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矢文
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忍術の修行を聡子さんの指導で頑張っている。
忍術の基本であり今さらではあるが『四つ身分身』が出来るようになった。
「四人に分身出来るんだから一人くらいもらってもいいわよね」と悠子さん。
「じゃあ私も一人もらいます」と聡子さん。
二人の胸に抱かれて窒息寸前になり「むーむー」とジタバタ暴れていると、どこからともなく矢文が飛んできて柱に突き刺さった。
やめて欲しいなあ。
柱に穴を開けるとここを出る時、敷金とられちゃうかもしれないし・・・まあこの家、取り壊す予定らしいから多分大丈夫だと思うけど。
「今どきラインもメールもあるのに矢文って・・・」私はブツブツと文句を言った。
しょうがないのかも知れない。
私のようにスマホどころか携帯も持たない人間もいるのだ。
私は「別に何にも不自由はない」と言っているけれど、友人達は「不自由しているのは自分達だ」と憤慨していた。
私のようにスマホを持っていない者がいなければ、細かい待ち合わせ場所などは決めずに「今どこにいる?」と連絡を取り合うだけで良いそうだ。
今はスマホの普及で公衆電話がほとんどなくなってしまっている。
なのでスマホをもっていない人を外で見失った場合、連絡不能で軽い行方不明になってしまう。
それにスマホを持っていないのは友人の中で私だけらしいが、私が仲間外れにならないように友人達はラインで会話しないようにしているらしい。
私は友人達に迷惑をかけている自覚は多少あるのでスマホを持つべきだとは思っているが、趣味である編み物も縫い物も料理もバカにならないお金がかかるし・・・だからと言って好きな事はやめられないし・・・と言う訳で未だにスマホは買えずにいたのだ。
私はブツブツ文句を言いながら、柱から矢を引き抜こうとした・・・が、私にはしっかりと柱に刺さった矢は抜けなかった。
私が両手で柱の突き刺さった矢を抜こうとジタバタしていると悠子さんは片手で軽々と矢を抜いてしまった。
「早ちゃん、もう少し力をつけなさい。
力がないから手紙も読めません・・・なんて言わないようにね」悠子さんは呆れたように言いながら矢に結びつけられていた手紙を開いた。
『藤林近辺に怪しい動きあり、注意されたし』手紙には筆で達筆にそう書かれていた。
やっぱり『鬼斬忍法帖』は筆ペンで書かれているんだ。
筆で書いたら、どれだけ達筆でもこんな風にかすれる部分もあるはずだし。
・・・そんなくだらない事を私が考えていた時、悠子さんと聡子さんは深刻な顔をしながら呟いていた。
「悠子様・・・」
「ええ、わかっているわ。
均衡が崩れて動き出したのね。
伊吹・・・あなた何をするつもりなの?」
忍術の基本であり今さらではあるが『四つ身分身』が出来るようになった。
「四人に分身出来るんだから一人くらいもらってもいいわよね」と悠子さん。
「じゃあ私も一人もらいます」と聡子さん。
二人の胸に抱かれて窒息寸前になり「むーむー」とジタバタ暴れていると、どこからともなく矢文が飛んできて柱に突き刺さった。
やめて欲しいなあ。
柱に穴を開けるとここを出る時、敷金とられちゃうかもしれないし・・・まあこの家、取り壊す予定らしいから多分大丈夫だと思うけど。
「今どきラインもメールもあるのに矢文って・・・」私はブツブツと文句を言った。
しょうがないのかも知れない。
私のようにスマホどころか携帯も持たない人間もいるのだ。
私は「別に何にも不自由はない」と言っているけれど、友人達は「不自由しているのは自分達だ」と憤慨していた。
私のようにスマホを持っていない者がいなければ、細かい待ち合わせ場所などは決めずに「今どこにいる?」と連絡を取り合うだけで良いそうだ。
今はスマホの普及で公衆電話がほとんどなくなってしまっている。
なのでスマホをもっていない人を外で見失った場合、連絡不能で軽い行方不明になってしまう。
それにスマホを持っていないのは友人の中で私だけらしいが、私が仲間外れにならないように友人達はラインで会話しないようにしているらしい。
私は友人達に迷惑をかけている自覚は多少あるのでスマホを持つべきだとは思っているが、趣味である編み物も縫い物も料理もバカにならないお金がかかるし・・・だからと言って好きな事はやめられないし・・・と言う訳で未だにスマホは買えずにいたのだ。
私はブツブツ文句を言いながら、柱から矢を引き抜こうとした・・・が、私にはしっかりと柱に刺さった矢は抜けなかった。
私が両手で柱の突き刺さった矢を抜こうとジタバタしていると悠子さんは片手で軽々と矢を抜いてしまった。
「早ちゃん、もう少し力をつけなさい。
力がないから手紙も読めません・・・なんて言わないようにね」悠子さんは呆れたように言いながら矢に結びつけられていた手紙を開いた。
『藤林近辺に怪しい動きあり、注意されたし』手紙には筆で達筆にそう書かれていた。
やっぱり『鬼斬忍法帖』は筆ペンで書かれているんだ。
筆で書いたら、どれだけ達筆でもこんな風にかすれる部分もあるはずだし。
・・・そんなくだらない事を私が考えていた時、悠子さんと聡子さんは深刻な顔をしながら呟いていた。
「悠子様・・・」
「ええ、わかっているわ。
均衡が崩れて動き出したのね。
伊吹・・・あなた何をするつもりなの?」
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