ああ、もう

コロンパン

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そんな事って

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目の前の光景は一体どういう事なのでしょう。
コーデリア様がお二人なんて、私は夢でも見ているのでしょうか?

私は交互にコーデリア様を見比べます。

ああ、でもよく見ると、少し違っている様な気もしてきました。
私の気のせいでないならば、恐らくは。

「お二人は、双子、でしょうか?」

二人は満面の笑みを私に浮かべます。

「「正解!!」」

声もぴたりと揃って、本当に双子なのだと感心しました。
ただ、

「コ、コーデリア様は・・・。」

すると左の方が前に歩み寄り、

「コーデリアは私。」

そう仰いました。
ですが、私には違和感がありました。
どんな違和感かと聞かれたら、どう答えれば良いのか分かりません。
それでも何か、違う気がしてならないのです。

「あ、あの・・・。私がいつもお会いしていたのは、貴女ではなく、こちらの方だと思うのです。」

私は右側の女性に近づき、自分が感じた思いを伝えました。
すると、お二人はとても驚いた様子で、瞳を大きく見開かれます。

そして右側の女性は目を細め、頬が心なしか赤く染まったのです。

「嬉しいな、アイリ様。ちゃんと見てくれていたのですね。」

私の手を取って嬉しそうに笑われました。
ああ、やはりこの方がコーデリア様だわ。
けれど、先程コーデリア様は左の方だと仰っていたわ。
どういう事なのでしょうか。

お二人はお互いを見合わせ、私がコーデリア様と思われた方が申し訳なさそうな表情になりました。

「アイリ様、本当にごめんなさい。」

私に謝罪すると、徐にご自分の髪の毛に手をやると。
さらり。

私はまた目の前の光景に驚愕するのです。


「リ、リア様・・・、か、髪が・・・。」

コーデリア様ではないその人に、驚きの余りリア様と呼んでしまう位の衝撃でした。
その方の手に持つのは、髪です。コーデリア様の長い髪。
そして、今彼女の髪は短く、コーデリア様とは違う色で。
短い、いえ短過ぎる彼女の髪を、もう呆然と見ているだけの私に彼女は苦笑しました。



「私、いいや、僕はコーデリアの双子の兄、なんだ。」

コーデリア様の、双子の
私の思考が追い付きません。


「アイリ様をずっと騙していた事、そのせいでアイリ様に辛い思いをさせていた事、本当に申し訳ありません。
謝って済む問題じゃない事も重々に承知しています。
ですが、アイリ様にお伝えした事は嘘偽りは御座いません。
貴女とずっとお話がしたかった、貴女と親しくなりたかった。
勝手な事をと思われるでしょうが、それだけは信じて欲しいのです。」

真剣な眼差しで言い募る彼を見て、少し落ち着いてきました。
騙したと彼は言っていましたが、それによる怒りは沸いて来ず、それでも少し悲しい気持ちはありましたが、ずっと一人で居た私を気に掛けてくれた彼を、私を知ろうとしてくれた彼を、私はもう大切なお友達と思っているのです。

「許さなくても構いません。
もう二度と顔を見たくなければ、此処を去ります。
本当に申し訳ありませんでした。」

更に謝罪を重ね、腰を深く折る彼の肩にそっと触れると、勢い良く顔を上げた彼の瞳とぶつかります。
少し潤んだその瞳。
私は首を横に振りました。

「もう、謝らないで下さい。」

彼の顔が辛そうに歪みます。
ああ、違うの。そうじゃないの。
私は言葉を重ねます。

「私は怒ってなどいませんから、そんな辛そうな顔をなさらないで?
確かに悲しい気持ちになった時はありましたが、でも貴方がお友達になってくれた事は本当に嬉しく思っているの。
お友達と過ごす時間があんなに楽しいと教えてくれた貴方を許さないなんて思わないわ。」

彼はとても、とても大きく瞳を見開いて、私をじっと見つめています。

「だから、此処を去るなんて言わないで?」

私の大切なお友達。
自分の気持ちが伝わる様にと、私は笑ってみせました。

「アイリ様、貴女って人は本当に・・・。」

彼は何故かまた瞳が潤み、頬が少しばかり赤くなっていました。

「だろう?彼女は本当に罪深い。」

後ろから聞こえる殿下の低い声。

私は何が悪かったのか、後ろを振り返り殿下を見つめます。
殿下は腕を組み、冷ややかな瞳で私を通り越した彼を睨み付けている様でした。

「アイリーン、コイツが幾らこんな格好をしているからと言って、男である事には変わりない。
気安く触れる事は感心しないな。」

・・・そうでした。
コーデリア様だと思われた方は男性で、殿下の前で体を触れてしまったのに気が付き、慌てて手を離しました。

「・・・申し訳ございません。」

謝るしか出来ない私。
肩に触れられた感触。
見れば、彼が横に立ち、コーデリア様と同じ花の様な笑顔でそう仰ったのです。


「いや、アイリ様は何も悪くないですよ。全ての原因は殿下にあるのだから、これは自業自得ですし。」


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