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推理
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「『鬼斬忍法帖』を必要としている人というのは・・・早くんのお父さんです」由美が言う。
「由美は何を言っているのだろう?」と私は思う。
「早くんのお父さん・・・颯さんは女装して女子高に忍び込もうとしてガードマンに見つかって一般人に顔が割れました。
そして盗人だった颯さんは一般人に顔を覚えられてしまって悪い事が出来なくなったのです。
街に一件しかない7時に閉まる元酒屋のコンビニの前で『お~い、由美ちゃ~ん、俺も女装が上手だったらこんなとこで飲んだくれてなくても良いのにな~。どっかに女装の忍法ないかな~』ってカップ酒片手にくだをまいた颯さんが絡んでくる事がたまにありました」と由美。
「そういえば・・・『鬼斬忍法帖』が盗まれた居間の床の間の前にはカップ酒のフタが落ちていました。
『何でこんなところにこんなもんが落ちているのかな?』とは思ったのですが『きっと生徒会長が晩酌するんだろうな』と思って見て見ないフリをしていたんですよ」と晶さん。
「私が晩酌なんてする訳ないじゃない!
・・・でも早ちゃんのパパが下手人じゃない、という決定的な根拠があるわよ。
どうやって早ちゃんのパパは和歌山の山の中からバスと電車を乗り継いでここまで来たのかしら?
早ちゃんの家の家計は早ちゃんのおじいさんの万引きに支えられていたのよね?
早ちゃんの家には全く現金収入がなかったのよね?
だから早ちゃんは由美さんに入学金を借りたのよね?
でもどうやってパパはここまで来る交通費を出したのかしら?
ここまで徒歩で来たという可能性も否定は出来ないけど・・・早ちゃんのパパの話を早ちゃんに聞く限り歩いてここまで来るような勤勉さはパパは持ち合わせていないような気がするのだけど・・・」悠子さんは父親の事をどうしようもないろくでなしだと思っているようだが、それは大きくは間違っていない。
だがろくでなしであるからこそここまで歩いてくる勤勉さがあるとは思えないと疑いが晴れているのでどんな判断が幸いするのかは本当にわからない。
自分の父親の疑いが晴れるのは良い事だ。
だが、私の推測でも由美の推測が正しいだろうと思っている。
「親父は小銭は持っています。
現金収入は多少はあるんです。
家に金を入れるのが惜しいだけで。
ほら、由美がコンビニの前で酒を買った親父に絡まれたって言ってたでしょ?
私も子供の頃親父に「父ちゃんの買うお酒のお金はどこから出てるの?」って聞いた事があるんです。
そこで偽装結婚の相手から月々5万円受け取ってる事とか、私が知らないうちにフィリピン人の義理の母親が出来ていた事を知ったんです。
だからここまで電車で来て『鬼斬忍法帖』を親父が盗んだ可能性は高いですね。
でも・・・でも・・・自分の肉親が『見下げた人間のクズ』だと認めるのはけっこう辛いものがありますね」私はこらえきれず涙をポロポロと流しながら言う。
「『鬼斬忍法帖』を返してもらうだけじゃなくって、早ちゃんのパパには改心して早ちゃんに謝ってもらわなきゃね」悠子さんがポンポンと私の背中を叩きながら言った。
「由美は何を言っているのだろう?」と私は思う。
「早くんのお父さん・・・颯さんは女装して女子高に忍び込もうとしてガードマンに見つかって一般人に顔が割れました。
そして盗人だった颯さんは一般人に顔を覚えられてしまって悪い事が出来なくなったのです。
街に一件しかない7時に閉まる元酒屋のコンビニの前で『お~い、由美ちゃ~ん、俺も女装が上手だったらこんなとこで飲んだくれてなくても良いのにな~。どっかに女装の忍法ないかな~』ってカップ酒片手にくだをまいた颯さんが絡んでくる事がたまにありました」と由美。
「そういえば・・・『鬼斬忍法帖』が盗まれた居間の床の間の前にはカップ酒のフタが落ちていました。
『何でこんなところにこんなもんが落ちているのかな?』とは思ったのですが『きっと生徒会長が晩酌するんだろうな』と思って見て見ないフリをしていたんですよ」と晶さん。
「私が晩酌なんてする訳ないじゃない!
・・・でも早ちゃんのパパが下手人じゃない、という決定的な根拠があるわよ。
どうやって早ちゃんのパパは和歌山の山の中からバスと電車を乗り継いでここまで来たのかしら?
早ちゃんの家の家計は早ちゃんのおじいさんの万引きに支えられていたのよね?
早ちゃんの家には全く現金収入がなかったのよね?
だから早ちゃんは由美さんに入学金を借りたのよね?
でもどうやってパパはここまで来る交通費を出したのかしら?
ここまで徒歩で来たという可能性も否定は出来ないけど・・・早ちゃんのパパの話を早ちゃんに聞く限り歩いてここまで来るような勤勉さはパパは持ち合わせていないような気がするのだけど・・・」悠子さんは父親の事をどうしようもないろくでなしだと思っているようだが、それは大きくは間違っていない。
だがろくでなしであるからこそここまで歩いてくる勤勉さがあるとは思えないと疑いが晴れているのでどんな判断が幸いするのかは本当にわからない。
自分の父親の疑いが晴れるのは良い事だ。
だが、私の推測でも由美の推測が正しいだろうと思っている。
「親父は小銭は持っています。
現金収入は多少はあるんです。
家に金を入れるのが惜しいだけで。
ほら、由美がコンビニの前で酒を買った親父に絡まれたって言ってたでしょ?
私も子供の頃親父に「父ちゃんの買うお酒のお金はどこから出てるの?」って聞いた事があるんです。
そこで偽装結婚の相手から月々5万円受け取ってる事とか、私が知らないうちにフィリピン人の義理の母親が出来ていた事を知ったんです。
だからここまで電車で来て『鬼斬忍法帖』を親父が盗んだ可能性は高いですね。
でも・・・でも・・・自分の肉親が『見下げた人間のクズ』だと認めるのはけっこう辛いものがありますね」私はこらえきれず涙をポロポロと流しながら言う。
「『鬼斬忍法帖』を返してもらうだけじゃなくって、早ちゃんのパパには改心して早ちゃんに謝ってもらわなきゃね」悠子さんがポンポンと私の背中を叩きながら言った。
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