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私のチートを今こそ使うであります!!

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「さて、と。」

私は歩き出し、先程助けたハンターさんの元へ。
私が自分に近づいていると分かると、ハンターさんは見るからに動揺する。

本当に解せぬ。
別に攻撃するつもりなんて無いのに、そんなに怯えなくても良いじゃないか。

「あの~。」

私は出来るだけ穏やかに声を掛ける。

「ひ、は、はいいいい!!」

いや、明らか私の方が年下だからね?

「・・・・ここにデイヴィッドさんというハンターさんも居る筈なのですが、何処に居るか分かりますか?」

少しの間を空け、尋ねる。

「デ、デイヴィッド、ですか・・・。
え、ええと・・・・。」

だから・・・、私にそんなへりくだらなくても。

「デイヴィッドと恐らくマルティナっていう女が来てた筈なんだ。」

「女・・・?」

セイさんよ。それは初耳だよ?
私がセイさんに顔だけ向けると、マズいと思ったのか、顔色が一気に青くなった。

「い、いや!マルティナは、違うぞ!
ミリアムさんが思っている様な事にはならないから!!」

「私は何も言ってもいないし、思ってもいないですが?」

私の言葉にセイさんの顔が青から白に変わっていく。
何だ?その慌て様は。
疑えと言っているのかね?

「ああ!!そう言えば!!」

ピリついた空気を裂くようにハンターさんが声を上げる。

「その、マルティナ、だと思うが、女性のハンターが負傷したんだ。
それに付き添うように男のハンターが此処から離脱したぞ。」

「マルティナが!?」

セイさんがハンターさんに詰め寄る。

「あ、ああ。エンペラードラゴンの尾がまともに当たって、吹っ飛ばされて・・・。」

「アイツが、そんなヘマをするなんて・・・。」

俯き、呟くセイさん。

「それはどれ位前のお話ですか?」

私も努めて穏やかに尋ねる。


何故だ。
何故、私が尋ねると君は顔が引き攣っているんだ、ハンター君。

「あ、あ、あの半日前位であります!」

「何処へ向かったか、は?」

「臨時の救護施設だと思われます!!」

びしりと姿勢を正して答えるハンターさん。
上官に答える様な態度だ。

「その救護施設はどちらに?」

「は!ご案内致します。」

敬礼までし始める始末。
もう、いいや。

「ありがとうございます。
では、行きましょうか、セイさん。」

声を掛けるが、セイさんは俯いたままだ。

「セイさん?」

「!!あ、ああ。」

もう一度声を掛けるとセイさんはハッとした様に返事を返す。
でも、顔は上げない。

「お知り合いなんですか?」

ふむ、もしかしたらセイさんの親しい人なのかもしれない。
その人が怪我をした、しかもドラゴンの攻撃で。
心配するのは当たり前だ。

「セイさん、そのマルティナさんでしたか?怪我をしているのなら、私がどうにか出来るかもしれないです。」

「!?」

やっと顔を上げたセイさんは私を見る。
私はセイさんの耳元で囁く。

「私が誰だか分かりますか?」

「ミリアムさん・・・。」

私は穏やかな笑みを浮かべる。
周りの空気が冷えたとしてもそんなのは知らない。
私は穏やかに微笑んだのだ。
誰が何と言おうともな。

「オールラウンダーのチートなんですよ?これを使う手は無いでしょう。」

「そうか!アンタは全属性の魔法が使えるんだった!!」

「そうです。救護施設で治療してくれていたらアレなんですが、臨時と言っていたので応急手当だけなら、私がお役に立てるかもしれませんしね。」

回復魔法も実は試してみた。
流石チート。
此処で言うのも憚られるが、自傷した傷も立ちどころに完治できた。

念には念を。
万が一デイヴィッドさんが負傷していた事を考えて、何処まで完治するかも実証済みだ。

重傷レベルも大丈夫。

「済まない。マルティナを、マルティナを頼む!!」

セイさんの懇願に私は大きく頷く。

「勿論ですよ。さあ、急ぎましょう。」

「ああ!!」

ハンターさんの案内の元、現場を後にする。





二度ある事は三度ある事は私はもう悟っているのだ。



ええ、期待しませんとも。

そこにデイヴィッドさんが居る確率が低い事も承知でマルティナさんが居る救護施設へ向かうのだった。

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