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幕間
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たった一人でだたまっすく城を目指して歩いてきたシンでしたが、ある時森で大きな影に襲われてしまったのです。
それまで、ケンカすらしたことの無かったシンが勝てるわけもありません。
でもそんなシンを助けてくれる者がありました。
ベマと名乗る少女。
彼女はあっという間にその影を蹴散らしてしまったのです。
そしてシンを心配し、ケガの手当までしてくれました。
家を出てずっと独りだったシンは、久し振りに感じた優しさに思わず泣き出してしまいました。
そしてその理由を話すとベマは大丈夫と言って、シンの手を取りある場所に連れて行ってくれました。
連れて行ってもらった先には、ベマの友達がいました。
リュー。
オードリー。
ノサ。
みんなシンやベマの話を聞いて協力してくれると言ってくれました。
もう一人ぼっちじゃないシンは仲間を守るため強くなろうと決意しました。
みんなに戦い方を教わりながら旅は続きました。
城に近づくにつれ影が襲ってくる回数は増えていきました。
けれど、みんなで力を合わせて戦い、負けることはありませんでした。
そんな旅の途中。
大きな大きな洞窟の中に、見たこともないほど鮮やかな色をしたヤモリがいました。
ヤモリはニッコリ笑って言うのです、お前たちが守りたいものはなんだい。
そして、ホロホロ泣いて見せるのです、歪みとはなんなのか。
世界を救うという真実をその時初めて理解しました。
それはベマやリュー、ノサも、オードリーも歪んだ世界の中での存在であり、その存在がつまり歪みそのものであるということ。
それを戻すという行為がそれを消滅させるということ。
リューは言います。
シンがしようとしていることは救済ではなく破壊であると。
今この時を生きている者たちからすべてを奪おうとしているのだと。
ノサがいいます。
このままでも世界はいずれ滅びてしまう。
だから今、本来の姿に戻すべきだと。
リューは揺るぎない目で言いました。
今までの自分たちが誤ったものだとは認めない。
自分が存在してはならないものだったなんて認めたくない。
そして、オードリーが言いました。
今でなくても良いのではないないか、と。
いずれ壊れる時が来るというならそうなる寸前までは。これが偽りの平和でも、その中で生きていけるのだから、と。
ベマが静かに言いました。
大丈夫だよ。過去は過去だよ。
そんなものにとらわれて、失うことを恐れても何も生まれてこない。
失っているものがあるのを横目で見ながら気付かないフリをしているだけ。
未来は分からない。だからこそ、すべてを失うとは限らない。
大丈夫よ、消えたりしない。
氷山の頂上にそのお城はありました。
生き物の息などまったく聴こえない、時さえも凍りついてしまったかのようなその場所へ、ゆっくりと近づいていきます。
あれほど恐れていた城だったのに、もう今は何も怖くありません。
「僕は救世主なんかじゃない。破壊者なんだ。それでも僕は、みんなを守る」
たどりついた封印の泉。
シンが躊躇うことはありませんでした。
そっと、邂逅の舞を舞ったのでした。
そして――――
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………世……界は…………まっ……くら…………………………
それまで、ケンカすらしたことの無かったシンが勝てるわけもありません。
でもそんなシンを助けてくれる者がありました。
ベマと名乗る少女。
彼女はあっという間にその影を蹴散らしてしまったのです。
そしてシンを心配し、ケガの手当までしてくれました。
家を出てずっと独りだったシンは、久し振りに感じた優しさに思わず泣き出してしまいました。
そしてその理由を話すとベマは大丈夫と言って、シンの手を取りある場所に連れて行ってくれました。
連れて行ってもらった先には、ベマの友達がいました。
リュー。
オードリー。
ノサ。
みんなシンやベマの話を聞いて協力してくれると言ってくれました。
もう一人ぼっちじゃないシンは仲間を守るため強くなろうと決意しました。
みんなに戦い方を教わりながら旅は続きました。
城に近づくにつれ影が襲ってくる回数は増えていきました。
けれど、みんなで力を合わせて戦い、負けることはありませんでした。
そんな旅の途中。
大きな大きな洞窟の中に、見たこともないほど鮮やかな色をしたヤモリがいました。
ヤモリはニッコリ笑って言うのです、お前たちが守りたいものはなんだい。
そして、ホロホロ泣いて見せるのです、歪みとはなんなのか。
世界を救うという真実をその時初めて理解しました。
それはベマやリュー、ノサも、オードリーも歪んだ世界の中での存在であり、その存在がつまり歪みそのものであるということ。
それを戻すという行為がそれを消滅させるということ。
リューは言います。
シンがしようとしていることは救済ではなく破壊であると。
今この時を生きている者たちからすべてを奪おうとしているのだと。
ノサがいいます。
このままでも世界はいずれ滅びてしまう。
だから今、本来の姿に戻すべきだと。
リューは揺るぎない目で言いました。
今までの自分たちが誤ったものだとは認めない。
自分が存在してはならないものだったなんて認めたくない。
そして、オードリーが言いました。
今でなくても良いのではないないか、と。
いずれ壊れる時が来るというならそうなる寸前までは。これが偽りの平和でも、その中で生きていけるのだから、と。
ベマが静かに言いました。
大丈夫だよ。過去は過去だよ。
そんなものにとらわれて、失うことを恐れても何も生まれてこない。
失っているものがあるのを横目で見ながら気付かないフリをしているだけ。
未来は分からない。だからこそ、すべてを失うとは限らない。
大丈夫よ、消えたりしない。
氷山の頂上にそのお城はありました。
生き物の息などまったく聴こえない、時さえも凍りついてしまったかのようなその場所へ、ゆっくりと近づいていきます。
あれほど恐れていた城だったのに、もう今は何も怖くありません。
「僕は救世主なんかじゃない。破壊者なんだ。それでも僕は、みんなを守る」
たどりついた封印の泉。
シンが躊躇うことはありませんでした。
そっと、邂逅の舞を舞ったのでした。
そして――――
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………世……界は…………まっ……くら…………………………
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