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ナツ・side

お洒落カフェ

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リビングに足を踏み入れると、色鮮やかな料理が目に飛び込んでくる。

「うわ…何これ…うまそう…」思わず口を突いて出る。

テーブルの上に並ぶ…見たこともないような朝食…

… なんだこれ…

大きな皿の端っこに色鮮やかなサラダ…中央に白くて丸いパン…挟んだパンの間からうまそうなベーコンがはみ出ている…
そこに、温泉卵か…?半熟卵のようなものが乗っかっていて…クリーム色のソースみたいのがかかっている…
なんかすごい…カフェとかに出てきそうな…お洒落過ぎる朝食…。

俺が料理をじっと見ていることに気付き、爽が説明を加える。

「これか…?おまえ、食べたことあるか…?これはエッグベネディクトだよ…前に一度外で食べて美味かったから、休みとか時間ある時に、たまに家でも作るようになったんだ。熱いうちに食べてみろよ」

爽が爽やかな笑顔を俺に向けながら食卓へ促す。

…ドキリと…胸の奥が震えた気がした。 

「…いただきます…」俺は手を合わせ、その、エッグなんとかにナイフを入れる…。

どろりと…鮮やかな色の卵の黄身があふれ出す…。

うわあ…すご…、マジで美味そう… 

一口、放り込む…
           ぱくん…  もぐもぐ・・・

うわ…なんだこれ…めちゃくちゃ美味い…。ソースと卵…抜群に相性がいい…うま…うまうま・・

「うまい…すげえ、うまい…」

俺は夢中になってフォークとナイフをカチャカチャと動かす…。

人間に化けてこの世界に来て1ヵ月ちょい…
だいぶ生活にも慣れてきた。

最初は全然使えなかったナイフとフォーク…箸だってもう、お手のもんだ。

「うま…すごいな、爽…おまえって、普通にレストランとかの料理人になれんじゃねえ…?ほんと、うまい…」
俺の本心…この味、見た目…褒め言葉しか思いつかない…。

「…そっか… それは良かった…おまえはよく食うし、なんか作り甲斐あってな…今まで作んなかったメニューとか、最近色々チャレンジしてんだ…楽しみにしとけ。まあ、冷めないうちに食え… おかわりもあるから…」

微笑む爽…
眼鏡の奥の眼が、ありえないくらいに優しい…
夜のベッドの上での爽…ドSの爽とは別人のようだ…今の爽はまるで、慈愛に満ちた聖母みたいだ…。

その笑顔を見るとまた、俺の胸の奥がきゅうって…絞られたような感覚になる…。

なんだこれ…俺、なんか胸の病気かな… ああ… 

「珈琲、入れるからさ… 待ってろ…」

既にテーブルには、100%のオレンジジュースも並んでるのに…食後の珈琲まで淹れてくれるとは…

なんだこの、感じ… 心がホワンとしてくる…。

「あ…サンキュ…でも、お前も食べろよ…せっかくのエッグなんとかが…冷めるぞ…?」
俺は爽に声を掛けるが、

「いや…俺は後でいい…もともと俺、そんなに朝は量、食わないし… まあ、ゆっくり食え。」
いそいそとキッチンへ向かう爽…。

ああ…

   なんか、…このあったかい…ふわっとした気持ち… なんなんだろう…

俺の目的は、俺のこの逞しい身体で…奴を…爽を組み伏せて、抱くこと…
んで、奴にイイって言わせて…受領書を受け取り…元の姿…犬に戻ること…のはずだ…。

でも今の俺…人間であるコイツと暮らし始めて一ヵ月…

  なんかちょっと… ヤバい‥ 

    なんか予想以上に…コイツとの生活が楽しくて… ご飯もうまいし…

    一時的なバイトだが、新しい仕事も始めたし… なんとなく、充実感…。
 

もしかして、

    もしかしたら俺は…このままの生活が…続けばいいとか…思ってる…?

でも…爽は俺のこと、どう思ってんだろ…。
所詮、単なる犬か…
いつでもシタイ時にできるセックスの相手… 
犬だし、ガタイのいい男だし、多少は身体的に無茶できるから楽だとか…そんな風に思われているのだろうか…
 

 自分で想像しておいて、ズキンと…胸が痛む… なんだこの気持ち…


   俺は爽の…珈琲を淹れてくれている温かな背中を見つめながら、

            深いため息をついた。






















 

 



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