げに美しきその心

コロンパン

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5章

夜会再び

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「父上が、また夜会を開くらしい。」

レイフォードが唐突に、食事中にシルヴィアにそう告げる。

最近、レイフォードが食事を共にする事が多くなった。

以前のように外に出掛けなくなり、
部屋で取っていた食事を、シルヴィアが食べる時間に合わせて食堂へ来るようになった。

ソニアは
「・・・あからさま過ぎるだろう。」
とぼやいていたが、
シルヴィアとしては、レイフォードと食事が出来るのは、凄く嬉しい。

嬉しいが、何を話したらいいか分からない。
大概が何も話すことなく、食事をするだけ。
食事をしている間、レイフォードがじっとシルヴィアを見る。

食べている所を見られるのはとても恥ずかしい。
基本的に俯きながらの食事となり、
終始無言のまま終わる。

しかし今日は、レイフォードがシルヴィアにそう告げる。

「夜会、ですか?」

レイフォードが頷く。

「ああ、俺の病気からの復帰祝いのような物だな。」

シルヴィアは顔を綻ばせる。

「まあ、それは素晴らしい事ですね。」

レイフォードが口籠りながらシルヴィアに話す。

「その、父上がお前も招待するようにとの事だ。」

シルヴィアは戸惑いがちに聞き返す。

「私も、ですか?」

「お前が良ければだが・・・。」

シルヴィアは少し考えてから、控えめに頷く。
それにほっとした顔を見せるレイフォードが、切り出す。

「そうか!・・・2週間後だが、エスコートは。」

「はい、またお兄様に確認致します。」

前に言われた事を忘れてはいない、シルヴィアはそう思い、
レイフォードにそう告げたが、

「・・・・・・・分かった。」

長い沈黙の後、渋い表情でレイフォードが口を開いた。
そしてそのまま、ふらふらとゴードンを連れて、
食堂を退出してしまったレイフォードに
シルヴィアは軽く混乱した。

「え!?旦那様!?
私、また何か粗相を?」

シルヴィアの後ろに居たソニアがは笑いを堪えるのに必死である。

「ふ、ふぐっ。だい、じょうぶですよ、シルヴィア様。
自分で、自分の首を絞めているだけですから。
ふふふふ。」

「ちょっと、ソニア笑いすぎよ。
私にならまだしも、旦那様にそんな態度を取るのは不敬よ?」

未だ肩を震わせ笑うソニアを諫める。

「ふふふ。申し訳ありません。
余りにも可笑しくて。ふふふ。
・・・よし、もう大丈夫です。」

漸く治まったソニアは姿勢を正す。

「全くもう。
あら、こうしてはいられないわ。
お兄様にまたエスコートのお願いしなくちゃ。」

シルヴィアは立ち上がり、自室へ戻る。
机に向かい、筆を執る。

そして肝心な事に気が付く。

「ああ!私、夜会に着ていくドレスが一着も無いわ!!」

痩せて今クローゼットにあるドレスが全てサイズが大きくなり、
今のサイズのドレスが無い事に焦るシルヴィア。

普段着のドレスは、以前のドレスを手直しして着ているが、
夜会のドレスとなると、新しいドレスを仕立てないとならない。

2週間では到底間に合わない。

「どうしよう・・・。街まで買いに行かないといけないわね。」

悩んでいるシルヴィアの肩に手を添える。

「シルヴィア様、心配要りませんよ。」

「え?」

ソニアへ顔を向ける。

「以前ミシェル様がいらっしゃった際に、夜会用のドレスを頂いております。
サイズもぴったりかと思います。
私と二人でデザインを勝手に決めさせて頂いたので、
シルヴィア様、一度確認していただけませんでしょうか。」

ミシェルはソニアにシルヴィアのサイズを聞き、
夜会のドレスが必要になるであろうと、予め仕立てていた。
ソニアも、シルヴィアがどの位痩せて、体型が安定するサイズを予測した上での
最終的なサイズをミシェルに伝えた。

「ソニア、ありがとう・・。ミシェルにもお礼のお手紙を書かないと。
貴女達の選んだドレスなら、きっと素敵な物に違いないわ!
うふふ。夜会がとても楽しみね!」

嬉しそうにミシェルへの手紙を書きながら、夜会への思いを馳せる。

(今回はレイフォード様の正装姿を、ちゃんと拝見出来たらいいな。)






今回の夜会のエスコートは、何故かジュードが務めるとの返事が返って来た。



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