念願の悪役令嬢に!!

コロンパン

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お約束

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「沢山作って来て良かった。」

萌香に食べて貰おうと張り切り過ぎて、私と萌香だけでは到底食べきれないお弁当を持って来た。
それが虫の知らせだったのか、蘇芳も私のお弁当を食べる事になった。

「うわあああ!!美味しそう!!」

目が爛々と輝く萌香。
ああ!!頑張った甲斐があった。

「えへ。」

嬉しくて顔がニヤける。

「・・・・!!!」

「くうううう!!」

蘇芳は口元を手で覆い、萌香は雄叫びを上げる。
何?何?
二人を見比べていると、体を引かれる。

「ああああ!!もう!もう!愛良が可愛過ぎて!!」

「ええ!?萌香?」

凄い頬ずりされてる。
高速頬ずり。
摩擦で火が付きそう。
そう思ってたら、今度は後ろに体を引かれる。

「草薙さん、貴女は本当に学習しないね。
愛良にそんな風に触らないで欲しいのだけれど?」

私の上で声がする。
背筋がゾクリとしたのは、その声が冷気を伴っているのだろう。
見上げるとまた魔王降臨の心臓が凍り付く微笑みを萌香に向けていた。

ひいいいいい・・・・。
怖い、怖い。
何でそんなに萌香を敵視してるの?

「す、蘇芳・・・・。」

「ん?何、愛良?」

蘇芳の笑顔が一変し、優しい物に変わる。
ある意味顔芸よね。

おっと、感心している場合じゃないわ。
早い内に言っておかないと、取り返しがつかない事になるかもしれない。
私を意を決する。

「萌香は、私の大事な友達なの。そんな怖い顔をして睨まないで?
こんなに良いお天気なのに、楽しくご飯が食べたいの。」

よし、言えた!
蘇芳を見ると、笑顔のまま固まっていた。
え!?

私、何も可笑しい事言って無いよね?
こんな険悪な雰囲気でご飯食べても美味しくないよね?

「・・・・・・・・。」

未だ無言のまま固まっている。

どうしよう。
萌香を見ると、何だか複雑な顔で私を見ている。

「あ~、まぁ、皇君が悪いのは悪いけど・・・・。
う~ん、これは・・・。」

少し考え込む萌香。

「愛良、今まで皇君に怒ったりした事ある?」

そう尋ねられて、今度は私が考え込む。
・・・・・そういえば・・・・。

「無い、かな?」

だって、攻略対象に怒ったりしたら、死期がショートカットされそうで、元々人にそこまで強く言えない性格だし。
うん、多分無い。
逆に怒られた事は沢山あるけど。

「じゃあ、愛良に甘やかされた皇君にはショックが強かったのかもね~。」

甘やかす?
そんなつもりは無かったのだけれど・・・。

少し困った、蘇芳がこのままなのは。
萌香はにんまり笑う。

「大丈夫、大丈夫!皇君には良い薬よ!
愛良に散々辛い思いをさせて来たんだから!」

「え?」

「いや、何でもない。気にしないで。
それより、食べよ!」

何か誤魔化された。
でも、お昼時間も限られているし、早く食べないと。
・・・蘇芳は・・・、未だ固まっている。
ちらちら見ていると、萌香はふっと笑って、私に小さな声で囁く。

う。
萌香を見る。
凄く可愛い笑顔で頷いている。

私ははあ、と息を吐き、お箸を持つ。
卵焼きを取って、それを蘇芳の口へと持って行く。

「す、蘇芳・・・・・、あーん。」

ううう。
恥ずかしい。顔は絶対赤い。
すると、さっきまで固まっていた蘇芳が、ハッと解けた様に意識を取り戻す。

蘇芳も見る見るうちに顔が赤くなっていく。

「あ、愛良・・・。」

喉をごくりと呑む音がする。
うう、早く食べてよぅ・・・。

「嫌、だった?」

なら、もう自分で食べちゃうから。
お箸を引こうとすると、バッと手を掴まれ、蘇芳がバクッと卵焼きをその口に入れた。

「どう?」

美味しい?
蘇芳を窺うと顔はずっと赤いまま、口だけもぐもぐと動いている。
あ、食べている時に喋るのはお行儀が悪いか。
しっかり飲み込んだのを確認してから、再度確認する。

「味、どう、かな?」

何か凄く片言になってしまった。
恥ずかしいさがまだ尾を引いている。

蘇芳は何だか涙目で無言で何回も頷いている。

良かった。
私はほっとして、自分も食べようとソーセージを取り、口に入れる。

「な!!愛良!!」

え?
蘇芳が凄く慌ててる。
うん?と首を傾げていると、萌香が悪戯っぽく笑う。

「あ、間接キスだぁ~。」

そう言われて、顔が爆発したのかっていう位、顔が熱くなった。

「あ、あの、これは!萌香が、やれって、あの!」

蘇芳に一生懸命言い訳すると、萌香はしれっと口を挟んでくる。

「ええ~?私はあ~んをしたら、って言っただけで、間接キスをしろとは言って無いよぉ?」

「い、いや!あの!これは全く偶々で!
意図してやった訳ではなくて!
ああ~!!も、もう!早く食べないと!
はい!蘇芳、お箸!!」

私はもう混乱して、何を自分で言っているのか分からなくなって、咄嗟に新しいお箸を蘇芳に渡す。
また固まってしまっていた蘇芳はお箸を渡されて、私に言われるままお弁当を食べ始める。
蘇芳もずっと顔が林檎の様に赤い。

居たたまれない空気のままの二人に気にせずに萌香はのほほんと、私のお弁当を嬉しそうに頬張っていた。
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