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私は覚悟の時なのです。
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「せ、清廉潔白!!この人が?
アイリ様、とても面白い事を仰るのですね。」
私は面白い事は何も言ってないつもりなのですが。
至って真面目な意見を言いました。
言ったつもりなのです。
ですが、コーデリア様はお腹を抱えたまま、床に蹲ります。
はしたないですよ、と注意をすれば良いのでしょうか?
殿下の腕に触れたままの私は一度殿下を窺うと。
ああ、またコーデリア様を憎しみの表情で睨んでいらっしゃる・・・。
これは大変です。
早くコーデリア様に伝えないと。
「リア様、も、もうそれ位に・・・!?」
コーデリア様へ近付こうとしたのですが、前に足が進みません。
何かに掴まれて・・・殿下に腕を掴まれていました。
「アイリーン、放っておけ。」
憮然とした態度で殿下が仰ります。
殿下に掴まれた腕が熱く感じます。
おかしいわ。
殿下がこの様に近くに居られるのが、非日常過ぎて、私の心の中で処理が追いつきません。
諦めたくない、諦めなければならない、葛藤が渦巻く心境を嘲笑うかの如く、殿下は私の腕を繋ぎ止めます。
何故、こんな事をなさるの?
私の事がお嫌いなのでしょう?
婚約を解消をなされば、理に反する事無く、真に思う方と一緒になれるでしょう?
そうよ、今は私と婚約を結んでいるから、公にコーデリア様と結ばれることは出来ない。
私との婚約には愛情は無い。
けれど、真摯な殿下は仮初めの婚約者の私を慮って、御自分の恋情をお隠しになられているのだわ。
私がずっと殿下の枷になっているのです。
早く解放して差し上げなくては。
「アイリーン、何を考えている?」
私が思い悩んでいると、殿下からお声を掛けられました。
お伝えするのです。
今、お二人がいらっしゃる内に。
私は真正面に殿下を見据える様に向き直ります。
「殿下、私は殿下が道を外れる行いを為さると思ってはおりません。
殿下の意に私は従います。」
「アイリーン、何を?」
「・・・解消を。」
胸が、
胸が張り裂けそう。
唇を噛み締め、拳を握る。
「婚約を解消なさるのなら、私はそれに従います。」
「な・・・・。」
殿下の力が抜け、私の腕が自由になりました。
私はコーデリア様の元へ跪き、彼女の手を握ります。
先程まで笑っていたコーデリア様も、呆然としています。
彼女も殿下と一緒になりたかった筈。
きっと、喜んでくれる。
「リア様、私は貴女と殿下の仲を裂こうとは思っていませんわ。
ですから、私の事は遠慮せずに殿下と・・・「ちょ!ちょっと待って!」
私が言い終わる前に、コーデリア様が大きな声言葉を被せて来られました。
何故か真っ青なお顔のコーデリア様。
どうしたと言うのでしょう。
「ア、アイリ様、さっきの話の流れ分かってますか!?
殿下は婚約者であるアイリ様がいるのに、そんな真似しないって言ってましたよね!?」
私は頷きます。
「ええ、分かっています。
定められた婚約者の私が居る以上、コーデリア様と関係を持つ事は不道徳です。
ですから、私との婚約を解消すれば、殿下とコーデリア様は晴れて恋仲になる事が出来ます。
殿下は順を追って事を対処為さろうとしていたのでしょう?」
「さ、定められた・・・?」
後ろから殿下の声が聞こえてきます。
その声は何故か虚ろ、と言って良いのでしょうか、いつもの殿下の威厳のあるお声ではありませんでした。
殿下の方へ気が逸れましたが、直ぐに目の前のコーデリア様へ意識を向けると、コーデリア様も何やら顔を両手で覆い、うわ言の様に言葉を発せられておりました。
「・・・分かってない、分かってないよ。アイリ様・・・。
いや、これは殿下が悪い。
何にも言ってない殿下が悪いんだ。
ホント、意気地がない殿下が悪い。」
少しばかり拾えた言葉は、殿下が悪いと言う言葉だけ。
私もまたヒヤリと背筋が冷えました。
コーデリア様は混乱されているのかしら。
もうずっと不敬なお言葉を口にされているのです。
コーデリア様の言葉、殿下に聞こえていません様に、と後ろを振り返りました。
私は悲鳴が上がりそうになるのを、どうにか飲み込む事が出来ました。
いつの間にか殿下が真後ろに立っていらしたのです。
幽鬼の様な表情で、私を見下ろしていました。
尋常ではない事態で、私は恐ろしくて殿下から目を逸らす事が出来ませんでした。
殿下は自分の身を屈め、私の顔へお顔を近づけ、一言告げられます。
「絶対にしない。」
アイリ様、とても面白い事を仰るのですね。」
私は面白い事は何も言ってないつもりなのですが。
至って真面目な意見を言いました。
言ったつもりなのです。
ですが、コーデリア様はお腹を抱えたまま、床に蹲ります。
はしたないですよ、と注意をすれば良いのでしょうか?
殿下の腕に触れたままの私は一度殿下を窺うと。
ああ、またコーデリア様を憎しみの表情で睨んでいらっしゃる・・・。
これは大変です。
早くコーデリア様に伝えないと。
「リア様、も、もうそれ位に・・・!?」
コーデリア様へ近付こうとしたのですが、前に足が進みません。
何かに掴まれて・・・殿下に腕を掴まれていました。
「アイリーン、放っておけ。」
憮然とした態度で殿下が仰ります。
殿下に掴まれた腕が熱く感じます。
おかしいわ。
殿下がこの様に近くに居られるのが、非日常過ぎて、私の心の中で処理が追いつきません。
諦めたくない、諦めなければならない、葛藤が渦巻く心境を嘲笑うかの如く、殿下は私の腕を繋ぎ止めます。
何故、こんな事をなさるの?
私の事がお嫌いなのでしょう?
婚約を解消をなされば、理に反する事無く、真に思う方と一緒になれるでしょう?
そうよ、今は私と婚約を結んでいるから、公にコーデリア様と結ばれることは出来ない。
私との婚約には愛情は無い。
けれど、真摯な殿下は仮初めの婚約者の私を慮って、御自分の恋情をお隠しになられているのだわ。
私がずっと殿下の枷になっているのです。
早く解放して差し上げなくては。
「アイリーン、何を考えている?」
私が思い悩んでいると、殿下からお声を掛けられました。
お伝えするのです。
今、お二人がいらっしゃる内に。
私は真正面に殿下を見据える様に向き直ります。
「殿下、私は殿下が道を外れる行いを為さると思ってはおりません。
殿下の意に私は従います。」
「アイリーン、何を?」
「・・・解消を。」
胸が、
胸が張り裂けそう。
唇を噛み締め、拳を握る。
「婚約を解消なさるのなら、私はそれに従います。」
「な・・・・。」
殿下の力が抜け、私の腕が自由になりました。
私はコーデリア様の元へ跪き、彼女の手を握ります。
先程まで笑っていたコーデリア様も、呆然としています。
彼女も殿下と一緒になりたかった筈。
きっと、喜んでくれる。
「リア様、私は貴女と殿下の仲を裂こうとは思っていませんわ。
ですから、私の事は遠慮せずに殿下と・・・「ちょ!ちょっと待って!」
私が言い終わる前に、コーデリア様が大きな声言葉を被せて来られました。
何故か真っ青なお顔のコーデリア様。
どうしたと言うのでしょう。
「ア、アイリ様、さっきの話の流れ分かってますか!?
殿下は婚約者であるアイリ様がいるのに、そんな真似しないって言ってましたよね!?」
私は頷きます。
「ええ、分かっています。
定められた婚約者の私が居る以上、コーデリア様と関係を持つ事は不道徳です。
ですから、私との婚約を解消すれば、殿下とコーデリア様は晴れて恋仲になる事が出来ます。
殿下は順を追って事を対処為さろうとしていたのでしょう?」
「さ、定められた・・・?」
後ろから殿下の声が聞こえてきます。
その声は何故か虚ろ、と言って良いのでしょうか、いつもの殿下の威厳のあるお声ではありませんでした。
殿下の方へ気が逸れましたが、直ぐに目の前のコーデリア様へ意識を向けると、コーデリア様も何やら顔を両手で覆い、うわ言の様に言葉を発せられておりました。
「・・・分かってない、分かってないよ。アイリ様・・・。
いや、これは殿下が悪い。
何にも言ってない殿下が悪いんだ。
ホント、意気地がない殿下が悪い。」
少しばかり拾えた言葉は、殿下が悪いと言う言葉だけ。
私もまたヒヤリと背筋が冷えました。
コーデリア様は混乱されているのかしら。
もうずっと不敬なお言葉を口にされているのです。
コーデリア様の言葉、殿下に聞こえていません様に、と後ろを振り返りました。
私は悲鳴が上がりそうになるのを、どうにか飲み込む事が出来ました。
いつの間にか殿下が真後ろに立っていらしたのです。
幽鬼の様な表情で、私を見下ろしていました。
尋常ではない事態で、私は恐ろしくて殿下から目を逸らす事が出来ませんでした。
殿下は自分の身を屈め、私の顔へお顔を近づけ、一言告げられます。
「絶対にしない。」
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