鋼鉄のアレ(仮題)

海星

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インタールード2

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    第三次世界大戦で99%の人類が死去した。そして兵士の生存率はそれより遥かに低い。
    戦場に出た兵士は死を覚悟せねばならなかったが、全ての兵士が死の恐怖を克服出来ていた訳ではなく、多くの兵士が出兵前に興奮作用が強い麻薬を服用していた。
    なので戦争が終わった時、生き残った兵士のほとんどが重度の麻薬中毒患者だった。
    最初、仮想現実世界は麻薬中毒患者への更正プログラムとして誕生したのだ。
    その後、仮想現実世界内では薬物に対する欲求だけでなく食欲や性欲、戦争による破壊欲求すらも擬似的に味わい、欲求を満足させる事が出来るとされ「人間の欲求を擬似的に充足させる事が、人類の滅亡を防ぐ」と言われ世界中の国で仮想現実世界の中で過ごす事が世界中の法により定められ今に至る。

    嗜好品が規制された社会で早くから禁じられた物の一つに喫煙がある。
    それまでにも禁煙用のパイプ、煙の出ないタバコ、ニコチンのないタバコなどタバコの代替品はたくさんあったが、麻薬ですら更正プログラムでやめられるのだから喫煙などは簡単にやめられた。
    仮想現実世界では現実世界での欲望を比較的簡単に抑制出来るらしい。
    その分、仮想現実世界では快楽主義的である事が許されているのだ。

    だがその弊害も生まれる。

    人間は脆いものである。
    「こんな現実を認めるのは辛い。仮想現実世界こそが現実なのだ」という教理を語る新興宗教が急速に勢力を伸ばし始めた。
    そしてその新興宗教には若き日のリサの母親も入信していた。

    そして禁止事項も生まれた。
    それが「仮想現実世界内での人型の人工知能の活用」であった。
    人工知能を持った個体が仮想現実世界で過ごすという事はは人間から職を奪う、もしくは人工知能が人間に指示を出す、という事になりかねない、と言う事だ。
    この禁止に反対したのが自衛隊内にいた男性達だ。
    それを自衛隊内にいた女性達は人工知能と男性達が疑似恋愛しようとしている、人工知能内蔵型ダッチワイフを作ろうとしている、と受け取り「これだから男は!」と男性を毛虫のように嫌った。 
    なので他の国では軍部の男性と女性の確執は自衛隊ほど強くはない。
    禁止されていつつも、自衛隊内では仮想現実世界で人工知能生命体を研究し、活動させているとの専らの噂だ。
    他国にもその話は伝わっているが、それが男性の欲望のせいだと伝わっているので、あまりにもくだらないと相手にされていない。
    なので自衛隊内で人工知能がどう活用されているのかは実は不明だ。
    「どうせ・・・」とは全ての周囲の人々から思われているのだが。
    イチローに対する大河の卑劣な行為も「あんな品性下劣な連中にデカい顔をさせてはいけない」という大河の心情的なものがあり、大河自身は本当は公明正大で卑怯を嫌う性格であった。
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