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番外編 とんかつ
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連休中、実家に帰省した。
ライフワークにしてきた執筆活動はしばらくお休みだ。
大学を卒業して何年か経過した。
久々に連休で地元に戻り同窓会に参加した。
驚いた、私は和光大学へ行った事になっている。
受験生時代、緊張癖があった私は実力を出し切れず大学を落ち続けた。
「これではいけない。落ち癖をなくすために確実に受かる大学を一つ受けよう」という事で、和光大学を受験したのだ。
何故和光大学にしたかと言うと、在校生や卒業生には申し訳ないが「和光なら受かった大学が和光だけでも『和光に行け』とは親に言われないだろう」という汚い計算のようなものもあった。
だが、週刊朝日の「合格者速報」に他に受かった大学は載らず、和光大学だけは載ったらしい。
私は和光大学合格で受験終了ではなかったので、祝辞ラッシュをてきとうにかわしていた。
最初のうちはまともに「和光?通わないよ?」と否定していたのだが、勝ち誇ったように、見下してくる連中を相手にしていられず「和光?通う通う、じゃあねー」とかわさざるを得なかった。
私はこの時に「人間は自分より下の人間を見て精神的安定を得る」事を知った。
この時に「私が和光大学へ通う」と思って見下してせせら笑った連中と私は距離を取った。
友人を見下そうなどと思うという事は「その程度の関係」なのである。
そんな事はすっかり忘れていた。
私は同窓会で「和光大学卒業」という事になっていた。
今さら「和光大学なんて行ってないよ」というのも角が立つ。
私は昔「とんかつ和幸」でアルバイトをしていた。
そこでの話と思うようにした。
「和光ってどんなとこだった?」
「和幸?暑かったよ」
「クーラーなかったの?」
「スポットクーラーはあったかな?クーラーは基本的になかったよ」
「???。そんなに暑かったのにクーラーなかったの?」
「くる日もくる日も揚げ物してたからね。
クーラーがあると油の温度が下がっちゃうんじゃないかな?」
「揚げ物!?何揚げてたの!?」
「やっぱり和幸と言えばとんかつじゃないかな?でもとんかつって忙しいんだよね。
とんかつってなかなか揚がらないから別の事しながらとんかつ揚げないといけないんだよ。
すぐ揚がる物って揚げ物だけしてれば良いんだよね」
「和光って言ったら『とんかつ』なの!?」
「そんなイメージないのかな?和幸って言ったらとんかつだと思ってたけど」
「そうなんだ・・・知らなかった」
私は同窓会を一次会の途中で退席した。
私は同級生に次に会う時、どう思われているのだろう?
ライフワークにしてきた執筆活動はしばらくお休みだ。
大学を卒業して何年か経過した。
久々に連休で地元に戻り同窓会に参加した。
驚いた、私は和光大学へ行った事になっている。
受験生時代、緊張癖があった私は実力を出し切れず大学を落ち続けた。
「これではいけない。落ち癖をなくすために確実に受かる大学を一つ受けよう」という事で、和光大学を受験したのだ。
何故和光大学にしたかと言うと、在校生や卒業生には申し訳ないが「和光なら受かった大学が和光だけでも『和光に行け』とは親に言われないだろう」という汚い計算のようなものもあった。
だが、週刊朝日の「合格者速報」に他に受かった大学は載らず、和光大学だけは載ったらしい。
私は和光大学合格で受験終了ではなかったので、祝辞ラッシュをてきとうにかわしていた。
最初のうちはまともに「和光?通わないよ?」と否定していたのだが、勝ち誇ったように、見下してくる連中を相手にしていられず「和光?通う通う、じゃあねー」とかわさざるを得なかった。
私はこの時に「人間は自分より下の人間を見て精神的安定を得る」事を知った。
この時に「私が和光大学へ通う」と思って見下してせせら笑った連中と私は距離を取った。
友人を見下そうなどと思うという事は「その程度の関係」なのである。
そんな事はすっかり忘れていた。
私は同窓会で「和光大学卒業」という事になっていた。
今さら「和光大学なんて行ってないよ」というのも角が立つ。
私は昔「とんかつ和幸」でアルバイトをしていた。
そこでの話と思うようにした。
「和光ってどんなとこだった?」
「和幸?暑かったよ」
「クーラーなかったの?」
「スポットクーラーはあったかな?クーラーは基本的になかったよ」
「???。そんなに暑かったのにクーラーなかったの?」
「くる日もくる日も揚げ物してたからね。
クーラーがあると油の温度が下がっちゃうんじゃないかな?」
「揚げ物!?何揚げてたの!?」
「やっぱり和幸と言えばとんかつじゃないかな?でもとんかつって忙しいんだよね。
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すぐ揚がる物って揚げ物だけしてれば良いんだよね」
「和光って言ったら『とんかつ』なの!?」
「そんなイメージないのかな?和幸って言ったらとんかつだと思ってたけど」
「そうなんだ・・・知らなかった」
私は同窓会を一次会の途中で退席した。
私は同級生に次に会う時、どう思われているのだろう?
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