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第二章:独裁の予兆!?中央政治局常務委員《フラワーナイン》の選抜

第2話:権力の源泉!?中央政治局常務委員《フラワーナイン》に望むモノ

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    次期中央政治局常務委員フラワーナインに何を望むか?
 
 シーに向けられたフーの問いは、権力争いなんて全く経験のない鈍感な俺でも分かる。

 それは、誘いだ。
 
 次期中央政治局常務委員フラワーナインをブルーローズ閥で満たして、ハクモクレン閥を排除しようというフーからシーへの提案だ。
 
 前総書記コウ率いるハクモクレン閥。
 その彼女らの不正は噂に聞くだけでも、聞くに堪えないものだ。

 そのハクモクレン閥は現中央政治局常務委員フラワーナインの過半数を占めており、それが理由で、ブルーローズ閥のフーは思い切った改革が出来なかった。
 
 フーが実権を握っている間、華の国はこれまでにないくらい経済的成長を果たした。しかし、その成長に隠されていた様々な問題は全く手付かずでもあった。
 
 そして、そのツケはシーの代に回ってくる。

 このまま、不正を放置すれば、いつしか、民の怒りを抑えきれず、党の崩壊に繋がるだろう。

 ただ、中央政治局常務委員フラワーナインのメンバーでさえ不正に手を汚している。いや、汚さないと中央政治局常務委員フラワーナインまで上り詰めることもできない。
 
 ブルーローズ閥はハクモクレン閥に比べれば、まだましだという、程度の問題である。
 
 だから、ハクモクレン閥だけを罰してブルーローズ閥を罰っさなくていいのか。そういう問題が残る。

 そして、その問題が華の国を二分する争いに発展する可能性もある。
 
 (シー様は俺のお陰でブルーローズに借りを作らず済んだと言っていたな)
 
 俺の前に座るシーの表情はここからは見えない。フーの問いにどう応えるのか。
 
 「フー様、次期中央政治局常務委員フラワーナインをどう希望するか、それは私の望むことではありません。民が望むことです」
 
 シーはやはり涼しげに答えた。
 
 フーの目が少し大きく動いた。シーの回答を測りかねているのだ。
 
 シーは半年だけハクモクレン市の書記長をしていた経験がある。
 そのため、ハクモクレン閥側の人間だと思われている。
 だから、フーも警戒はしているのだ。
 しかし、ハクモクレン閥が反対したボアの拘束をシーは実行した。
 この行為はフーから見るとシーはブルーローズ閥に鞍替えする用意があると見えるのだ。
 
 「民が望む中央政治局常務委員フラワーナインですか?」
 
 シーの意図を測りかねたのだろう。
 フーはシーの意図を引き出すために質問を続けた。
 
 「そうです。フー様。我が党は、民を指導するのが使命ですが、その指導は民の望むものではなくてはなりません。だから、我々は指導部こそが積極的に民から学ぶべきなのです」
 
 相変わらす話す内容だけは熱のこもりそうな理想を述べているのに、シーの話し方は抑揚がなく、淡々としており、熱がこもっていない。
 
 「シー同志、確かに貴女の言う通り、我々は民の声を拾い上げ、より理想に民を先導する必要がある。しかし、次期中央政治局常務委員フラワーナインの選出に、それがどのように関係するのかな」
 
 シーの理想論に堪えかねたのか、オンが少しイライラしながら問いかけた。
 
 (次期中央政治局常務委員フラワーナインか……)
 
 俺は、次期中央政治局常務委員フラワーナインがシーの都合の良いように決まることを予想している。
 いや、かつきは、知っているのだ。
 
 前の世界では、華の国に似たような国で、シーに境遇が似た総書記は、総書記就任時、中央政治局常務委員フラワーナインのような最高指導部のメンバーが、何故かその総書記の都合のよいメンバー構成になり、そのお陰で実権を握った。
 それは就任直前の実績や力関係からは全く予想できないことであった。
 
 (同じように次の中央政治局常務委員フラワーナインは、シー様にとって都合のいいメンバーになるのだろうな)
 
 この世界と前の世界の奇妙な一致点。

 まったく違う世界なのに、何故か状況が似ているのだ。だから、次の中央政治局常務委員フラワーナインかつきの知っているようになるのであろう。
 
 「フー様、オン様。ルーは見ての通り取り立てて特別のものは何も持たない庶民です。だからこそ我々指導部を曇りなき眼で見ることができます。私は、ルーと今の党について話しました。そしたら、面白い考えをルーは持ってました」
 
 (え、シー様何を……。シー様と党の話なんてしたことはないぞ)
 
 前の世界に思いを馳せていたら、突然シーの口から俺の名前が出た。
 
 「なぁ、ルー」
 シーは静かに俺の方に振り返った。
 
 その目はやはり闇を携え、その口元はやはり悪魔のようなほは笑みを浮かべていた。
 
 「ルー、フー様、オン様に、ルーの考えを話してくれ。私に話してくれたような」
 
 シーがそう言った瞬間、俺には周りの時間が止まったように感じられた。フーもオンも動きは止まったまま。そして、シーもその悪魔のような笑みを浮かべながら固まっている。
 
 しかし、シーから暗い霧状の闇が立ち上ぼり、それは俺に向かって、俺の体にまとわりついた。
 俺はその闇に囚われて、身動きも出来ず声すらあげることも出来なくなった。

 
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