩んだ事務所のNO.1配信者最上ヒカリとそのマネージャーの大口大火と鉢合わせする. その配信で姿を晒すことになった淳は、さまざまな実力者から一目を置かれる様になり、世界に名を轟かす配信者となる.

鬼神の刃──かつて世を震撼させた殺人鬼は、スキルが全ての世界で『無能者』へと転生させられるが、前世の記憶を使ってスキル無しで無双する──

ノリオ
ファンタジー
かつて、刀技だけで世界を破滅寸前まで追い込んだ、史上最悪にして最強の殺人鬼がいた。 魔法も特異体質も数多く存在したその世界で、彼は刀1つで数多の強敵たちと渡り合い、何百何千…………何万何十万と屍の山を築いてきた。 その凶悪で残虐な所業は、正に『鬼』。 その超絶で無双の強さは、正に『神』。 だからこそ、後に人々は彼を『鬼神』と呼び、恐怖に支配されながら生きてきた。 しかし、 そんな彼でも、当時の英雄と呼ばれる人間たちに殺され、この世を去ることになる。 ………………コレは、そんな男が、前世の記憶を持ったまま、異世界へと転生した物語。 当初は『無能者』として不遇な毎日を送るも、死に間際に前世の記憶を思い出した男が、神と世界に向けて、革命と戦乱を巻き起こす復讐譚────。 いずれ男が『魔王』として魔物たちの王に君臨する────『人類殲滅記』である。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

処理中です...