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強くなったな、アリス。
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「いや!行かない!!」
アリスは私のお願いをきっぱりと拒絶する。
「どうしても、駄目?」
アリスが私の顔に弱い事を知りつつ、上目遣いで懇願する。
アリスは歯を食いしばり、何かと必死に抵抗している。
「ふぎぎぎぎぎぎ。そんな顔しても、嫌ったら嫌!い~や~!!」
「ホント、途中まででもいいから、ね?」
ブンブンと首を横に振るアリスに私は更に小首を傾げてみせる。
アリスは唇を噛み締めて、更には自らの腕のお肉を反対側の手で抓り始める。
「ぐううううう。此処でミリアムを甘やかしても碌な事が無い!
私は断固として拒否する!!」
くそう。落ちなかったか。
ううむ。
「分かった・・・。心細いけど、一人で行くよ。」
お願いしたのは、銀華さんの許可を得る為に学園長室に一緒に行って欲しいという事。
アリスはファーストインプレッションが芳しくなかったので、セラフィナさんを極力避けている。
この間の撮影会の時も、セラフィナさんの視界に入らないように動いていたのは知っている。
もう向こうは気にしていないのに、アリスもそんなに逃げ回らなくても大丈夫なのにな。
「ううむ。セラフィナさん、許可してくれるかなぁ。」
ポツリと呟く。
「こればっかりは、分からないわね。
ドラゴンが学園に通うなんて聞いた事が無いし。」
「だよねぇ。でも銀華さん、気性が荒いドラゴンじゃないし、主食は果物とか木の実とかだから、人間を食うとかしないのになぁ。」
そうなのだ。昨日の夕食時に銀華さんに確認した。
もし、人間を食べる種ならば、やはり一緒に生活する際に、不都合が生じそうだと。
そうすると銀華さんは少し怒りながら言った。
「そこらの物共と一緒にするでないと言うておろうに。
妾はそんな物、食さんわ。」
「あ、そうなんですか?」
「そうじゃ。妾は、こういった大地の恵みを少しばかり拝借する程で事足りる。」
そう言いながら、テーブルにあった葡萄を一粒口に含む。
すると、目がキラッキラに輝いた銀華さんは、ひょいぱく、ひょいぱくと次々に葡萄を放り込む。
余程葡萄がお気に召したようで、
「妾は当分の間、これが良い。」
と葡萄を指差した。
量も常識の範囲内の一食3房程度。
あの巨体を葡萄で補えるのが凄い。
なので、今朝も葡萄を食べていた。
一回、葡萄を噴き出して、その粒がレガートさんの脇腹に当たって、吹っ飛んでたけど。
「葡萄好きのドラゴンっていうのも面白いわね。」
アリスは少し笑う。
ヒロインの微笑み頂きました。
今日も一日、これで生きていけます。
「銀華さんにはアリスを紹介するって言ったから、学園に通えるようになったら紹介するね。」
「う、うん。ちょっと怖いけど、ミリアムと一緒に居るんだったら、遅かれ早かれ知り合う事になるもんね。」
「銀華さん、すんごい美しいから怖くないよ。」
美ドラゴンだからな。
「さて、と。学園長室に行って来るよ。」
「うん、行ってらっしゃい。」
アリスと別れ、学園長室へ。
はぁ、緊張する。
ノック3回。
「は~い、どうぞ~。」
セラフィナさんの色っぽい返事。
この人も美女だからな。
「失礼します。」
そう言って入室。
セラフィナさんは目の前のソファに足を組んで座り、何か小難しそうな本を読んでいた。
セラフィナさんは本を閉じて、私に顔を向ける。
「どうしたの?ミリアムちゃん。」
足を組み直し、ニコリと私に笑いかける。
所作の一つ一つが大人の色気ムンムンである。
おかしいな。多分前世の私より年下な筈なのに、この色気よ。
『結愛は色気出そうとしてないじゃん。』
うるへぇ!元々無いものをどうやって出すんだよ!!
夫の幻聴が聞こえてくる。
とうとう耳までやられたか。
女として(そもそも私は自分が女であるという認識はあるのかが些か不明である)色々負けた気になるが、持ち前の開き直りで乗り切る。
(セラフィナさんはエロスだけど、変顔とか出来まい。私は出来る。)
等という別に勝っても嬉しくない勝負を脳内で挑み、勝手に勝った気でいたら、セラフィナさんが再度私に声を掛ける。
「ミリアムちゃん?おーい。」
「はっ!!??」
「どうしたの?心此処にあらずって感じよ?
体調でも悪いの?」
くだらない妄想をしていただけなのに、心配してくれて、とても心苦しい。
「大丈夫です。意識が散歩してました。」
「そう?で、此処に来た用件は何かしら?」
私の意味不明な発言もサラリとスルーする辺り、大人である。
「はい、実はこの学園に通いたいと言う方が居るのですが。」
「ああ、エンシャントドラゴン様よね?」
「ぬん!?」
また変な声が出てしまった。
セラフィナさんはクスクスと笑い出す。
「もう、やだぁ!ミリアムちゃん、曲がりなりにも貴族のご令嬢なんだから、そんな面白い声出しちゃ駄目よ?」
軽く窘められるが、私はそれよりも何故この人が銀華さんの事を知っているのかが気になった。
私の顔が少し動揺したのであろうセラフィナさんは妖艶な笑みで私の心を見透かした様に話す。
「どうして、エンシャントドラゴンさんの事を知っているか、不思議?」
「そうですね。教えて欲しいです。」
素直に言う。
「良い子ね。」
褒められたけど、何とも複雑な気持ち。
そして、セラフィナさんおもむろに自分の髪の毛を掻き上げる。
おお!何だ、何だ。
テンプテーションか!?
状態異常無効の装備を持ってないぞ!
くるくる回っちゃう!!
「ミリアムちゃんなら、これで分かると思うんだけど。」
そう言ったセラフィナさんの耳は縦に長かった。
・・・・・・・ああ!!!!
アリスは私のお願いをきっぱりと拒絶する。
「どうしても、駄目?」
アリスが私の顔に弱い事を知りつつ、上目遣いで懇願する。
アリスは歯を食いしばり、何かと必死に抵抗している。
「ふぎぎぎぎぎぎ。そんな顔しても、嫌ったら嫌!い~や~!!」
「ホント、途中まででもいいから、ね?」
ブンブンと首を横に振るアリスに私は更に小首を傾げてみせる。
アリスは唇を噛み締めて、更には自らの腕のお肉を反対側の手で抓り始める。
「ぐううううう。此処でミリアムを甘やかしても碌な事が無い!
私は断固として拒否する!!」
くそう。落ちなかったか。
ううむ。
「分かった・・・。心細いけど、一人で行くよ。」
お願いしたのは、銀華さんの許可を得る為に学園長室に一緒に行って欲しいという事。
アリスはファーストインプレッションが芳しくなかったので、セラフィナさんを極力避けている。
この間の撮影会の時も、セラフィナさんの視界に入らないように動いていたのは知っている。
もう向こうは気にしていないのに、アリスもそんなに逃げ回らなくても大丈夫なのにな。
「ううむ。セラフィナさん、許可してくれるかなぁ。」
ポツリと呟く。
「こればっかりは、分からないわね。
ドラゴンが学園に通うなんて聞いた事が無いし。」
「だよねぇ。でも銀華さん、気性が荒いドラゴンじゃないし、主食は果物とか木の実とかだから、人間を食うとかしないのになぁ。」
そうなのだ。昨日の夕食時に銀華さんに確認した。
もし、人間を食べる種ならば、やはり一緒に生活する際に、不都合が生じそうだと。
そうすると銀華さんは少し怒りながら言った。
「そこらの物共と一緒にするでないと言うておろうに。
妾はそんな物、食さんわ。」
「あ、そうなんですか?」
「そうじゃ。妾は、こういった大地の恵みを少しばかり拝借する程で事足りる。」
そう言いながら、テーブルにあった葡萄を一粒口に含む。
すると、目がキラッキラに輝いた銀華さんは、ひょいぱく、ひょいぱくと次々に葡萄を放り込む。
余程葡萄がお気に召したようで、
「妾は当分の間、これが良い。」
と葡萄を指差した。
量も常識の範囲内の一食3房程度。
あの巨体を葡萄で補えるのが凄い。
なので、今朝も葡萄を食べていた。
一回、葡萄を噴き出して、その粒がレガートさんの脇腹に当たって、吹っ飛んでたけど。
「葡萄好きのドラゴンっていうのも面白いわね。」
アリスは少し笑う。
ヒロインの微笑み頂きました。
今日も一日、これで生きていけます。
「銀華さんにはアリスを紹介するって言ったから、学園に通えるようになったら紹介するね。」
「う、うん。ちょっと怖いけど、ミリアムと一緒に居るんだったら、遅かれ早かれ知り合う事になるもんね。」
「銀華さん、すんごい美しいから怖くないよ。」
美ドラゴンだからな。
「さて、と。学園長室に行って来るよ。」
「うん、行ってらっしゃい。」
アリスと別れ、学園長室へ。
はぁ、緊張する。
ノック3回。
「は~い、どうぞ~。」
セラフィナさんの色っぽい返事。
この人も美女だからな。
「失礼します。」
そう言って入室。
セラフィナさんは目の前のソファに足を組んで座り、何か小難しそうな本を読んでいた。
セラフィナさんは本を閉じて、私に顔を向ける。
「どうしたの?ミリアムちゃん。」
足を組み直し、ニコリと私に笑いかける。
所作の一つ一つが大人の色気ムンムンである。
おかしいな。多分前世の私より年下な筈なのに、この色気よ。
『結愛は色気出そうとしてないじゃん。』
うるへぇ!元々無いものをどうやって出すんだよ!!
夫の幻聴が聞こえてくる。
とうとう耳までやられたか。
女として(そもそも私は自分が女であるという認識はあるのかが些か不明である)色々負けた気になるが、持ち前の開き直りで乗り切る。
(セラフィナさんはエロスだけど、変顔とか出来まい。私は出来る。)
等という別に勝っても嬉しくない勝負を脳内で挑み、勝手に勝った気でいたら、セラフィナさんが再度私に声を掛ける。
「ミリアムちゃん?おーい。」
「はっ!!??」
「どうしたの?心此処にあらずって感じよ?
体調でも悪いの?」
くだらない妄想をしていただけなのに、心配してくれて、とても心苦しい。
「大丈夫です。意識が散歩してました。」
「そう?で、此処に来た用件は何かしら?」
私の意味不明な発言もサラリとスルーする辺り、大人である。
「はい、実はこの学園に通いたいと言う方が居るのですが。」
「ああ、エンシャントドラゴン様よね?」
「ぬん!?」
また変な声が出てしまった。
セラフィナさんはクスクスと笑い出す。
「もう、やだぁ!ミリアムちゃん、曲がりなりにも貴族のご令嬢なんだから、そんな面白い声出しちゃ駄目よ?」
軽く窘められるが、私はそれよりも何故この人が銀華さんの事を知っているのかが気になった。
私の顔が少し動揺したのであろうセラフィナさんは妖艶な笑みで私の心を見透かした様に話す。
「どうして、エンシャントドラゴンさんの事を知っているか、不思議?」
「そうですね。教えて欲しいです。」
素直に言う。
「良い子ね。」
褒められたけど、何とも複雑な気持ち。
そして、セラフィナさんおもむろに自分の髪の毛を掻き上げる。
おお!何だ、何だ。
テンプテーションか!?
状態異常無効の装備を持ってないぞ!
くるくる回っちゃう!!
「ミリアムちゃんなら、これで分かると思うんだけど。」
そう言ったセラフィナさんの耳は縦に長かった。
・・・・・・・ああ!!!!
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