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裏切られて

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私は裕福な貴族の娘として産まれ両親に愛されて育った。両親の良いところを全て受け継いだ私は自国や他国の王女や姫よりも美しいと言われる程の美貌を持っていた。年頃になると婚約の申込みが殺到したけれど私はその全てを拒否した。


「ロアンナ…どうしてそんなに婚約するのが嫌なんだ?お前が望めば王妃にだってなれるのに」

「嫌よ絶対に嫌!お嫁になんか行きたくない!私はずっとお父様と一緒に居たいの!お父様っ…私を何処にもやらないでお願い…」


私は父の首に腕をまわしてギュッと抱き着いた。私を膝の上に乗せた父はクスクス笑いながら私の背中を優しく撫でた。父は私の額にチュッチュッとキスをする。


「あぁ…ロナ可愛い私のお姫様。私だってずっとロナと居たいよ。こんなに可愛いお前を嫁になんかにやりたくないさ」


「っお父様!だったら、、」


「でもねロアンナ?貴族の娘として産まれたからには政略結婚をして血筋を残さなければなはないんだ。ロナの気に入る相手を見つけるから……」


「ずるいわ!お父様とお母様は恋愛結婚だったのでしょう?それなのに私だけ好きでもない相手と政略結婚しなければならないなんて嫌よ!」


私と父のやり取りを向かい側のソファに座って微笑みながら見つめていた母が口を開いた。


「お母様とお父様はたまたまよ。お母様はずっとお父様の事が好きだったのだけれど……お父様には既に婚約者が居たのよ。だからお母様がお父様の事を諦めなければと思っていた時に……不幸にもお父様の婚約者が亡くなってしまったの。それから色々あって…お父様とお母様は結婚する事になったの。このような事は滅多にないのよ。けれどロアンナもきっといつか素敵な旦那様に出会えるわ!」


(嘘つき女狐。トリシア…あんたってほんとに嫌な女ね。大嫌いよ早く死ねばいいのに!)


私が何も知らないと思っている母は頬を赤く染めて父と見つめ合っている。父も愛おしげな眼差しを母に向けている。


私は正真正銘この両親の娘だけれどロアンナではない。かつて私の婚約者だった父ダニエルを奪った母トリシアに裏切られて自死した『ニーナ』なのだ。


私はダニエルとトリシアの不貞の現場を目撃し狂ったように泣き叫んだ。悲しみとショックで衝動的に私は学園の屋上から飛び降りた。その時強く残ったのがダニエルとトリシアへの強い憎しみだった。2人は私が死んだのをこれ幸いとその後婚約して結婚した。


【お前の願いを一つ叶えてやろう】

死んで地獄を彷徨う私に悪魔が蕩けるほどに甘い声で囁いた。


………………………

それから月日が過ぎ私は17歳になった。背が伸びて体つきも大人になり周囲の男達にしつこいくらいにアプローチされている。相変わらず婚約の打診が絶えないけれど全て断り続けている。


自室の姿見の前に立ち服を脱ぎ捨てた私はまじまじと自分の身体を眺めた。


背中まで伸びた色素の薄い金髪。肌は透き通るほどに白く滑らかで父と同じ空色の大きな瞳。筋の通った小さく形の良い鼻と紅をさしてもいないのに赤く濡れたハート型の唇。華奢な首と肩、腕も腰も脚も細いけれど胸は豊かに盛り上がり小さめの乳輪と乳首は薄いピンク色、殆ど毛のない性器はぴったりと閉じている。


ロアンナの顔と若くみずみずしい身体は昔の自分やトリシアとは比べ物にならないくらいに美しい。


「私からダニエルを奪った憎いトリシア…お前を絶対に許さない。私はお前からダニエルを取り返す!」


私は死んだ後もダニエルだけは諦められなかった。彼を心から愛していたからどうしてもまた会いたかった。だから私は悪魔にこう言った。


「私をダニエルとトリシアの娘にして!あの2人の娘として産まれ変わらせて頂戴!ダニエルを取り返してトリシアに復讐するの!!私の魂を貴方にあげるからお願いよ!」


悪魔はさも面白そうにくつくつ喉を鳴らして私の願いを叶えてくれた。


そして私は2人が結婚して1年後に彼らの娘として再びこの世に生を受けた。産まれた時から前世の記憶を持っていた私は愛する娘を溺愛するダニエルとトリシアを心の中では蔑みながら愛らしく微笑んだ。
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