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売られた喧嘩は買おうじゃないか
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「ミリアム?」
アリスが不思議そうな顔をする。
いや、目の前に居る少年は本当に誰だ?
私は少年をジッと見つめる。
少年は私を睨み付けて言う。
「何、人の顔ジロジロ見てるんだよ!?」
そうだな。不躾に人を見たら駄目だな。
これは失礼な事をした。
「申し訳ありませんでした。
ご挨拶が遅れました。
私は、ミリアム・アッカーマンと申します。
此処へは私が貼りだした依頼書を見た方と会う為に参りました。」
私の自己紹介の後、面倒臭そうに少年は口を開く。
「セイ。この依頼書お前が貼り出したのか?」
テーブルの上に私の書いた依頼書を放り投げる。
口元が引き攣ったのが自分でも分かった。
「ええ、私が書きました。
セイさん、で宜しいでしょうか?
貴方はこの依頼書の内容を分かった上で此処に居らっしゃるのですか?」
大人、大人の対応。
「あ?知るかよ。俺は伝言を頼まれて此処に来ただけだよ。」
誰だよ、じゃあ、お前はよ!
「はい、では。その伝言を伺います。
どうぞ、言って下さい。」
セイと名乗る少年は、立ち上がり私の傍まで来る。
「その前に、聞きたい事がある。」
「何でしょう。」
「・・・デイヴィッドとどういう知り合いなんだ?」
デイヴィッド。
恐らくそれが、今の彼の名前なのだろう。
「・・・・遠い昔からの大切な人です。」
自分の事をセイに言うつもりも無い。
それが気に障ったのかセイは背を向け、
「デイヴィッドも同じ事を言っていた・・・。」
ぼそりと呟いた。
彼もそう思っていてくれたのか。
思わず笑みが零れる。
それに気付いたらしく、急にこちらへ振り返ったセイは、
敵意剥き出しで私に噛みつくように言う。
「俺は、認めないからな!!」
「はい?」
いきなり何を言い出したのだ、この少年は。
「お前みたいな性格の悪そうな女、デイヴィッドには相応しくない!!」
ビシッ。
部屋が軋む音がする。
アリスと、実は部屋に居たロランバルトさんが周囲を見渡す。
「ほう・・・。」
中々面白い事を言ってくれるな、コイツは。
セイは私の反応が薄かったのが、
気に食わなかった様で、私に指差す。
人様に指を差してはいけないと学ばなかったのか?
「俺はな、デイヴィッドに群がるお前の様な女を悉く排除してきたんだ。
人の良いデイヴィッドは、ハイエナみたいな女でも優しくするから、
勘違いする奴が多いんだ。
お前もそのクチだろう?
どうやって、デイヴィッドに取り入ったか知らないが、
残念だったな!
俺がお前をデイヴィッドに絶対に近寄らせないからな!!」
ビシッ!ビシッ!!!
また部屋が軋む音、いいや、違う。
私の血管が切れる音の様だ。
アリスとロランバルトさんが恐怖に慄いた表情で私を見ている。
「はぁ、まぁ、相応しくない、近寄らせない云々の話は置いておいて。
そのデイヴィッドさんは貴方に伝言を頼んでる訳ですよね?
私宛の伝言を貴方に、デイヴィッドさんが。」
「ああ、それがどうした?」
「それが、どうした?
依頼主である私に請負人のデイヴィッドさんの伝言を言わずにいるつもりですか?」
「え?」
「貴方の意気込みなんて、正直どうでもいいんですよ。
私はデイヴィッドさんの伝言が聞きたいだけであって、
貴方の主張を聞きに来た訳では無いんですよ。」
「いや、だから。」
「ロランバルトさんから私が貼り出したこの依頼書を彼は請け負うと聞きました。
貴方が伝言を言わずに帰るという事は、
この依頼を反故にするという事になります。
そうすると、デイヴィッドさんの信用問題にも関わりますよね?
貴方はデイヴィッドさんの立場を悪くする状況を作ってしまっているんです。」
「あ、」
「良いんですか?
デイヴィッドさんの評価が落ちてしまっても。
貴方が落とす事になるんですよ?」
「う、うう。」
一応依頼という形で貼り出して貰った私の手紙。
夫もそれに倣って依頼を請けると、ギルドの受付さんに話を通した。
と、ロランバルトさんが言っていた。
てっきり、夫が来ていると思っていたのに、居たのは誰だか知らない少年。
肩透かしを食らっている状態で、その少年に何故か罵られている。
一向に伝言を伝えてもくれないし、一方的に敵意を向けられる。
夫に会える楽しみで一杯だった私の気持ちを返して欲しい。
怒りの感情と言うのは中々に体力を使う。
なので、滅多な事では怒らない様にしている。
この世界に転生して、理不尽な事が多すぎて最近怒ってばかりだ。
だから、微妙にストレスも溜まっていた。
それが爆発したのだ。
セイによって。
別に私は口が達者な方では無いが、
あまりに腹が立ったので、セイが口を挟む間も無く捲し立ててやった。
少しスッとした。
横に居たアリスが私の袖の端を引っ張ってきた。
「ミリアム、ミリアム。
もうそのくらいにしてあげなよ・・・。」
「え?」
「あれ・・・。」
アリスが目配せしてくる。
その視線の先には、
目に涙を溜めているセイの姿があった。
え?なんで?
アリスが不思議そうな顔をする。
いや、目の前に居る少年は本当に誰だ?
私は少年をジッと見つめる。
少年は私を睨み付けて言う。
「何、人の顔ジロジロ見てるんだよ!?」
そうだな。不躾に人を見たら駄目だな。
これは失礼な事をした。
「申し訳ありませんでした。
ご挨拶が遅れました。
私は、ミリアム・アッカーマンと申します。
此処へは私が貼りだした依頼書を見た方と会う為に参りました。」
私の自己紹介の後、面倒臭そうに少年は口を開く。
「セイ。この依頼書お前が貼り出したのか?」
テーブルの上に私の書いた依頼書を放り投げる。
口元が引き攣ったのが自分でも分かった。
「ええ、私が書きました。
セイさん、で宜しいでしょうか?
貴方はこの依頼書の内容を分かった上で此処に居らっしゃるのですか?」
大人、大人の対応。
「あ?知るかよ。俺は伝言を頼まれて此処に来ただけだよ。」
誰だよ、じゃあ、お前はよ!
「はい、では。その伝言を伺います。
どうぞ、言って下さい。」
セイと名乗る少年は、立ち上がり私の傍まで来る。
「その前に、聞きたい事がある。」
「何でしょう。」
「・・・デイヴィッドとどういう知り合いなんだ?」
デイヴィッド。
恐らくそれが、今の彼の名前なのだろう。
「・・・・遠い昔からの大切な人です。」
自分の事をセイに言うつもりも無い。
それが気に障ったのかセイは背を向け、
「デイヴィッドも同じ事を言っていた・・・。」
ぼそりと呟いた。
彼もそう思っていてくれたのか。
思わず笑みが零れる。
それに気付いたらしく、急にこちらへ振り返ったセイは、
敵意剥き出しで私に噛みつくように言う。
「俺は、認めないからな!!」
「はい?」
いきなり何を言い出したのだ、この少年は。
「お前みたいな性格の悪そうな女、デイヴィッドには相応しくない!!」
ビシッ。
部屋が軋む音がする。
アリスと、実は部屋に居たロランバルトさんが周囲を見渡す。
「ほう・・・。」
中々面白い事を言ってくれるな、コイツは。
セイは私の反応が薄かったのが、
気に食わなかった様で、私に指差す。
人様に指を差してはいけないと学ばなかったのか?
「俺はな、デイヴィッドに群がるお前の様な女を悉く排除してきたんだ。
人の良いデイヴィッドは、ハイエナみたいな女でも優しくするから、
勘違いする奴が多いんだ。
お前もそのクチだろう?
どうやって、デイヴィッドに取り入ったか知らないが、
残念だったな!
俺がお前をデイヴィッドに絶対に近寄らせないからな!!」
ビシッ!ビシッ!!!
また部屋が軋む音、いいや、違う。
私の血管が切れる音の様だ。
アリスとロランバルトさんが恐怖に慄いた表情で私を見ている。
「はぁ、まぁ、相応しくない、近寄らせない云々の話は置いておいて。
そのデイヴィッドさんは貴方に伝言を頼んでる訳ですよね?
私宛の伝言を貴方に、デイヴィッドさんが。」
「ああ、それがどうした?」
「それが、どうした?
依頼主である私に請負人のデイヴィッドさんの伝言を言わずにいるつもりですか?」
「え?」
「貴方の意気込みなんて、正直どうでもいいんですよ。
私はデイヴィッドさんの伝言が聞きたいだけであって、
貴方の主張を聞きに来た訳では無いんですよ。」
「いや、だから。」
「ロランバルトさんから私が貼り出したこの依頼書を彼は請け負うと聞きました。
貴方が伝言を言わずに帰るという事は、
この依頼を反故にするという事になります。
そうすると、デイヴィッドさんの信用問題にも関わりますよね?
貴方はデイヴィッドさんの立場を悪くする状況を作ってしまっているんです。」
「あ、」
「良いんですか?
デイヴィッドさんの評価が落ちてしまっても。
貴方が落とす事になるんですよ?」
「う、うう。」
一応依頼という形で貼り出して貰った私の手紙。
夫もそれに倣って依頼を請けると、ギルドの受付さんに話を通した。
と、ロランバルトさんが言っていた。
てっきり、夫が来ていると思っていたのに、居たのは誰だか知らない少年。
肩透かしを食らっている状態で、その少年に何故か罵られている。
一向に伝言を伝えてもくれないし、一方的に敵意を向けられる。
夫に会える楽しみで一杯だった私の気持ちを返して欲しい。
怒りの感情と言うのは中々に体力を使う。
なので、滅多な事では怒らない様にしている。
この世界に転生して、理不尽な事が多すぎて最近怒ってばかりだ。
だから、微妙にストレスも溜まっていた。
それが爆発したのだ。
セイによって。
別に私は口が達者な方では無いが、
あまりに腹が立ったので、セイが口を挟む間も無く捲し立ててやった。
少しスッとした。
横に居たアリスが私の袖の端を引っ張ってきた。
「ミリアム、ミリアム。
もうそのくらいにしてあげなよ・・・。」
「え?」
「あれ・・・。」
アリスが目配せしてくる。
その視線の先には、
目に涙を溜めているセイの姿があった。
え?なんで?
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