5 / 48
進学
しおりを挟む
大学に進学した。
宇宙飛行士は無理でも一角の男にはなりたい。
大宣が通っている大学を卒業して宇宙飛行士になれない訳ではない。
どこの大学でも法学部は存在するが、司法試験を合格して弁護士になれるのは一流大学の法学部の者だけだろう。それと同じだ。
ちなみに早坂先生は「先生」と呼ぶとすねる。
しょうがなく「葵ちゃん」と呼ぶ事にした。
「葵ちゃん」と呼んでいる生徒達はみんなリア充でそう呼ぶ事に抵抗がなかった訳ではないが、最初の希望は「『葵』って呼んで欲しい」というものだったので呼び捨てに比べると幾分ハードルは低いので我慢してもらう事となった。
そして葵ちゃんとの性交渉は行っていない。
「結婚するまで赤ちゃんはいらない。
今受け持っている生徒達が高校を巣立つまで結婚はしない」と葵ちゃんは言っている。
「セックスはそういうものじゃない。
子供を作る目的じゃなくてもセックスは一般的に行われている」と力説しようとしたが、
「結婚するまで待って」と大宣に言うという事は「大宣と結婚する気だ」「結婚した後大宣の子供を産むつもりだ」という事でイヤな気はしない。
活字の虫である大宣は文系の頭だ。
理系教科は苦手としている。
そんな大宣が理学部に入ってしまった。
一回生は基本的に一般教養教科がほとんどだ。
専門教科が始まるのは二回生からだ。
つまり二回生になると理系の知識が必要になってくるのだ。
なので一回生のうちに理系の知識を身に着けよう。
留年してもしょうがない、腐らず卒業しよう。
大宣はサークルには入らなかった。
遊んでいる暇があったら理系科目の勉強をしなくてはならない。
だいたいお遊びサークルと合コンなどは異性との出会いを求めている事が多かったが、大宣にはすでに彼女がいたのでサークルに入る意味は既に半分以上なかったのである。
しかも社会人である葵ちゃんを彼女にしているので、会える時間は貴重だ。
サークルなどでその時間を潰す訳にはいかなかったのだ。
アルバイトは最低限一人暮らしを行える程度にとどめておいた。
大宣の母親は大宣が子供の頃行方不明となった。
父親は後妻に夢中で、後妻は折り合いが悪い大宣を追い出し、自分の連れ子を大宣が住んでいた部屋へ住まわせた。
大宣に懐いている血の繋がらない妹以外、あの家に大宣の味方はいない。
一人暮らしに文句がある訳ではないが、一人暮らしをするにも大学に通うのにも彼女とデートをするにも先立つものは必要な訳で。
こんな事になるんだったら後妻ともう少し仲良くしておくんだった。
いや、後妻と仲良くするって事は大宣の食事に混ぜられた汚物や腐敗したものを食べるという事か?
こちらがいくら歩み寄ろうとしても相手に「長男を追い出して、娘に土地建物を継がせる」という頭しかない限り一生わかりあえる訳もない。
後妻の言いなりになっている父親に文句のひとつもなっかたではないが、大宣に対して「申し訳ない」と思う気持ちがあるからこそ、こうやって下宿代や学費の一部を払ってくれているのだ。
葵ちゃんは最初学費や生活費を負担しようとした。
「私は夫婦の財布は一緒でも良いと思うな。だから大宣君の必要なお金は私が払っても問題ないと思うの」葵ちゃんはそう言った。
夫婦の財産を分けておくべきかどうか、様々な意見があるだろう。
一つだけハッキリしているのは「大宣と葵ちゃんはまだ夫婦ではない。この場合金を出してもらうヤツの事をヒモと呼ぶ」という事だ。
大宣の通う大学では二回生になると研究室に所属させられる。
研究室に所属すると研究だの、論文だの、合宿だの、実習だの・・・で相当忙しくなるようだ。
研究室によって忙しさは異なるようだ。
例を出すと400字詰めの原稿用紙換算10枚以上の論文を提出すれば良い研究室もあれば、100枚以上の論文を提出させ、しかも何度も再提出させる研究室もあるとの事だ。
大学生活を充実させるかどうかは研究室選びがとても大きなファクターを占めている。
勉強をしたくない訳ではない。
高校までの理数系の学力がない大宣にとって、正直これ以上の勉強はキャパシティオーバーだ。
よくスポーツ入試、一芸入試の者が二回生、三回生の時にいつの間にか姿を消し、退学している。
勉強についていけなくなって、単位を修得出来なくなったのだ。
また新聞奨学生が二回生、三回生の時によく留年する。
勉強と仕事を両立出来なくなったのだ。
「よく考えて研究室を選ばなきゃな」研究室の説明会に参加していた大宣は呟いた。
「あなたは私達の研究室に入るのよ。
その約束でこの大学に合格させたんだから」
大宣に語りかけてくる女性がいた。
その女性は一芸入試で大宣の面接官であった大橋洋子であった。
宇宙飛行士は無理でも一角の男にはなりたい。
大宣が通っている大学を卒業して宇宙飛行士になれない訳ではない。
どこの大学でも法学部は存在するが、司法試験を合格して弁護士になれるのは一流大学の法学部の者だけだろう。それと同じだ。
ちなみに早坂先生は「先生」と呼ぶとすねる。
しょうがなく「葵ちゃん」と呼ぶ事にした。
「葵ちゃん」と呼んでいる生徒達はみんなリア充でそう呼ぶ事に抵抗がなかった訳ではないが、最初の希望は「『葵』って呼んで欲しい」というものだったので呼び捨てに比べると幾分ハードルは低いので我慢してもらう事となった。
そして葵ちゃんとの性交渉は行っていない。
「結婚するまで赤ちゃんはいらない。
今受け持っている生徒達が高校を巣立つまで結婚はしない」と葵ちゃんは言っている。
「セックスはそういうものじゃない。
子供を作る目的じゃなくてもセックスは一般的に行われている」と力説しようとしたが、
「結婚するまで待って」と大宣に言うという事は「大宣と結婚する気だ」「結婚した後大宣の子供を産むつもりだ」という事でイヤな気はしない。
活字の虫である大宣は文系の頭だ。
理系教科は苦手としている。
そんな大宣が理学部に入ってしまった。
一回生は基本的に一般教養教科がほとんどだ。
専門教科が始まるのは二回生からだ。
つまり二回生になると理系の知識が必要になってくるのだ。
なので一回生のうちに理系の知識を身に着けよう。
留年してもしょうがない、腐らず卒業しよう。
大宣はサークルには入らなかった。
遊んでいる暇があったら理系科目の勉強をしなくてはならない。
だいたいお遊びサークルと合コンなどは異性との出会いを求めている事が多かったが、大宣にはすでに彼女がいたのでサークルに入る意味は既に半分以上なかったのである。
しかも社会人である葵ちゃんを彼女にしているので、会える時間は貴重だ。
サークルなどでその時間を潰す訳にはいかなかったのだ。
アルバイトは最低限一人暮らしを行える程度にとどめておいた。
大宣の母親は大宣が子供の頃行方不明となった。
父親は後妻に夢中で、後妻は折り合いが悪い大宣を追い出し、自分の連れ子を大宣が住んでいた部屋へ住まわせた。
大宣に懐いている血の繋がらない妹以外、あの家に大宣の味方はいない。
一人暮らしに文句がある訳ではないが、一人暮らしをするにも大学に通うのにも彼女とデートをするにも先立つものは必要な訳で。
こんな事になるんだったら後妻ともう少し仲良くしておくんだった。
いや、後妻と仲良くするって事は大宣の食事に混ぜられた汚物や腐敗したものを食べるという事か?
こちらがいくら歩み寄ろうとしても相手に「長男を追い出して、娘に土地建物を継がせる」という頭しかない限り一生わかりあえる訳もない。
後妻の言いなりになっている父親に文句のひとつもなっかたではないが、大宣に対して「申し訳ない」と思う気持ちがあるからこそ、こうやって下宿代や学費の一部を払ってくれているのだ。
葵ちゃんは最初学費や生活費を負担しようとした。
「私は夫婦の財布は一緒でも良いと思うな。だから大宣君の必要なお金は私が払っても問題ないと思うの」葵ちゃんはそう言った。
夫婦の財産を分けておくべきかどうか、様々な意見があるだろう。
一つだけハッキリしているのは「大宣と葵ちゃんはまだ夫婦ではない。この場合金を出してもらうヤツの事をヒモと呼ぶ」という事だ。
大宣の通う大学では二回生になると研究室に所属させられる。
研究室に所属すると研究だの、論文だの、合宿だの、実習だの・・・で相当忙しくなるようだ。
研究室によって忙しさは異なるようだ。
例を出すと400字詰めの原稿用紙換算10枚以上の論文を提出すれば良い研究室もあれば、100枚以上の論文を提出させ、しかも何度も再提出させる研究室もあるとの事だ。
大学生活を充実させるかどうかは研究室選びがとても大きなファクターを占めている。
勉強をしたくない訳ではない。
高校までの理数系の学力がない大宣にとって、正直これ以上の勉強はキャパシティオーバーだ。
よくスポーツ入試、一芸入試の者が二回生、三回生の時にいつの間にか姿を消し、退学している。
勉強についていけなくなって、単位を修得出来なくなったのだ。
また新聞奨学生が二回生、三回生の時によく留年する。
勉強と仕事を両立出来なくなったのだ。
「よく考えて研究室を選ばなきゃな」研究室の説明会に参加していた大宣は呟いた。
「あなたは私達の研究室に入るのよ。
その約束でこの大学に合格させたんだから」
大宣に語りかけてくる女性がいた。
その女性は一芸入試で大宣の面接官であった大橋洋子であった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。
ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。
実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。
私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。
百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」
妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。
でも、父はそれでいいと思っていた。
母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。
同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。
この日までは。
「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」
婚約者ジェフリーに棄てられた。
父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。
「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」
「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」
「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」
2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。
王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。
「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」
運命の恋だった。
=================================
(他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
義妹と一緒になり邪魔者扱いしてきた婚約者は…私の家出により、罰を受ける事になりました。
coco
恋愛
可愛い義妹と一緒になり、私を邪魔者扱いする婚約者。
耐えきれなくなった私は、ついに家出を決意するが…?
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる