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ちょっとそれは予想して無かったよ

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無事に銀華さんを屋敷に招き入れる事に成功した。

部屋も気に入ってくれたようだし、後は・・・自分で言い出した学園へ通う許可を得る事だ。

「あの学園長にお願いしに行くの気が進まない。」

夕食後の談話室での部屋にて、頬杖を付きながら私は紅茶を啜る。

シュタイナーが行儀が悪いよ!と注意してくる。
そして、私の食べ散らかしたお菓子の包み紙をせっせと集めて捨てている。

前々から思ってたけど、シュタイナー。





お母さんみたいだよな。

「もう、ミリアム!食べたら、ちゃんと捨てなさい!」

「ああ、ほら、お菓子の屑が落ちてるじゃないか。」

甲斐甲斐しく私の世話をしている。
う~ん、ママン?
シュタイナーは私のママンなのか?

でも、夫も私のママン枠だからなぁ。
前世の実のママン。
夫のママン(義理の母)。
夫のママン(本人)。
に加えて今世でもママン枠が追加されてしまった。
今世のママン(シュタイナー、デイヴィッド(仮))
ママンだらけだわ!
マザコンの私には天国モードですな!!

などとつらつら考えていると、ママンいやいや、シュタイナーが腰に手を当てて怒りだした。

「聞いてる!?ミリアム!!」

「あ、はい、お母さん。」

・・・・・・・・・・・・・・・。


気まずい雰囲気が部屋を満たす。

おい、そこの人質居候?
後ろ向いて肩震わせて笑い堪えてるんじゃないよ。
もういっそ、笑ってくれよ。

「・・・ミリアム・・・。」

シュタイナーが可哀想な子を見る目で私を見る。

「やっぱり、お母さんが恋しいの?」

「は?え?」

「ジョセフ様から、聞いたんだ・・・。
ミリアムのお母様、ミリアムが子供の時に事故で亡くなったって。」

「あー、そうなんです?よ。」

やっぱりそうなのか。
事故は馬車の事故なのだろうな。

「子供の頃、ミリアムはとてもお母様の事が好きだったって聞いたから、何か考えているのはお母様の事を考えているのかなと思って・・・。」

「い、いえ、そういう訳では。」

ママンの事考えると言っても、それは前世のママンの事であって今世のママンの事本当に知らないのだよ。
というのをシュタイナーに説明出来ないし、困ったぞ。

相変わらず肩を震わせているセイさんをどうしてくれようかと、遠い目をしていると、
シュタイナーがポンと私の肩を叩き、首を横に振る。

え、何?怖い、怖い、怖い!
凄く、分かってるから感出してるけど、絶対それ、違うからね?

「いいんだ。家族の前でそんなに強がらなくてもいいんだよ?
分かってる、分かってるから。」

はい!キター!

「ちょ、違いますよ?」

全力で否定する。

「僕の事をお母様と間違えてしまうくらいだもの。
恋しいに決まってるよ。」

「ぶっはっああ!・・・あ、すんません。」

とうとう吹き出しやがった。
セイさんに悪役を彷彿とさせるメンチを切る。

セイさんは顔色が一瞬で真っ青になり、そそくさと部屋を出て行く。
笑い逃げとは、良い度胸だな。
後で覚えとけよ?

と、今はこの目の前に居る、菩薩の様な目で首を横に振り続けている兄をどうにかせねば。

「分かってるから。」

最早、それしか繰り返さずにシュタイナーも部屋を去っていった。

残されたのは、私ただ一人。
銀華さんは夜のお散歩と称して、一人で何処かへ行ってしまった。
ツッコミ不在(ツッコミ枠のセイさんは機能してくれなかった)のこの状況。

何コレ。
私スベってる事になってるよね?

前世ではあるあるネタな筈なのに。
ああ、此処にアリスか居てくれたら、と切実に思うよ。
絶対ツッコンでくれるのになぁ。

「・・・?」

よく見たら、扉に誰か居る。




レガートさんだわ。
シュタイナーと同じく菩薩みたいな眼差しで、私を見てる。
しかもウンウンと頷いてる。

うわぁ・・・、MAX苛つくわぁ・・・。

此処に居ても仕方無いから、部屋を出る。
レガートの側で立ち止まり、ミリアム史上一番低い声で呟く。

「・・・貴様、余程死にたいと見える。」

それだけ言って部屋を出た。
レガートの反応も見ずに出てやった。
扉の向こうで何か喚いていたが知るもんか。

儂はもう寝る!!
不貞寝する!!






リリィちゃんから聞いた話では、あの後青白い顔をしたレガートさんは、

「お嬢様に嫌われた、もう駄目だ・・・・。」

とかなんとかブツブツ言いながら、使用人の部屋で遺書を書いていたそうだ。
何とも大袈裟だ。




一夜明け、私は学園長にどう言おうかなと、寝ぼけながら朝ご飯を食べに食堂に向かう。

そこで私は一気に目が覚める光景を目にする。



食堂に着くと、シュタイナーの席にシュタイナーと同じ髪の色で髪の毛の長い人が座っていた。


誰だ?
周りを見ると、父も、レガートさん、リリィちゃん、セイさんも混乱している。
銀華さんだけ凄く楽しそうな顔でフルーツを口にしている。

私の気配に気が付いたのか、その黒髪の人は振り返って私の方を向いた。


「おはよう、ミリアム。よく眠れた?」

優し気な声で挨拶をするその人の声には聞き覚えがある。
聞き覚えがあるのだが、自分の脳の中で処理が追い付かない。

だって、その人は昨日まで髪の毛がもう少し短かった。
性別は男だった。

今、目の前に居るその人は、シュタイナーの声をした女の人だったのだ。

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