姉妹差別の末路

京佳

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私には妹が居ました過去の事です

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こんにちは。隣同士に座ったのも何かの縁ですわ。宜しければ暇つぶしに私の話を聞いて下さいな。


私には妹が居ました。ええ居たのです。もう今では過去の事です…

私と妹は血の繋がった姉妹でしたが全く似てませんでした。2歳下の妹は両親の美貌を全て受け継いだかのように素晴らしく美しい少女でした。

一方私は髪色と瞳の色は両親と同じですが地味でパッとしない大人しい性格の少女でした。


妹が産まれてからは両親の愛情も私の持ち物もメイドも全て妹の物になりました。妹は愛想も良く誰からも愛されて瞬く間に社交界の華と呼ばれるようになりました。

年頃になり私にも婚約者が出来ました。優しくてとてもハンサムな方で私は彼に惹かれていました。

彼だけは妹ではなく私を選んでくれたのだと信じていました。愚かにも……


けれどやっぱり婚約者も妹に心を奪われていました。ある日私は2人が密会している現場を目撃してしまいました。

『あんな可愛げのない姉よりも美しく心優しい君が僕の婚約者ならどれほど良かったか。僕が愛してるのは君だけだ』

『私も貴方を愛しています。お姉様は酷いの!子供の頃からずっと私の欲しい物を全て奪って行ったのよ…今度は貴方まで…私は貴方だけは失いたくないっ!!』


全く……呆れました。どの口が言うのでしょうか?全て奪われたのは私の方です。

けれど美しい2人が寄り添い愛を語り合う姿はまるで絵画のようでした。

私は胸の奥がスーッと冷えていくのを感じました。

妹と婚約者に僅かながら残っていた私の情はこの瞬間に綺麗サッパリ消え去りました。

妹と婚約者の密会から数日後に私は婚約者から婚約破棄を言い渡されました。理由は私が妹の物を全て奪い取りおまけに嫉妬して暴力を振るったからだそうです。

このように強欲で乱暴な姉とは結婚する気は無い!妹と新たに婚約を結び直すと婚約者はハンサムな顔を意地悪く歪めて言いました。

妹は勝ち誇ったような顔をして彼の隣で微笑んでいました。


妹に物を奪われ一方的に嫉妬され暴力を振るわれたのも私の方です。けれど誰一人としてそんな事は信用しません。

もちろん両親も使用人も妹の味方でした。私の言い分など聞きもせず妹の話だけを真実と受け止めて私を勘当し家から追い出しました。

彼らはそう言う人種でした。


随分前からこの家族に絶望し見切りをつけていた私はあらかじめ荷物をまとめて隠しておいた小さなカバンを手に取り屋敷を後にしました。


向かった先は2つ隣の国にある【女性の駆け込み寺】です。様々な事情で迫害された女性を保護してくれる施設です。船に乗り汽車を乗り継ぎ3日かけてその国へ着きました。

飛び込みで訪ねた私を施設のシスター達は何も聞かず受け入れてくれました。

その施設には私のように家族に虐げられた女性や恋人や夫に虐待を受けて命からがら逃げてきた女性がたくさん居ました。

私が施設で暮らし始めて数年後に何処で聞いたのか私を勘当した父から手紙が届いたのです。

当時の怒りが昨日の事のように蘇り手紙を破り捨てようかとも思いましたがまぁ見るだけはと封を開けました。


手紙の内容は…

私が家を出てすぐに妹が命に関わる重い病気にかかっている事、妹は危ない状態だが臓器移植をすれば命は助かる。血液型も同じで血の繋がった姉妹ならドナー提供は可能。過去の事は許してやるから至急家に帰って来い。

相変わらず上から目線でさも私が妹のドナー提供をする前提のような口ぶりでした。

思わず笑ってしまいましたよ。あの人達は何も変わっていませんでした。

何処まで私をバカにするんでしょうね?臓器まで妹に寄越せと言うのですから。

正直妹がこのような状態になったのは明らかに因果応報だと思いました。自分のやった事は良い事も悪い事も全て自分に返ってくるのです。


私はふと考えました。


もしも…両親が妹と私を差別せず分け隔てなく愛していたら


もしも…妹が私を家族として愛し私の物を略奪しなければ


私は喜んで妹を助けたかもしれません。でもそれはあくまでも「もしも」の場合です。


結局私は家に帰りませんでした。父が施設に尋ねて来たとしても暴力や迫害から逃げて来た女性を守る施設なので国の保護義務があり絶対に私に会う事は出来ないのです。

そして半月後にまた父から手紙が届きました。何となく内容は分かっていました。

けれど私はその手紙を読む事なく暖炉に焚べました。捨てた家族にはもう未練はありません。


ああ……そろそろ汽車の時間ですわ!長々とお話を聞いて頂きありがとうございました。

貴方はご家族とは仲がよろしいのですか?そう!それは良かったです。

何が起こるか分かりませんから不仲よりも仲良くしていた方が良いですからね。


……ええ私はその施設を出てこれから地方の修道院へ向かいます。これからの人生をゆっくりと見つめ直すつもりなんです。

え………?ご冗談を!もう私はこんな歳になりましたし恋愛も結婚も出来ないと諦めておりますわ。
 

いえ……本当です。まぁ……ふふふっ…、そのお言葉だけ有り難く頂いておきますね。


はい?そうです。その修道院ですわ。ええっ?!


ねぇ貴方?そんな事は冗談でも初対面の女性に言ってはなりませんよ。本気にしてしまったらどうするのですか?ああもう!この話はおしまいです!


私の名前ですか?セシリアですわ。ええ、もう平民ですから苗字は捨てました。貴方のお名前は?


……そう。貴方にピッタリな素敵なお名前ね。ええ本当に……また何処かでお会いできれば良いですね。


それでは失礼します。ごきげんよう…




………………………………
セシリアの妹は死ぬ直前まで姉への恨み言を呟いていた。たいそう美しかった彼女の姿は見る影もなくなり苦しみ抜いた末に苦痛に顔を歪ませ血を吐きながら死んだ。

セシリアの婚約者だった男は妹が病に伏せたとたん別の女に走った。しかしセシリア姉妹を手酷く捨てた悪評は既に広まっており彼の結婚相手に名乗りをあげる者は現れなかった。

セシリアの両親は彼女への仕打ちのせいで妹のドナーを断られた事が露見し周囲に白い目で見られた。社交界からも弾かれて事業も傾き没落した。彼らはすぐに世間から忘れ去られた。

セシリアは半年後、本当に修道院を訪ねてきたイケメンと再会し半ば強引に彼の国へと連れ去られました。何と彼は身分を隠して全国を放浪していたその国の第二王子だったのでした。

彼はセシリアが忘れられず一度国へ戻って彼女を妃に迎える手配を整えていたのだとか。実はセシリアも彼のことを憎からず想っていたので求婚を受け入れました。

セシリアはとうとう自分だけを愛してくれる伴侶を得ることが出来ました。そしてその数年後には彼によく似た可愛い子供も手に入れました。長年の姉妹差別の末にセシリアだけが幸せになったのでした。

因果応報エンド☆追記2022/9/14
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