超科学

海星

文字の大きさ
上 下
7 / 48

違和感

しおりを挟む
 大宣は二回生になったら洋子の研究室に入ると約束した。

 研究室に入る事が大学入学の条件のような気もするし洋子が語った内容もかなり核心に迫ったものだっただろう。

 ここまで話を聞いて「はいさようなら。俺は他の研究室に行くね」とは言えない雰囲気だった。

 「ここまで聞いてとんずらしたら俺は殺されるんじゃないか?」と大宣は思った。

 実際大宣には聞けない事もいくつかあった。

 「殺し合いは今も続いているのか?」

 「敵になる勢力はこの研究室にはあるのか?」

 「俺は誰かを殺さなきゃいけないのか?もしくは誰かに殺される事を覚悟しなきゃいけないのか?」

 「秘密をもらしたら俺も消されるのか?」

 などなど・・・。

 これは一番最初に聞かなくてはいけない大事な事かも知れないが「葵ちゃんが俺のために探してくれた大学をそう簡単に辞めるわけにはいかない」と思っていたので大宣には聞けない事情もあった。

 とにかく葵ちゃんを心配させないようにやれる事をやろうと大宣は決意した。





 そして時は巡り葵ちゃんと交際し始めて二回目の春を迎えた。

 色々な事が変化した。

 葵ちゃんの担当していた高校2年生が受験生になり受験生を担当する葵ちゃんは忙しくなり今までのようには会えなくなった。

 手を抜けば大宣と会う事が出来る。

 それをしないのが大宣が惚れた葵ちゃんである。

 そして最も変化した事というと二人はキスをした。

 というかところかまわずキスしまくっている。

    会える時間の少なさ、寂しさを埋めるように二人は唇を合わせた。

 



 そして大宣は二回生となり、洋子のいる化学研究室に入った。

 



 人気の研究室には人が集まる。

 人気の秘訣というと「この研究室に入っていると単位が取りやすい」「この研究室に入っていると就職に強力なコネが出来る」そして何より「この研究室は課題や論文が楽だ」という事だ。

 大宣が入った化学研究室はというと・・・

 この研究室に入っているから単位が取りやるくなるわけではない。

 この研究室に入っていても就職は有利にならない。

 この研究室の論文、課題以前にこの研究室の噂を全く聞かない。

 化学研究室が注目されないのは、人払いの結界が研究室に張られていて無関係の人を遠ざけているからだ。

 よく考えると研究室の教授が知られていないという事はあり得ない。

 教授は研究とは別に授業を持っているはずである。

 なのでどの研究室の教授、准教授、講師でも学部では知られているのが普通だ。

 知られていない教授がいたとしたら逆に目立つはずだ。

 なのに誰も研究室の教授が誰なのか気にしていない。




 今年、化学研究室に新しく来た二回生は3人。

 3人が多いという事は去年や一昨年に研究室に入った者がいない事でも明らかだ。

 それ以前には洋子先輩と同級生が一人だけいたらしい。

 同級生は大学院には進まず、就職したらしい。

 それ以前の事は怖くて聞けない。

 大宣ともう一人の少女は前もって研究室に入る事は確定していたとの事だ。

 だが予想外の事が起きた。

 一般入試で入学した少女が化学研究室に入室を希望したのだ。

 本来であれば、その存在すら気にしなくなる結界が張られている。

 「この子、一体何者なの?」洋子のみがその違和感を知る。
しおりを挟む

処理中です...