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第二章:独裁の予兆!?中央政治局常務委員《フラワーナイン》の選抜
第23話:標的は総書記の秘書!?腐敗はびこる党幹部
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――レイの別荘に行く前の日――
「レイを失脚させる」
シー、オウキ、俺と3人での食事中に脈絡なくシーが突如宣言した。
ここ最近、俺は、シーやオウキの夕食を作ることが仕事のようになっていた。
だいたい、どちらかにだけ用意するのだが、その日はたまたまオウキがシーの執務室に来ていた。
それまではオウキが他愛のない話をして一人で盛り上がっていた。
シーはいつも通り、無表情に聞いてるのか聞いてないのか分からないくらいの相槌をうっているだけであった。
そこからの突如の宣言だった。
しかも、失脚させると言った相手はフー総書記の秘書であり、側近中の側近だ。
レイの肩書は中央弁公庁主任。
党幹部を補佐する事務業務の最高機関であり、そのトップだ。
秘書という肩書とは裏腹に権力は党重要幹部並みにある。
何せ、党幹部のスケジュールを管理したり、総書記の取り次ぎの可否を判断するのだ。
その差配が重要決定に影響しないわけがない。
歴代の中央弁公庁主任はほぼ必ずフラワー入りしている。
レイは歴代の主任の中でも抜群に優秀と評判であった。
そんなレイを失脚させる理由も方法も俺は、思いつかなかった。
「……ほう。いよいよ動くか、シー?」
オウキは先程まで他愛のない話で騒ぎでいた時とは別人のように落ち着いている。
(でも、何故、ハクモクレン閥でなくブルーローズ閥なんだ?)
派手に汚職をして、私利私欲のため党権力を使ってやりたい放題しているのは、もっぱら前総書記であるコウをトップとするハクモクレン閥の者であった。
シーは、党から腐敗を無くすことを目的にしている。
なら、ブルーローズ閥と手を組んで、ハクモクレン閥を追放する。それが腐敗を無くす現実的な方法であるだろう。
「おい、シー、ルーが何故って顔して子犬のように首を傾けてるぞ」
俺の疑問を見透かしたのだろう。オウキはニヤニヤしながら、シーに説明を促した。
シーはちらりと俺の顔を見てきた。
「い、いえ、私ごときが口を挟むような……」
明らかに面倒くさがっている眼差しを受けた。
「まあ、そう言うな。シー、ルーも数少ない味方だ。飯のついでに説明くらいいいだろう」
「それでルーの働きが変わるとは思えないがな。いいだろう。ルー。現在党はハクモクレン閥とブルーローズ閥、この二大派閥が支配してるのは知っているな」
「……はい」
「コウ様を中心としたハクモクレン閥が派手にやってるのは、周知の事実だが、かと言ってブルーローズ閥が清廉潔白というわけでもないさ。程度の差しかない」
「だから、フー様とは組めないと……」
「いや、そういう訳では無い。だが、ブルーローズ閥とハクモクレン閥が闘うということは党を二分する激しい争いになる。党が、消滅してもおかしくない」
「党が……? そんなことに?」
「それぞれに最強クラスの思力を持った者がいて、さらに実力部隊を動かせるコネも持ってるからな。下手すりゃ内戦だよ」
オウキはさもそうなって欲しいとう顔でシーの説明に付け足した。
「だから、派閥争いと無関係のところで、腐敗を追求する必要がある」
「ここまでは分かりました。でもどうしてレイ様を」
中央弁公庁のレイといえば、フーの分単位のスケジュールを完璧に管理することから、精密機器とあだ名されるくらいだ。
そんなレイの腐敗なんて想像できない。
「ボアの失脚で、ハクモクレン閥とブルーローズ閥のパワーバランスが崩れつつある。新中央政治局常務委員、実力通りに選んだら、私とオウキ以外ブルーローズ閥で占めることになるだろうよ」
「コウ様は経済界にも支配力があるからな。ハクモクレン閥で力を持ったものは皆経済界にいる。シュウとは面白い闘いができそうだが、あとは、そうでもないな」
「このままだと、新中央政治局常務委員を決めるにあたって、どんな妨害工作がハクモクレン閥から出るが分からない。だから、新中央政治局常務委員を決める南頂海会議までにブルーローズ閥の力を削る必要がある」
「コウ様の意向に沿うということですか。しかし、何故レイ様に……」
「ふん、清廉潔白そうに見えても裏で何してるか、分からんさ。これは、この間コウ様と会ったときにもらった土産だ」
そう言ってシーはテーブルの上に何枚もの写真をばらまいた。
「えつ!!」
その写真に写っている衝撃的な光景に俺は言葉を飲んだ。
写真は、パーティーをしている半裸な男女が写っていた。
男女といっても、女はレイだけだ。いや、本当にレイなのだろうか。
レイの話題をしているからレイとわかるだけで、そこに写っているレイは、俺が見たことある精密機器と呼ばれるレイとは全く違っていた。
ほぼ裸と言ってもいい薄いショールのようなものだけで身につけ、複数の半裸な男を囲っている。
写真によっては、男性器を握ってるものまである。
普段の氷のような表情とは対象的に、酒か、ひょっとしたら薬もやってるのか、とろけきった表情だ。
しかも、この写真は隠し撮りでもない。レイは撮られているのが分かってる。
党幹部であるならそれがどんなリスクか分かりそうであるが、そんな判断力さえなくしているのだ。
「おい、シー。子犬には刺激が強すぎたようだぞ。固まって目が釘付けだ。しかし、レイのやつ、思ったよりデカいじゃないか。憎たらしい奴め」
オウキのちゃちゃで俺は我に返った。まじまじと写真を見てたことが急に恥ずかしくなった。
シーの表情を見ると相変わらずの無表情だが、微かに軽蔑の眼差しがこめられている気がする。
いや、きっと気のせいだ。
「精密機器なんてあだ名の割に狂ってるとこは大きく狂ってるらしい。男女関係なく愛人が二桁はいる」
「そんなに……」
「そう、そんな人数の愛人を、囲めるほど党幹部の給料は高くない。親族がレイの権力を利用してたんまり貯めてるのさ。ま、典型的な党幹部の汚職方式だ」
「しかも、レイのやつ、フー様の引退に備えて、コウ様の接近しようとしたんだ。これはコウ様が開いた歓迎会みたいなもんだ。ほら、その写真、シュウとボアも写っているだろ」
オウキは一枚の写真を示した。
そこには確かにシュウとボアも写っていた。しかし、レイほど乱れていない。
その写真だけ見れば、ただ会食しているだけのようだ。
「今、レイが失脚すれば、それはフー様の失点だ。レイはコウ様の取り入ったつもりだろうが、コウ様にとってはフー様の足を引っ張るただのカードさ」
「……」
俺はあまりにも衝撃的な話に言葉を失った。
レイの乱れた姿もそうだが、忠実な秘書として仕えていたのに、あっさりと裏切るような真似をするなんて。
「ま、子犬ちゃんには見えない世界ってのがあるんだよ。こんくらい序の口だ」
呆然としていた俺をオウキがまた茶化してきた。でも、それはオウキの心配りだ。
俺の受けている衝撃を和らげるための。
「……話は分かりました。ご説明いただきありがとうございます。それで、どのようにレイ様を?」
「決まってるだろ、本人に自白させんだよ」
オウキが今日一番、楽しそうな笑みを浮かべた。
「レイを失脚させる」
シー、オウキ、俺と3人での食事中に脈絡なくシーが突如宣言した。
ここ最近、俺は、シーやオウキの夕食を作ることが仕事のようになっていた。
だいたい、どちらかにだけ用意するのだが、その日はたまたまオウキがシーの執務室に来ていた。
それまではオウキが他愛のない話をして一人で盛り上がっていた。
シーはいつも通り、無表情に聞いてるのか聞いてないのか分からないくらいの相槌をうっているだけであった。
そこからの突如の宣言だった。
しかも、失脚させると言った相手はフー総書記の秘書であり、側近中の側近だ。
レイの肩書は中央弁公庁主任。
党幹部を補佐する事務業務の最高機関であり、そのトップだ。
秘書という肩書とは裏腹に権力は党重要幹部並みにある。
何せ、党幹部のスケジュールを管理したり、総書記の取り次ぎの可否を判断するのだ。
その差配が重要決定に影響しないわけがない。
歴代の中央弁公庁主任はほぼ必ずフラワー入りしている。
レイは歴代の主任の中でも抜群に優秀と評判であった。
そんなレイを失脚させる理由も方法も俺は、思いつかなかった。
「……ほう。いよいよ動くか、シー?」
オウキは先程まで他愛のない話で騒ぎでいた時とは別人のように落ち着いている。
(でも、何故、ハクモクレン閥でなくブルーローズ閥なんだ?)
派手に汚職をして、私利私欲のため党権力を使ってやりたい放題しているのは、もっぱら前総書記であるコウをトップとするハクモクレン閥の者であった。
シーは、党から腐敗を無くすことを目的にしている。
なら、ブルーローズ閥と手を組んで、ハクモクレン閥を追放する。それが腐敗を無くす現実的な方法であるだろう。
「おい、シー、ルーが何故って顔して子犬のように首を傾けてるぞ」
俺の疑問を見透かしたのだろう。オウキはニヤニヤしながら、シーに説明を促した。
シーはちらりと俺の顔を見てきた。
「い、いえ、私ごときが口を挟むような……」
明らかに面倒くさがっている眼差しを受けた。
「まあ、そう言うな。シー、ルーも数少ない味方だ。飯のついでに説明くらいいいだろう」
「それでルーの働きが変わるとは思えないがな。いいだろう。ルー。現在党はハクモクレン閥とブルーローズ閥、この二大派閥が支配してるのは知っているな」
「……はい」
「コウ様を中心としたハクモクレン閥が派手にやってるのは、周知の事実だが、かと言ってブルーローズ閥が清廉潔白というわけでもないさ。程度の差しかない」
「だから、フー様とは組めないと……」
「いや、そういう訳では無い。だが、ブルーローズ閥とハクモクレン閥が闘うということは党を二分する激しい争いになる。党が、消滅してもおかしくない」
「党が……? そんなことに?」
「それぞれに最強クラスの思力を持った者がいて、さらに実力部隊を動かせるコネも持ってるからな。下手すりゃ内戦だよ」
オウキはさもそうなって欲しいとう顔でシーの説明に付け足した。
「だから、派閥争いと無関係のところで、腐敗を追求する必要がある」
「ここまでは分かりました。でもどうしてレイ様を」
中央弁公庁のレイといえば、フーの分単位のスケジュールを完璧に管理することから、精密機器とあだ名されるくらいだ。
そんなレイの腐敗なんて想像できない。
「ボアの失脚で、ハクモクレン閥とブルーローズ閥のパワーバランスが崩れつつある。新中央政治局常務委員、実力通りに選んだら、私とオウキ以外ブルーローズ閥で占めることになるだろうよ」
「コウ様は経済界にも支配力があるからな。ハクモクレン閥で力を持ったものは皆経済界にいる。シュウとは面白い闘いができそうだが、あとは、そうでもないな」
「このままだと、新中央政治局常務委員を決めるにあたって、どんな妨害工作がハクモクレン閥から出るが分からない。だから、新中央政治局常務委員を決める南頂海会議までにブルーローズ閥の力を削る必要がある」
「コウ様の意向に沿うということですか。しかし、何故レイ様に……」
「ふん、清廉潔白そうに見えても裏で何してるか、分からんさ。これは、この間コウ様と会ったときにもらった土産だ」
そう言ってシーはテーブルの上に何枚もの写真をばらまいた。
「えつ!!」
その写真に写っている衝撃的な光景に俺は言葉を飲んだ。
写真は、パーティーをしている半裸な男女が写っていた。
男女といっても、女はレイだけだ。いや、本当にレイなのだろうか。
レイの話題をしているからレイとわかるだけで、そこに写っているレイは、俺が見たことある精密機器と呼ばれるレイとは全く違っていた。
ほぼ裸と言ってもいい薄いショールのようなものだけで身につけ、複数の半裸な男を囲っている。
写真によっては、男性器を握ってるものまである。
普段の氷のような表情とは対象的に、酒か、ひょっとしたら薬もやってるのか、とろけきった表情だ。
しかも、この写真は隠し撮りでもない。レイは撮られているのが分かってる。
党幹部であるならそれがどんなリスクか分かりそうであるが、そんな判断力さえなくしているのだ。
「おい、シー。子犬には刺激が強すぎたようだぞ。固まって目が釘付けだ。しかし、レイのやつ、思ったよりデカいじゃないか。憎たらしい奴め」
オウキのちゃちゃで俺は我に返った。まじまじと写真を見てたことが急に恥ずかしくなった。
シーの表情を見ると相変わらずの無表情だが、微かに軽蔑の眼差しがこめられている気がする。
いや、きっと気のせいだ。
「精密機器なんてあだ名の割に狂ってるとこは大きく狂ってるらしい。男女関係なく愛人が二桁はいる」
「そんなに……」
「そう、そんな人数の愛人を、囲めるほど党幹部の給料は高くない。親族がレイの権力を利用してたんまり貯めてるのさ。ま、典型的な党幹部の汚職方式だ」
「しかも、レイのやつ、フー様の引退に備えて、コウ様の接近しようとしたんだ。これはコウ様が開いた歓迎会みたいなもんだ。ほら、その写真、シュウとボアも写っているだろ」
オウキは一枚の写真を示した。
そこには確かにシュウとボアも写っていた。しかし、レイほど乱れていない。
その写真だけ見れば、ただ会食しているだけのようだ。
「今、レイが失脚すれば、それはフー様の失点だ。レイはコウ様の取り入ったつもりだろうが、コウ様にとってはフー様の足を引っ張るただのカードさ」
「……」
俺はあまりにも衝撃的な話に言葉を失った。
レイの乱れた姿もそうだが、忠実な秘書として仕えていたのに、あっさりと裏切るような真似をするなんて。
「ま、子犬ちゃんには見えない世界ってのがあるんだよ。こんくらい序の口だ」
呆然としていた俺をオウキがまた茶化してきた。でも、それはオウキの心配りだ。
俺の受けている衝撃を和らげるための。
「……話は分かりました。ご説明いただきありがとうございます。それで、どのようにレイ様を?」
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