全部欲しい満足

月日１

泉水の生活は國見を中心としていた。

 國実を部屋に呼ぶようなってからその痕跡を部屋に残そうと躍起になっている。

 國実がやってくるのは変わらず週に一度、金曜か土曜に泊まりにやってきて翌日帰る。二日続けてということは今までない。
 國実の仕事が忙しいというのが主な理由で泊まった翌日もあまり長居することはない。

 それでも泉水は毎日充実していた。
 週末の約束が破られてないことや、気を使いながら平日送るメールにも遅くなろうとも返信が来ること、部屋で過ごす以外にも外食に出たり、映画を観に行ったり、ショッピングモールに出かけたりと当たり前のデートをした。
 國実に会えない時間は次のデートを考えることで気持ちが上がる。
 そしてそれ以上に泉水が熱心に取り組んでいることは料理だ。
 これまでの人生で泉水が包丁を握ったのは学生時代の調理実習だけだった。だから料理で恋人をもてなそうと思ったことは微塵もなかったのだが、ある時國実が包丁、まな板、鍋、フライパンと食材をもって部屋を訪れた。
 どうしたことかと見ていると、悪戯をしているような顔をしながらカウンターキッチンの中で手早くパスタを作り上げたのだ。
 もう少し道具がそろえば凝ったものを作ったんだがとテレながら泉水にそれを進めてくれた。
 感動するほど美味しかった。
 本当のあっという間に出来上がったものなのにフォークが止まる隙もなく夢中で食べ、 あまりに早く完食したことで申し訳なくなるほど、泉水は國見の手料理の虜なっていた。
 國実はそんな泉水を見て愉快そうに笑いながら、「胃袋を掴むのも大事」と泉水に料理を振舞った理由を教えた。
 それから 泉本も國実の料理の手伝いをするようになった。いつの日か泉水の手料理を國実に食べてもらうためだ。
 危なっかしい手つきの泉水にも國実は呆れることなく付き合い、こういうのも楽しいと笑う。
 上達するには練習あるのみと、今は包丁になれるため毎日野菜や果物を刻んでいる。切れたものは冷凍することで、週末國実が使ってくれる。もちろん出来の良し悪しの評価もだ。
　その練習方法も全部國実が言ってくれたもので、ずぶの素人の泉水も目に見えて慣れが分かる上に自分が切った野菜が美味しい料理になるとさらに嬉しくなり、料理への関心も上り調子だった。

 もちろん夜の遊びも継続している。
 國実の意向もそのまま、泉水は自身のプレイルームの中で遊びに興じている。
 実際國実とのプレイは遊びなのだと実感することがあった。